■事業の内容
本事業は、波浪中の推進性能や構造応答を長期にわたってモニターする基礎技術を得るとともに、それらのデータを定量的にモニタリングする手法について、実船によりフィールドテストを行い、船舶運航の経済性と安全性の向上を図ることを目的に、3カ年計画の第3年度の研究として、実施した。 (1) モニタリングのコンセプチュアルデザイン [1] コンセプチュアルデザインの提案 既存のモニタリングシステムの目的・機能・適用範囲の特徴など船陸衛星通信の現状について調査した。そして、モニタリングシステムに必要な要素技術の検討により、船体を波浪計化する「波浪モニター」、実海域推進性能の自動計測・解析システムである性能「性能モニター」及び実海域構造応答の監視による運航安全性のモニタリングの機能を持つ「構造モニター」から構成される将来型のSR233AMS(SR233 Advanced Monitoring System) を提案した。 (2) 実環境下モニタリング手法の探索的/実験的研究 [1] 波浪情報の仕様とその特定法 船上解析システムを試作してフィールドテスト船に搭載し、採取されたデータを基に船舶波浪計化法の3解析法(MLM法、Bayes法、Parametoric法)により比較検討するとともに詳細解析を行い、それらの結果を踏まえて簡易型と詳細型の波浪モニター法を検討し提案した。 [2] 性能データ自動計測・収録法 実海域の推進性能を把握する方法を大幅に改良する推進性能データ自動計測・解析機能を持つプロトタイプ性能モニターの改良・開発を行った。 本シシステムは、船上における一次自動解析システムと波浪影響解析、操縦性影響解析、汚損影響解析などの2次解析システムから構成され、実船における長期運用によりその有効性が実証された。 [3] 構造応答のセンシング及び計測法 構造応答モニタリングシステムへの応用を念頭に、光ファイバーによる歪みのセンサー、犠牲試験片による亀裂センサーを実船に適用し、実用の可能性を得た。 また、構造モニタリングシステムの機能としての航海支援モニタリング及び保守支援モニタリングに要求されるセンシング技術及びモニターデータの解析技術について検討し、歪みの極値統計による最大値予測、船体運動と構造応答相関解析、ニューラルネットワークを利用した解析及び疲労累積解析などにより船体の安全性を評価できることが示された。 (3) 提案方式の計測試行及び中期計測データの取得 [1] 実船での実環境フィールドテストの実施 コンテナ船及びバルクキャリアの2隻に装備したモニタリングシステムにより、自動計測で得られたデータを解析するフィールドテストを行った。 [2] 高度モニタリング対応計測法の提案 高度モニタリング対応計測法の要件として、「簡易である」、「迅速である」、「長持ちする」の点が上げられる。 波浪モニターでは簡易型、性能モニターでは自動計測・自動解析、構造モニターでは解析援用型(直接センシング個所の極小化)を検討し、それらの検討結果を基に対応計測法を提案した。 (4) 解析法の研究と計測結果による解析法の検証 [1] 実海域性能解析法の研究 従来のアブログ情報による性能解析結果とモニタリングデータを基にした解析法(SR233法)による結果を比較検討した。 従来法に比べ、データの同時性により性能諸値の相関が明確となること、多頻度収録データにより解析精度が向上すること等の検証を行った。 [2] 実海域構造応答解析法の研究 実船フィールドテストのデータを基に波浪中での船体運動と構造応答の相関について検討し、構造解析法の検証を行った。 (5) 総合とりまとめ 過去3年間の各研究内容と成果を総合的見地から成果報告書として取りまとめた。この結果、開発されたモニタリングシステムは船舶安全運航面に有効であることが確認された。 (6)報告書 [1] 規 格 A4版 26ページ [2] 部 数 300部 [3] 配布先及び配布数 a.配布先 会員、委員、関係団体、省庁等 b.配布数 300部
■事業の成果
(1) 波浪/性能/構造を総合的にモニターする「高度モニタリングシステム」のコンセプト・仕様(SR233AMS)の提案ができた。 (2) 高度モニタリングを構成する基礎技術として、波浪/性能/構造の分野にわたり、センシング/データ処理/データ通信/データ解析等の新しい技術を得た。 (3) 「高度モニタリングシステム」の実船での試行検証(フィールドテスト)により、その成果がより確かなものとなった。
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