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■事業の内容

本事業は、翼面上の大部分がキャビテーション状態で覆われるような非常に厳しい設計条件のプロペラに対応するため、従来からのプロペラ設計法を拡張し、効率のみならず船尾変動圧力をも対象にしたプロペラの最適化に関する研究を行い、高速大型浅喫水船の設計に有益な資料を得ることを目的に、3カ年計画の第3年度の研究として、実施した。
(1) 新型プロペラの開発と設計方法に関する研究
 [1] 新型プロペラの開発
   新型プロペラの開発にあたり、昨年度設定したキャビテーション条件を更に厳しくした場合の影響を調査するために設計速度を30ノットから35ノットに変更し、新型プロペラを設計・製作し、キャビテーション状態プロペラ単独試験を実施して、それらの性能を確認した。
 [2] 単独特性推定法に関する理論的研究
   5機関保有のキャビテーション状態のプロペラ単独特性推定法の改良を実施し、各改良手法で3種のプロペラについて推定計算を実施し、推定手法改良の有効性を評価した。
 [3] 新型プロペラ設計法の研究
   上記[1]にて設計した新型プロペラとの関連を保持し、設計手法に関する影響を調べるために、伴流回転流成分の影響、回転数の影響、更には翼断面形状の影響を考えたシリーズプロペラを設計して単独試験を実施し、新型プロペラの設計結果との比較評価を行った。
(2) 不均一流中でのプロペラ特性及び船尾変動圧力に関する研究
 [1] 船後状態模型試験
   前記(1)にて製作した新型プロペラを船後状態でのキャビテーション試験を実施し、新型プロペラでの各設計要素の影響を調査し確認した。また、試験結果を解析整理し、新型プロペラの総合評価を行った。
 [2] 船尾変動圧力推定法に関する研究
   各機関所有の推定手法の改良を図り、対象試験データについての計算を行い、試験結果と比較して手法の改良程度を評価した。
  (3) 総合まとめ
 過去3年間の各研究項目の内容及び成果の総合的な見直しと評価を行った。
(4) 報告書
 [1] 規 格  A4版 15ページ
 [2] 部 数  300部
 [3] 配布先及び配布数
   a.配布先  会員、委員、関係団体、省庁等
   b.配布数  300部
■事業の成果

(1) 新型プロペラの開発と設計法に関する研究
 [1] 開発したプロペラは、キャビテーション条件が厳しくなるほど従来型プロペラに比べて優位性を発揮することが明確になった。また、効率のみならず船尾変動圧力に関しても優れた性能を有していることを確認した。
 [2] 新型プロペラの全データを分析整理して設計資料としてまとめるとともに、種々要素影響を評価し見直すことにより設計指針としてまとめ、新型プロペラ設計法としての基礎を確立した。新しく開発したプロペラを「トランスキャビテーション・プロペラ(TCP)」と称することとした。
   また、翼断面シリーズ設計結果を数式表現し、新型プロペラ設計ツールに織り込み、新型プロペラの総合評価を実施してその可能性と残された今後の課題点を抽出した。
(2) キャビテーション性能推定精度に関する研究
 [1] プロペラ単独特性推定法の改良を試みた結果、各推定法とも定量的には十分ではないが、スラスト・ブレークダウン前後の性能変化が予測可能になり、新型プロペラの設計精度を向上させ、また、従来型プロペラでの危険回避に寄与可能なレベルとなった。
 [2] 各推定手法とも船尾変動圧力を支配する翼面上のキャビティボリューム推定量は改善され、その結果、定量的にはまだ不十分であるが、船尾変動圧力の推定精度も向上し、プロペラ形状差の影響を定性的には評価できるようになった。このほか、キャビテーションの発生、消滅位置が船尾変動圧力に大きく影響することが分かる等貴重な基礎的知識を得ることができた。
(3) 総合まとめ
 過去3年間の各研究内容と成果を総合的な見地から成果報告書としてまとめた。開発された新型プロペラは、従来型プロペラとスパーキャビテーション・プロペラとの隙間を埋める新しいタイプのプロペラであり、種々の船舶に活用されうる大きな成果であることが確認された。





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