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海難審判庁裁決録(平成10年度)

 事業名 海難審判庁裁決録の刊行配布
 団体名 海難審判・船舶事故調査協会  




1998年(平成10年)

平成10年那審第21号
    件名
遊漁船パナリエキスプレス3乗揚事件

    事件区分
乗揚事件
    言渡年月日
平成10年10月20日

    審判庁区分
地方海難審判庁
門司地方海難審判庁那覇支部

東晴二、井上卓、小金沢重充
    理事官
阿部能正

    受審人
A 職名:パナリエキスプレス3船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
両舷のプロペラ及びプロペラ軸に曲損

    原因
針路選定不適切

    主文
本件乗揚は、針路の選定が適切でなかったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成9年11月13日12時50分
沖縄県八重山列島黒島
2 船舶の要目
船種船名 遊漁船パナリエキスプレス3
総トン数 17トン
全長 16.65メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 1,309キロワット
3 事実の経過
パナリエキスプレス3は、有限会社Aが遊漁船業を営む目的で借り受けたFRP製遊漁船で、A受審人が1人で乗り組み、行楽に出かける同社従業員及びその家族6人を乗せ、船首0.80メートル船尾0.95メートルの喫水をもって、平成9年11月13日09時00分沖縄県石垣港を出港し、10時00分同県八重山列島新城島下地北岸の船着場に乗船者の牧場見学のために着け、12時30分同船着場を発し、同じく牧場見学のため更に同列島黒島の黒島港に向かった。
A受審人は、新城島上地の北西岸に沿って北上し、12時37分半大原航路第19号立標から206度(真方位、以下同じ。)1,400メートルの地点に達したとき、針路を黒島北西方海域に向く067度に定め、機関を全速力前進にかけ、16.0ノットの対地速力で、手動操舵により進行した。
ところで、黒島北岸西寄りのところに位置する黒島港は、防波堤(北)と防波堤(西)によって囲われ、両防波堤の間が北北西方向きの防波堤入口となっていて、元来黒島北側海域は水深1メートル以下で浅く、かつ同海域には浅礁が多数散在していたことから、同港岸壁から防波堤入口を経て沖合に至る333度方向に幅30メートル、水深3メートルの直線状の水路(以下「水路」という。)が掘られ、同港に寄る旅客船などはこれを航行するようにしていた。
また、A受審人は、黒島港には十数回入港したことがあり、おおむね水路によっており、防波堤入口外側の水路以外のところは浅く、浅礁も散在していることを十分承知していた。
A受審人は、やがて黒島北西方海域に達したが、天気も良く、海上が穏やかであったことから、防波堤入口外側の浅礁については速力を減じて航行すれば、目視により避けられるものと思い、12時46分半黒島第4号立標から278度1,800メートルの地点に差し掛かったとき、防波堤入口の沖合に達したうえ水路を航行するという安全な針路を選定することなく、近まわりしようと、針路を直接防波堤入口に向かう106度に転じ、防波堤(西)の北東端を正船首少し右方に見ながら続航した。
12時49分A受審人は、防波堤入口まで350メートルとなったとき、機関を4.0ノットの極微速力前進に減じるとともに従業員に船首における見張りを頼み、同一針路で浅礁を探しながら続航したが、海面が鏡状で太陽光線が反射して浅礁が見付けにくい伏態であったこともあって、前方の危険な浅礁に気付かず、12時50分黒島第4号立標から245度400メートルの地点において、パナリエキスプレス3は、防波堤(西)外側の浅礁に乗り揚げ、擦過した。
当時、天候は晴で風はほとんどなく、潮候は上げ潮の初期であった。
A受審人は、自力で黒島港岸壁に着け、事後の措置に当たった。
乗揚の結果、両舷のプロペラ及びプロペラ軸に曲損を生じ、のち修理された。

(原因)
本件乗揚は、沖縄県八重山列島黒島北西方海域を経て同島黒島港に入港するにあたり、針路の選定が不適切で、同港防波堤入口沖合から同入口に至る水路によらず、同島北西方海域から直接浅礁の散在する同港防波堤入口外側に向かう針路で進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
A受審人は、沖縄県八重山列島黒島北西方海域を経て同島黒島港に入港する場合、同港防波堤入口沖合から同入口に至る水路を航行すべき注意義務があった。しかるに、同人は、防波堤入口外側に散在する浅礁については速力を減じて進行すれば、目視により避けられるものと思い、同水路によらず、近まわりしようと、黒島北西方海域から直接防波堤入口外側に向かった職務上の過失により、浅礁への乗揚を招き、プロペラ等を損傷させるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

よって主文のとおり裁決する。






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