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■事業の内容

本事業は、幅広浅喫水船に重点を置いて、中核となる船型とその船型変化の方針を検討し、その基本的性能を理論計算及び水槽試験によって検証、評価を行い、優れたバランスも満たした上で、実海域における運航性能に優れた中型肥形船の基本計画及び性能評価が大過なくできる設計指針を得ることを目的に、3カ年計画の第3年度の研究として、実施した。
(1) 船型変化の影響評価
 [1] 船型変化の検討
   既存の中小型肥大船の実績調査に基づきコア船型を設定し、その主要性能を水槽試験により把握した後、船首尾肥大度、フレームライン等を変化させた船型変化シリーズを検討した。
 [2] 船型検討
   各船型について基本設計を行い、流体力学的性能以外の諸性能について検討を行った。
 [3] 主要性能の把握
   コア船型(SR231A)および船型変化シリーズ(SR231E,F)に対して水槽試験を実施し、主要性能を把握した。
 [4] 理論計算による改良船型の性能評価
   船体運動(縦揺れ、上下揺れ)の応答および規則波中抵抗増加を各種の手法で計算し、実験結果との比較を行った。また船首ブラントネス係数の大きな船型についての計算結果の適応性について検討した。さらに短波域抵抗増加についての簡便な推定式を求めた。
 [5] 主要性能評価
   運航性能を評価する海象を設定し、その海象下での抵抗増加波浪シーマージンを各船型について算出した。また本研究船に近い実船就航船データの解析を併せて行い本研究会のシーマージン推定値の妥当性を検討した。
 [6] 計算手法の利用法の改善
   既存の理論計算ツールを用いて、各船型の主要性能を推定し、水槽試験結果と比較検証し、精度評価を行うとともに精度向上のための利用法の改善を検討した。
(2) 総合性能と評価法の検討
 [1] 性能感度調査
   流体力微係数が操縦性能に及ぼす感度調査を行い、それに基づく簡易推定式を検討した。また、保針性能、停止性能について、参加各社の保有データおよび本研究船データを基にしたパラメトリックスタディを行った。
 [2] 総合性能の検討
   総合性能の要素を運航経済性、安全性、品質とし、それぞれについて評価指標を検討した。
 [3] 総合性能評価の検討
   流体力学的性能及び載貨重量、容積等の基本設計面での性能、さらに安全性、品質を総合した評価指標に基づく評価手法について検討した。
(3) 設計指針のとりまとめ
 [1] 設計指針の検討
   船体の主要目、肥大度、船首尾形状やプロペラについて、それらの選定にあたってのガイダンス、および主要性能推定手法の適用性と検討課題についてのガイダンスをまとめた。
(4) 報告書
 [1] 規 格  A4版、13ページ
 [2] 部 数  300部
 [3] 配布先及び配布数
  a.配布先  会員、委員、関係団体、省庁等
  b.配布数  300部
■事業の成果

(1) 最新の中小型肥大船の船型や推進性能に関するパラメータでの解析を行い、同種の船の設計を行う上で有効なデータが得られた。
(2) 船型パラメータが及ぼす主要性能への影響を知るツールとして本研究では既存の中型肥形船の外縁に位置するコア船型を中心として限界に近いと考えられる船型まで各種船型パラメータを変化させたシリーズ試験を行い、港湾条件等の制限により浅吃水を不可欠とする船型計画をする上で船型パラメータと諸性能の関係を把握するためのデータが得られた。
(3) 主要性能推定のためのツールとして、現在各造船所で使用されている理論計算による推定値と実験値をシリーズ試験した種々船型について比較検証することは一中手造船所では困難なので、比較検証・精度評価および改善についての提起を行い、理論計算により初期の諸性能推定を行う上でのデータを整備した。
(4) 載貨重量・容積、機関室配置等の船型間での比較評価を流体力学的諸性能評価と併せて行い、基本設計を行う上での総合判断データとして整備した。
(5) 船型の総合性能評価を行うため、運航経済性、安全性、品質について評価指標を提起し、総合評価を行い、造船所・海運会社で船型を評価する上での手法が得られた。





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