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■事業の内容

近年の電気、電子技術の進歩と船舶の自動化、近代化の進展によって船舶の電気、電子、無線設備はより高性能化し、その設備は増加の傾向にある。特にGMDSS設備については、平成11年1月31日で導入が完了し、また平成9年6月には、船舶安全法が改正されると同時に船舶検査の方法も改正され、舶電気設備の効力試験の強化が図られるなど電気、電子、無線設備の適切な装備・整備がより一層求められている。
 一方、造船所においては、企業の合理化を図るため、従業員の削減が一層進み、電装工事のみならず電装設計まで社外の電装事業者に依存する傾向が増加している。
 このような状況から、電装技術者はより高度な技術と専門知識が求められている。当協会は、技術指導事業を実施して電装技術者の育成、技術の向上を図ってきたところであり、小規模企業が大半をしめる当業界にとって本事業の果たす役割は、益々重要なものになっている。
 船舶電装技術者、航海用レーダ装備技術者及び航海用無線設備装備技術者に対し、講習及び資格検定試験を実施し、資格を賦与するとともに、資格者に対しては資格更新のための研修を実施するなど、電装業界全体の技術レベルの向上を促進し、国の船舶検査の合理化の一翼を担っている認定事業者制度、登録事業者制度及びGMDSS設備サービス・ステーション制度の充実、普及を図り、併せて海上における人命の安全を図るため本事業を実施した。
(1) 講習
 [1] 指導書の作成・配布
   強電(初級、中級)及び弱電(レーダー、無線設備)の各講習に使用する指導書について関係諸法令の改正等に基づく修正等を行い改訂版を作成し、受講者等に配布した。
  a.強電(初級)
   (a) 規 格  B5判オフセット 706頁(4分冊)
  (b) 部 数  100部
  (c) 内 容  電気装備概論編(101頁)、電気艤装工事編(219頁)、電気機器編(194頁)、電気工学の基礎編(150頁)
  b.強電(中級)
  (a) 規 格  B5判オフセット 767頁(5分冊)
   (b) 部 数  80部
  (c) 内 容  船舶法規編(98頁)、電気計算編(131頁)、電気艤装設計編(135頁)、電気装備技術基準編(281頁)、試験検査編(122頁)
  c.弱電(レーダー)
   (a) 規 格  B5判オフセット 687頁(3分冊)
   (b) 部 数  120部
   (c) 内 容  機器保守整備編(139頁)、基礎理論編(262頁)、艤装工事編(286頁)
  d.弱電(無線設備)
   (a) 規 格  B5判オフセット 849頁(3分冊)
   (b) 部 数  120部
   (c) 内 容  基礎理論編(199頁)、艤装工事編及び保守整備編(334頁)、法規編(316頁)
 [2] 講習の実施
   初級、中級及びレーダーの講習については通信講習(添削指導)として実施した。無線設備講習については、5カ所を実施する計画をしていたが、北海道、四国地区を希望する者が極めて少なかったため、3カ所で実施(各地3日間)した。
  a.強電(初級)
   (a) 対象人員  66名(内62名修了)
   (b) 期  間  平成10年7月から9月までの約3カ月間
   (c) 指 導 員  1名
  b.強電(中級)
   (a) 対象人員  44名(内42名修了)
   (b) 期  間  平成10年7月から9月までの約3カ月間
   (c) 指 導 員  1名
  c.弱電(レーダー)
   (a) 対象人員  85名(内85名修了)
   (b) 期  間  平成10年7月から9月までの約3カ月間
(c) 指 導 員  1名
  d.弱電(無線設備)
  (a) 対象人員  69名(内63名修了)
   (b) 実施場所  東京(江東区)、大阪市、福岡市
     及び期間  各地3日間
   (c) 講  師  2名
(2) 検定試験
 講習(初級、中級、レーダー、無線設備)を修了した者に対し、電気装備、レーダー装備、無線設備装備に関する知識、技術を評価するため、下記のとおり検定試験(船舶電装士、主任船舶電装士、航海用レーダー整備士、航海用無線設備整備士)を実施した。
