日本財団 図書館


■事業の内容

共通乗車カードは乗り継ぎ時の利便性を大きく改善するものであり、特に首都圏等、公共交通機関の発達している地域においては、共通乗車カードの導入による利用者利便の向上は大きいものがある。
 しかしながら、事業者間、あるいは鉄道、バス等の異なる輸送モード間での共通利用範囲の拡大・普及を図る上では、[1]共通化に伴うセキュリティの確保、[2]事業者間の精算体制の整備、[3]費用負担等解決すべき多くの課題がある。このような状況の中で共通乗車カードの問題に応える新しい媒体としてICカードが注目されている。
 本事業は、ICカードを活用して共通乗車カード制度を推進していくにあたっての技術的課題と今後新たに展開される運賃制度のあり方について調査研究を行い、人や社会に優しく、利便性・信頼性が高い公共交通機関の整備・拡充に資する共通乗車カードの実用化の基礎資料を作成することを目的に実施した。
(1) 実施方法
 委員会審議
 委員会を設置し、それぞれの調査方法の決定、調査内容の検討を行い、海外・現地調査を実施し、作業の一部を専門機関に委託した。
(2) 調査項目
 [1] 共通乗車カードと金融カードの共通化についての検討
 [2] ICカードを利用したプリペイドシステムの海外調査の実施
 [3] 共通乗車カードの基本仕様及びセキュリティ確保方策の検討
 [4] 共通乗車カードの技術的課題、制度的問題点等の検討
   (導入後の運賃精算方式、経理処理方式等)
 [5] 共通乗車カードのシステムコンセプトの構築
(3) 実態調査
 [1] 国内調査
   5月14日〜15日
   ヒアリング調査 複数事業者間及びバス・鉄道共通乗車カード利用の把握
   大阪市、阪急電鉄(株)、大阪市交通局 3人
   7月30日〜8月1日
   ヒアリング調査 金融カード、物販カードとの共通化の可能性及び共通カードの利用状況の把握
   函館市 函館市交通局、札幌市 北海道中央バス(株) 2人
   2月4日〜5日
   ヒアリング調査 信用金庫及び商工会議所で接触式ICカードの多機能カードの実態把握
   伊那市 伊那信用金庫、伊那商工会議所
   駒ヶ根市 赤穂信用金庫、駒ヶ根スタンプ協会 2人
   11月12日
   現地調査 仙台市内の地下鉄・バス共通カードシステムを調査
   調査地 仙台市内 2人
   12月7日、8日
   現地調査 福岡市内の地下鉄・バス共通カードシステムを調査
   調査地 福岡市内 2人
 [2] 海外調査
   9月28日〜10月8日
   海外現地調査 共通乗車カードと金融カードの共通事例及びICカードを利用したプリペイドシステムの事例調査
   調査地 ロンドン(イギリス)、マドリッド(スペイン)、ブリュッセル(ベルギー)、アムステルダム(オランダ) 1人
(4) 報告書作成
 [1] 部 数  250部
 [2] 配布先  関係官公庁、関係諸団体、大学、ヒアリング先、その他
■事業の成果

IC (Integrated Circuit:集積回路)カードは、それ自体でデータ処理を行い、従来の磁気カードに比べ記憶容量が格段に大きく、高度なセキュリティの確保が可能である上、近年は技術革新により価格の低廉化が進んでいるため、今後の有望な移動型情報記録媒体として注目を集めており、近年では様々な分野での活用が試みられている。

 本事業は、このICカードを利用して定期券とSF(ストアードフェア)乗車券の機能を1枚のカードに収容し、また異なる事業者間や鉄道、バス等の異なる輸送モード間での共通使用を可能にすることにより、乗り継ぎ毎の乗車券購入や乗り越し時の精算といった煩雑な手続きを解消して、公共交通機関の利用における利便性、快適性の向上を図り、加えてプリペイド、ポストペイド、ひいては電子マネーといったこれからの時代に要求されるものの包合をも視野に入れた多機能、多目的な汎用電子乗車券を開発、実用化することを目的とし、そのプロジェクトの推進において利用者ニーズを反映し、しかも交通事業者の早期導入を可能にするための開発コンセプトを確立するため、平成8年度から調査研究を行っているものである。

 本年度は、共通乗車カードシステムの取りまとめを行うとともに、同カードを物販や金融カード等に利用できる汎用電子乗車券のコンセプトについて検討を行った。また、共通乗車カードシステムの取りまとめについては、平成8年度から調査研究した内容からコンセプト、基本仕様、普及促進の検討を行い、また、利用者の実態調査によるコンセプトの検証を実 本調査は、ICの移動型情報記録媒体という機能を利用した共通乗車カードにおける、交通事業者間の技術的課題及び運賃制度問題についての検討を推進したものであり、ICカードを活用した共通乗車カードの実用化を促進し、わが国経済における利便性、信頼性の質の向上に寄与するものと思われる。





日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION