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■事業の内容

(1) アジア・アフリカ等におけるらい対策研究及び援助
 [1] 技術者研修
  a.海外技術者研修
   (a) フェローシップ(45名)
   (b) スカラーシップ(348名)
  b.海外専門家技術者研修
   (a) 中国国内セミナー
   (b) ブラジル国内セミナー
   (c) ネパール国内セミナー
   (d) バングラデシュ国内セミナー
   (e) エチオピア国内セミナー
   (f) インド国内セミナー
   (g) カンボジア国内セミナー
  c.専門家技術者研修(国際医療協力研修)
    国際保健協力フィールドワーク・フェローシップ(14名)
  d.ハンセン病に関する教材の開発及び供与
   (a) ハンセン病蔓延国に適する教材の作成及び配布
   ア.Prevention of disabilities in Patients with Leprosy
      −A practical guide (中国語版)           8,000部
   イ.第15回国際らい学会抜粋資料             1,500部
   ウ.An Atlas of Leprosy(インドネシア語版注釈)         500部
   エ. ハンセン病ハンドブックマニュアル           6,000部
   オ. 医療診断用説明ポスター               10,000部
   カ. フィリップチャート                     5冊
   キ. 医療診断用カート                   5,000部
   ク. ハンセン病パンフレット                5,000部
   ケ. ハンセン病スライドシリーズ              6セット
   (b) 世界各国に現存するハンセン病関係教材の収集及び整理
   ア.ハンセン病医療教材ビデオ
    (ブラジル/セアラ州)                  100巻
   イ.TALMilep (ハンセン病教材共同プログラム)
 [2] 現地技術協力
  a.専門家の派遣
   (a) 対 象 国  中国、パプアニューギニア、ミクロネシア、ベトナム、ネパール
   (b) 派遣人員  17名
 [3] WHO、ILEP等らい関係諸機関との協議、連絡及び調整
   WHO、ILEP及び海外救らい団体等との協議、連絡6回
 [4] ハンセン病に関する基礎及び実地研究
  a.ハンセン病の化学療法に関する国際共同研究
   (a) 実施場所  タイ 笹川記念研究施設
   (b) 研究内容

 ア.レプロミンとレプロミンを使った皮膚反応診断
   イ.PGL−1や35Kdaの蛋白を使用したELIZA法による血清診断
   ウ.らい菌遺伝子を検出するPCR法等
  b.化学療法共同研究運営委員会の開催
   (a) 開催場所  タイ
   (b) 会議内容
   ア.ハンセン病研究プロジェクトについての進捗状況報告
   イ.タイ笹川記念研究施設の今後の運営方針と研究活動の検討
   ウ.アニマルハウスプロジェクトの検討
   (c) 参 加 者
     タイ側 7名
     日本側 2名
     委 員 2名
 [5] 薬品機材供与
   アジア・アフリカ等に対する薬品・機材供与
  a.対 象 国  カンボジア、タイ、アンゴラ、ブラジル、インド、フィリピン、スーダン、ネパール、ブータン、モザンビーク、ベトナム、バングラデシュ
  b.供与品目  治らい薬、研究用機材、研修用プロジェクター、研修用OHP、フィールドワーク用車両等
 [6] ハンセン病に関する広報啓蒙活動
  a.啓蒙用パネル、パンフレットの作成
   (a) ハンセン病回復者社会復帰活動啓発用
     パネル       17枚
     パンフレット 3,500部
   (b) バングラデシュハンセン病制圧啓蒙教育活動資材        9件
   (c) ハンセン病社会復帰ガイドライン           1,000部
  b.ハンセン病制圧活動推進のための啓発活動
    ネパール・レプロシー、トラスト現地ドラマチームによる啓蒙活動
  c.ハンセン病関係教材の購入
   (a) International Journal of Leprosy            118部
   (b) 日本ハンセン病学会誌                  141部
 [7] MDT薬品供与体制の整備
  a.アドバイザリーコミッティーの運営(諮問委員会の開催)
   (a) 第1回  1998年 6月 ブラジル
   (b) 第2回  1998年10月 東京
   (c) 第3回  1999年 3月 モザンビーク
  b.供与対象国MDT評価調査
   (a) 派遣国  ベトナム、フィリピン、ミクロネシア、パプアニューギニア、カンボジア、タイ、ネパール、バングラデシュ、インド、インドネシア、モザンビーク、英国、スイス
   (b) 派遣者  延べ11名
  c.対象国実務者による調査
    対象国  ネパール、インド、パプアニューギニア
 [8] ハンセン病制圧特別行動プログラム(SAPEL)並びに制圧キャンペーン(LEC)
   SAPEL/LEC支援
   対象国  パプアニューギニア、ベトナム、フィリピン、タンザニア、コンゴ、ネパール、バングラデシュ
 [9] 国際会議
 a.ハンセン病国際会議/国際らい学会の開催(於北京)
   (a) 開催日時  1998年9月7日〜9月12日
   (b) 開催場所  北京市(北京国際会議センター)
  (c) 主  題  「ハンセン病のない世界をめざして」
           Working Toward A World without Leprosy
   (d) 参 加 者  77ヵ国1,119名
  b.ハンセン病国際会議準備委員会の開催(於米国)
   (a) 開催日時  1998年4月2日〜4月3日
   (b) 開催場所  米国・アトランタ
(2) アジア・アフリカ等における寄生虫症対策研究及び援助
 [1] 技術者研修
  a.中国寄生虫分子生物学の専門家研修
   (a) 研修場所  日本
   (b) 研修人員  2名(中国人研修生)
  b.海外寄生虫技術者研修
   (a) 研修場所  タイ
   (b) 研修人員  11ヵ国26名
  c.国際寄生虫学会専門家研修(於日本)
   (a) 研修場所  日本
   (b) 研修人員  12名
 [2] 寄生虫症対策プログラム協議会
  a.西太平洋地域寄生虫症対策プログラム協議会(於フィリピン)
   (a) 開催場所  マニラ(WHO西太平洋地域事務所)
   (b) 開催期間  1998年4月13日〜4月15日
   (c) 開催目的
   ア.西太平洋地域、東南アジアを中心とした国々の寄生虫症疾患対策に関する現状の見直し
   イ.寄生虫症コントロールにおける問題点と進捗に関する検討
   ウ.寄生虫予防対策の推進と地域での協力体制強化のため具体的方策についての検討
   (d) 参 加 者  23ヵ国48名
 [3] 現地技術協力
   アジア・アフリカ等における技術協力
  a.派 遣 国  フィリピン、カンボジア、中央アフリカ共和国
  b.派遣人員  8名
 [4] 薬品機材供与
   アジア・アフリカ等に対する薬品機材供与
  a.対 象 国  フィリピン、中央アフリカ共和国、カンボジア
  b.供与品目  薬品、検査用機器等
 ※本事業は平成11年6月30日完了予定である。
■事業の成果

