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1998年(平成10年)

平成9年横審第30号
    件名
貨物船第十五戎丸遭難事件

    事件区分
遭難事件
    言渡年月日
平成10年3月24日

    審判庁区分
地方海難審判庁
横浜地方海難審判庁

大本直宏、勝又三郎、西山烝一
    理事官
吉澤和彦

    受審人
A 職名:第十五戎丸船長 海技免状:五級海技士(航海)
    指定海難関係人

    損害
全損

    原因
荷役中止基準の遵守不十分

    主文
本件遭難は、着桟して揚荷役中しけ模様となった際、荷役中止基準の遵守が不十分で、離桟措置をとらず、船体と桟橋との接触により、外板に損傷と破口とを生じたことによって発生したものである。
受審人Aの五級海技士(航海)の業務を1箇月停止する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成7年11月1日09時10分
東京湾横断道路建設区域の川崎人工島
2 船舶の要目
船種船名 貨物船第十五
総トン数 199.45トン
長さ 34.25メートル
幅 7.50メートル
深さ 3.30メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 330キロワット
3 事実の経過
第十五丸(以下「戎丸」という。)は、全長38.45メートルの船尾船橋型の鋼製貨物船で、昭和45年12月に船名を第八住吉丸と称して進水し、セメントタンカーとして稼動していたところ、平成3年8月28日カーゴトランク等を改造して総トン数を23.33トン減じ、船首隔壁と機関室兼船尾隔壁との間を全通にした貨物倉一つがあり、平成6年12月12日船名を現状に変更して係船中、平成7年ごろから東京湾横断道路建設工事の生石灰運搬船として専ら同湾内で稼働していた。
こうして、戎丸は、A受審人ほか3人が乗り組み、平成7年11月1日06時00分千葉港千葉区第4区の養老川物揚岸壁を発し、同区の宇部興産岸壁に寄せて生石灰134トンを載せ、船首1.50メートル船尾2.50メートルの喫水をもって、同建設工事区域の川崎人工島に向かった。
ところで、風の塔と称する川崎人工島は、同島の各南、北両側の海面に、ほぼ正三角形状で、底辺から頂点までの長さ49メートルのドルフィン式緩衝工(以下「緩衝工」という。)があって、底辺が同島から36メートル離れたところに設けられる完成像を目的に、同島とともに工事中であった。
当時の南側緩衝工は、逆三角形状で海面上約5メートルの作業場となっており、資材運搬船などが着桟できるよう、南西側に面する一辺が仮設桟橋(以下「南西側桟矯」という。)として使われていた。
南西側桟橋は、桟橋沿いの中央部に15.3メートル離れてH型鋼2本が海底に打ち込まれ、いずれも海面上約1メートル高さとなる先端まで、南西面にはゴム製の防舷材が張り付けられていたものの、係留船舶が上下動すると、その外板が先端の鋼材部に接触して損傷などをもたらすことになるので、荷役中止基準として、風速15メートル毎秒(以下、風速は毎秒のものを示す。)及び波高1.5メートルを上限に、視程1キロメートル以下を下限に利用され、A受審人は風速などの同基準値があることを知っていた。
08時30分A受審人は、風速10メートル前後の南西風が連吹するなか、南西側桟橋に船首船尾ともに各2本ずつの係留索を係上し、左舷を対して係留し、同時45分桟橋側からホースを連結して船内の移送装置により揚荷役を開始したとき、折からの南西風が増大し、その後荷役中止基準である風速15メートルを超える状況を認めたが、大丈夫と思い、同基準の遵守を十分に行うことなく、揚荷役を速やかに中止し桟橋から離れる措置をとらず、揚荷役を続行した。
こうして、A受審人は、時折、風速が20メートルを超え、波高も3ないし4メートルとなる状況下、ますます船体の上下動が大きくなり、09時10分東京灯標から真方位176度4.6海里の係留地点において、生石灰15トンを揚荷したころ、H型鋼の先端部と左舷外板との衝突が激しくなって、左舷船首部外板数箇所に亀(き)裂及び破口が発生し、船倉内に海水が流入しているのを認めた。
当時、天候は晴で風力8の南西風が吹き、潮候は上げ潮の中央期で、09時20分東京管区気象台から強風波浪注意報が発表された。
間もなく、A受審人は、揚荷役を中止し、手配した引船1隻を操船補助に使い離桟して、投錨の目的で羽田沖に向け北上中、船倉内へ流入した海水が、移送装置駆動軸の機関室隔壁の貫通部から機関室へも浸入し、その後運航不能となり、11時23分東京灯標から真方位178度3.2海里の地点において、沈没した。
その結果、桟橋に損傷はなく、戎丸は全損となり、乗組員は海上保安庁のヘリコプターで全員救助された。

(原因)
本件遭難は、東京湾川崎人工島の緩衝工の工事現場に着桟して揚荷役中、風勢が増大して荷役中止基準を超えた際、同中止基準の遵守が不十分で、速やかに離桟措置をとらず、船体と桟橋との接触により、外板に損傷と破口とを生じたことによって発生したものである。

(受審人の所為)
A受審人は、東京湾川崎人工島に係留して揚荷役中、折からの南西風が増大し、その後荷役中止基準である風速15メートルを超える状況を認めた場合、同基準の風速値を知っていたのであるから、船体は損傷を生じないよう、同基準の遵守を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、大丈夫と思い、同基準の遵守を十分に行わなかった職務上の過失により、揚荷役を速やかに中止し離桟装置をとらず、揚荷役を続行し船体と桟橋との接触により、外板に亀裂と破口を生じさせ、船内に海水の流入を招き、離桟後に戎丸を沈没させるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第2号を適用して同人の五級海技士(航海)の業務を1箇月停止する。

よって主文のとおり裁決する。






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