 なお、初級、中級、レーダーの検定試験は当初、北海道、東北、関東、中国、四国、九州の6カ所で実施すべく、講習、受験の募集を行ったところ近畿地区を希望する者が多かったため、追加して7カ所において実施した。無線設備の検定試験については、5カ所で実施する計画をしていたが、北海道、四国地区を希望する者が極めて少なかったため、3カ所で実施(各地3日間)した。
 [1] 船舶電装士、主任船舶電装士、航海用レーダー整備士
実施地/実施年月日(日数)/   参      加      者
               試験員/職員/受   験   者
               電装士/主 任/レーダー/合計
札幌市/平成10年10月6日(1日)/3名/1名/3名/1名/5名/9名
仙台市/〃  10月8日(〃)/〃/〃/5名/2名/4名/11名
東京都/〃  11月25日(〃)/〃/〃/16名/6名/24名/46名
大阪市/〃  11月10日(〃)/〃/〃/4名/3名/21名/28名
尾道市/〃  10月22日(〃)/〃/〃/16名/7名/3名/26名
高松市/〃  10月20日(〃)/〃/〃/5名/7名/2名/14名
福岡市/〃  10月12日(〃)/〃/〃/9名/18名/26名/53名
     計    58名/44名/85名/187名
  *受験者欄の電装士、主任、レーダーとあるのは、船舶電装士、主任船舶電装士、航海用レーダー整備士の略である。
 [2] 航海用無線設備整備士
実施地 実施年月日(日数) 参  加  者
              試験員/職 員/受験者
東京都/平成10年12月4日(1日)/2名/1名/22名
大阪市/〃  10月16日(〃)/〃/〃/14名
福岡市/〃  10月30日(〃)/〃/〃/29名
                 計 65名
(3) 資格更新研修
   船舶電装士、主任船舶電装士、船舶電装管理者、航海用レーダー整備士、航海用無線設備整備士の資格受有者で該当する資格者(H11.3.31満了の者)及び繰上げ更新を希望する資格者に対し、指導書を配布して更新研修を実施した。
 [1] 指導書の作成
  a.強電
   (a) 規 格  B5判 オフセット 306頁
  (b) 部 数  500部
  (c) 内 容  船舶電気設備関係法令についての解説
  b.弱電
   (a) 規 格  B5判 オフセット 259頁
   (b) 部 数  200部
  (c) 内 容  船舶電気設備関係法令(レーダー等、無線設備)についての解説
 [2] 添削指導
  a.強 電 対象人員411名(内更新修了者399名)
  b.弱 電   〃 191名(内更新修了者187名)
(4) 船舶電気装備資格者名簿の作成
   平成10年度版を作成した。
 [1] 規 格  A4判 オフセット 118頁
 [2] 部 数  700部
 [3] 内 容  運輸局・海運支局別、事業場別、資格別名簿
■事業の成果

本年度の検定試験では、船舶電装士41名、主任船舶電装士34名、航海用レーダー整備士81名、航海用無線設備整備士63名が合格した。(また、自主事業で実施した上級講習・検定試験では4名の船舶電装管理者が合格した。)

 本年度中には、運輸省の「特定のサービス・ステーション等」の制度により、電装認定事業場2、GMDSS設備サービス・ステーション14、レーダー等の装備工事及び整備事業場23の事業場が新たに運輸局から証明書を受けたことにより、各々179事業場、144事業場、122事業場までになった。

 本年度も上記の資格者が誕生したことにより、更に平成11年度における船舶電気艤装工事事業場及びGMDSS設備のサービス・ステーション並びにレーダー等の装備工事及び整備事業場の増加が見込まれ、これらの制度の充実、維持、拡充が図られるものと確信する。本制度は、国の船舶検査合理化の一役を担うものであるから、今後益々その重要性が高まるものであり、これら資格制度の果たす役割は、極めて大きいものがある。

 これら、一連の技術指導をとおして会員会社の船舶電装工事従事者の技術向上が図られ、今後も運輸省の「特定のサービス・ステーション等」の制度の充実・拡大に貢献することとしたい。





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