21世紀を目前に控え、1991年WHOが宣言した「2000年までに公衆衛生上の問題としてのハンセン病を制圧する」という課題が、今日まで世界各国の保健省、WHO、世界のNGO等の地味な努力と連携の中で強力に進められている。当財団設立の1974年当初、1,200万人とも推定されていた患者数は、1998年現在のWHO統計 (Leprosy Status Report'98) によるとハンセン病登録患者数は、約83万人となっている。これは1980年初頭より導入されたMDT(らい多剤併用療法)の拡大とそれに伴う人材育成、治らい薬品、必要機材の供与と共に各国の専門家やハンセン病従事者によるMDT評価調査活動の強化とフォローアップの推進によるところが大きい。さらにここ数年日本財団の協力なイニシャティヴによってMDTの全世界的な拡大が進み、新発見患者には、即刻MDTが実行される体制が出来ている。また、SAPEL(通常の保健サービスの実施が困難な地域にMDTを実施する特別プログラム)並びにLEC(潜在患者を発見し、治療を実施するためのキャンペーン)についてもネパール、バングラデシュ、パプアニューギニア等にて実施されており、その結果、特にLEC実施国においては、新患者の発見率が増加し、ハンセン病制圧への実質的な効果が現れるに至っている。
 一方、本年度は、1897年に第1回国際らい学会がベルリンで開催されてから、100年を経た節目の年であり,また今世紀最後の学会となることから、西暦2000年に先駆けてハンセン病を制圧する目標を掲げ、取り組んできた中国(北京)において「ハンセン病国際会議/第15回国際らい学会」が開催された。同国際会議では、『ハンセン病のない世界をめざして』をテーマとして近年のMDTの成果を評価し、今後残された課題としてハンセン病の治療、社会的側面、及びリハビリテーション、早期診断のための基礎研究等、総合的な見地から検討がなされた。また参加者も従来のハンセン病専門家・研究者に加えて、保健行政の担当者、フィールドワーカー、さらにはハンセン病回復者等あらゆる部門から77ヵ国1,000名を越える人々が一同に会し、世界のハンセン病対策の新しい方向づけをする上で極めて意義のある機会となった。
 寄生虫症対策については、本年度WHO西太平洋地域事務局にて開催されたアジアにおける寄生虫症対策協議会において西太平洋並びに、東南アジア地域を中心とした各国の担当官、WHO専門家等の参加を得、各国からの現況報告と今後の寄生虫対策の具体的プログラムの協力方法について検討がなされた。その結果、現在まで当財団が実施継続してきた実績とその成果をもとにして、研究調査から具体的なコントロールへの方向性が明示された。また例年のとおり、フィリピン、カンボジア、中央アフリカへの現地技術協力を行うとともに、研修事業では中国の寄生虫専門家の分子生物学に関する日本での研修並びにタイ・マヒドン大学での海外寄生虫技術者研修を行った。さらに、本年アジアで初めて日本(千葉・幕張)で開催された第9回国際寄生虫学会に途上国の専門家を招聘し、世界の寄生虫専門家との意見交換を含めた研修を実施した。
 以上、世界には未だに解決できない幾多の保健問題が残されているが、当財団の多岐にわたる継続的な協力活動によって、ハンセン病の制圧活動の推進や地域に根差した寄生虫症対策が向上の方向に着々とすすみ、世界の人々の保健衛生の向上に大きく寄与できたものと思われる。





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