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海難審判庁裁決録(平成10年度)

 事業名 海難審判庁裁決録の刊行配布
 団体名 海難審判・船舶事故調査協会  




1998年(平成10年)

平成10年仙審第31号
    件名
漁船第三海王丸乗揚事件

    事件区分
乗揚事件
    言渡年月日
平成10年11月25日

    審判庁区分
地方海難審判庁
仙台地方海難審判庁

高橋昭雄、供田仁男、今泉豊光
    理事官
黒田均

    受審人
A 職名:第三海王丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
船底外板に破口を生じて浸水、のち全損として処理

    原因
居眠り運航防止措置不十分

    主文
本件乗揚は、居眠り運航の防止措置が十分でなかったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成9年9月12日02時45分
下北半島北岸
2 船舶の要目
船種船名 漁船第三海王丸
総トン数 19.79トン
登録長 17.58メートル
機関の種類 ディーゼル機関
漁船法馬力数 130
3 事実の経過
第三海王丸は、いか一本釣り漁業に従事する木造漁船で、A受審人ほか1人が乗り組み、操業の目的で、船首1.0メートル船尾1.8メートルの喫水をもって、平成9年9月9日14時00分青森県大畑港を発し、北海道苫小牧港沖合の漁場に向かった。
ところで、A受審人は、平素大畑港を基地に15時ごろ出港して同県尻屋埼沖で操業し、翌朝08時ごろ帰港する操業(以下「一晩操業」という。)を行っていたが、その漁法が「かんどり」と称して操業中ほとんど休息をとることができず、帰港後に約5時間の睡眠をとるようにしていた。
A受審人は、この度たまたま苫小牧港沖合漁場の好漁況の情報を得て同漁場に向かったもので、船速の遅い自船にとってこれまでのように一晩操業を行うことが難しい状況であった。
そこで、A受審人は、同日19時ごろ室蘭港沖合から苫小牧港沖合にかけての漁場で操業を行ったのち、翌10日06時北海道臼尻港に入港して水揚げを行い、その後休息をとり再び同日夕方同港から同漁場に向かった。その後漁場に至って探索を続け、翌11日03時ごろから苫小牧港南方9海里沖合の漁場で操業を再開し、その後漁場を移動しながら操業を続けた。
こうして、A受審人は、同日18時30分苫小牧港南東方22海里の地点で操業を終えたときには、いか1.8トンを獲る大漁で甲板上には多量の漁獲物が未整理状態のままであったので、自動操舵とし甲板員と共に箱詰め作業を行いながら大畑港に向けて帰途に就いた。
ところが、A受審人は、前日夕方以来甲板員共々ほとんど休息をとらずに操業を続け、そのうえ平素の睡眠時間帯も大幅に過ぎて睡眠不足の状態で、更に甲板上の多量の漁獲物をその鮮度が落ちないうちにできるだけ早く氷を混ぜて箱詰め作業を行う必要があり、そのまま大畑港に直航すると同作業後の当直中に睡眠不足と疲労で居眠りに陥るおそれがあったが、前日同様に最寄りの臼尻港に寄港して休息をとらずに、作業が一段落したのち単独で船橋当直にあたり、なんとかして基地の大畑港に直航しようとしてそのまま同港に向かった。
23時30分A受審人は、恵山岬灯台から090度(真方位、以下同じ。)3.0海里の地点で、津軽海峡の東流の影響を考慮して針路を205度に定め、機関を全速力前進にかけて5度ばかり東方に圧流されながら6.8ノットの対地速力で自動操舵により進行した。ところが、定針後しばらくして立直中足も痛くなるなど全身の疲れと眠気を覚えながらも、甲板員には自分以上に激務を強いて疲れ切っていたうえ作業を終らせ休息させたばかりでもあったので、見張りの補助に呼ぶこともできず、疲れと眠気を払うつもりで船橋前面端の窓を開けて冷気を入れたりしたが、間もなく船橋床上に膝を抱くように座り込みそのまま居眠りに陥った。
こうして、A受審人は、青森県下風呂付近の陸岸に向かって接近していることに気付かないまま続航中、翌12日02時45分下風呂港北防波堤灯台から303度640メートルの地点において、干出岩に原針路、原速力のまま乗り揚げた。
当時、天候は晴で風はほとんどなく、潮侯は下げ潮の末期であった。
乗揚の結果、船体は、船底外板に破口を生じて浸水し、僚船の救助を得て基地に引き寄せられたが、のち修理が長期化するなどの理由により全損として処理された。

(原因)
本件乗揚は、連日大畑港を基地にして尻屋埼沖合での一晩操業に続き、航程上一晩操業の難しい苫小牧港沖合漁場での操業を終えて帰航する際、居眠り運航の防止措置が不十分で、船橋当直者が睡眠不足のまま操業後の作業に引き続いて当直に就き、睡眠不足と疲労から居眠りに陥り、陸岸に向首したまま進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
A受審人は、基地から遠い苫小牧港沖合漁場において、前日夕方からほとんど睡眠をとらないまま翌日夕方まで操業を続けて基地に戻る場合、帰途直ちに甲板上の多量の漁獲物を甲板員と共に箱詰め作業を行わなければならず、睡眠不足と疲労により同作業後の当直中に居眠りに陥るおそれがあったから、帰路にあたる前日水揚げした臼尻港に寄港して休息をとるなどの居眠り運航の防止措置をとるべき注意義務があった。しかし、同人は、なんとかして基地の大畑港に直航しようとして、最寄りの臼尻港に寄港して休息をとるなどの居眠り運航の防止措置をとらないまま大畑港に直航した職務上の過失により、睡眠不足と疲労のあまり船橋当直中居眠りに陥り、陸岸に向首したまま進行して乗揚を招き、船底外板に破口を生じて浸水し、のち全損として処理されるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

よって主文のとおり裁決する。






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