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海難審判庁裁決録(平成10年度)

 事業名 海難審判庁裁決録の刊行配布
 団体名 海難審判・船舶事故調査協会  




1998年(平成10年)

平成9年広審第115号
    件名
貨物船第八大王丸乗揚事件

    事件区分
乗揚事件
    言渡年月日
平成10年10月29日

    審判庁区分
地方海難審判庁
広島地方海難審判庁

釜谷奨一、黒岩貢、横須賀勇一
    理事官
前久保勝己

    受審人
A 職名:第八大王丸船長 海技免状:五級海技士(航海)
    指定海難関係人

    損害
船尾船底部に凹損、推進器翼を曲損

    原因
針路選定不適切

    主文
本件乗揚は、針路の選定が不適切であったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成9年1月6日00時10分
瀬戸内海来島海峡東水道
2 船舶の要目
船種船名 貨物船第八大王丸
総トン数 492トン
登録長 70.01メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 956キロワット
3 事実の経過
第八大三丸は、坂出港でコークスを積み、関門港を揚地とする、専ら両港間の航路に就航する船尾船橋型の貨物船で、A受審人及びB視程海難関系人ほか3人が乗り組み、コークス1,233トンを載せ、船首3.30メートル船尾5.15メートルの喫水をもって平成9年1月5日19時15分坂出港を発し、関門港小倉区に向かった。
A受審人は、船橋当直を4時間毎の単独輪番制とし、自らが毎4時から8時まで、一等航海士が毎8時から12時まで、甲板長が毎0時から4時までの各時間帯をそれぞれ分担して行うように定めていたが、その運用にあたっては適宜調整して実施することにしていた。
A受審人は、港内操船に引き続き、備讃瀬戸東航路及び同北航路の操舵操船に従事し、21時30分ごろ讃岐三埼灯台の西方約4海里の地点で、備後灘航路第6号灯浮標(以下、「備後灘航路」を冠した灯浮標名についてはこれを省略する。)を航過したあたりで一等航海士に船橋当直を任せることとした。
A受審人は、狭水道航路など自らが甲板上の指揮をとることのある水路を通過するにあたっては、平素から、あらかじめ目覚まし時計を予定時刻に作動するように合わせ、同設定時刻に昇橋するようにしており、今回もいつもどおり昇橋すればよいと思い、引継ぎに際し、来島海峡航路東口に差し掛かったとき報告するよう申し送りの指示を徹底することなく降橋して、休息にあたり、目覚まし時計を予定時刻に合わせることを忘れて就寝した。
B指定海難関係人は、23時ごろ高井神島灯台の西方約4海里の、第2号灯浮標を航過したころ、一等航海士から船長に対する申し送り事項のないまま船橋当直を引き継ぎ、針路を備後灘の推薦航路に従った236度(真方位、以下同じ。)に定め、機関を全速力前進にかけて10.0ノットの対地速力で進行した。23時55分B指定海難関係人は、ナガセ鼻灯台から128度2.6海里の地点に達し、来島海峡航路の東口に差し掛かったが、A受審人から報告を行うよう指示の申し送りを受けていなかったものの、そのうち昇橋してくると思い、報告を行うことなく、針路をウズ鼻灯台に向首する299度に転じ、同航路の中水道に向けて続航した。
翌6日00時01分半B指定海難関係人は、ナガセ鼻灯台から134度1.5海里の地点に達したとき、左舷船首1点半1.4海里ばかりのところに北東進する模様の第三船の白、緑2灯を視認し、とりあえず、同船の船首方に転針して様子を見ることとし、針路を愛媛県中渡島の潮流信号所の灯火を目標に定め、323度に転じて操舵を手動として進行した。
00時06分B指定海難関係人は、ナガセ鼻灯台から126度1,580メートルの地点に達し、同信号所と約1,000メートルとなったとき、前示第三船の方位がわずかに船首方に替わる状況となって900メートルばかりに接近したころ、再び転針してこれを避けることとしたが、中水道に向かう針路を選定することなく、更に右転して同船の様子を見ようと針路を中渡島と愛媛県武志島のほぼ中央に向首する346度に転じて続航した。
B指定海難関係人は、このころ船長が昇橋してこないことが気になったものの、間もなく昇橋してくるものと思い進行中、00時08分中渡島の南端寸近に並航したころ、前示第三船が同島の西方を北上していることにやっと気付き、同時09分ナガセ鼻灯台から088度1,000メートルの地点に達し、同島東方にあるゴーノ石を航過したころ反転して中水道に向かおうと右舵一杯をとって回頭中、折からの北西流により圧流され、00時10分第八大王丸は、ナガセ鼻灯台から079度1,170メートルの武志島ソデガ鼻南方の暗岩に、船首が80度に向いたとき、ほぼ原速力のまま乗り揚げた。
当時、天候は晴で風力5の北西風が吹き、潮候は下げ潮の末期で、乗揚地点付近には、約3ノットの北西流があった。
A受審人は、衝撃により昇橋し乗揚の事実を知り、事後の処置にあたった。
乗揚の結果、船尾船底部に凹損を生じ、推進器翼を曲損したが、のち、いずれも修理された。

(原因)
本件乗揚は、夜間、来島海峡航路東口を中水道に向け北上中、同水道を北上する第三船を前方に認めてこれを替わす際、針路の選定が不適切で、武志島と中渡島の間に向首したまま進行したことによって発生したものである。
第八大王丸の運航が適切でなかったのは、船長が引継ぎに際し、来島海峡航路東口に差し掛かったとき、報告することの申し送りの指示が徹底していなかったことと、当直者が同航路東口に差し掛かったことを船長に報告しなかったこととによるものである。

(受審人等の所為)
A受審人は、夜間、備後灘航路を西航し、来島海峡航路東口に向けて航行中、船橋当直を部下に引き継ぎ、降橋して休息する場合、自ら来島海峡航路の操船にあたることのできるよう、当直者に対し昇橋地点に達したら報告することの申し送りの指示を徹底すべき注意義務があった。しかるに同受審人は、目覚まし時計に頼り、同設定時刻によって昇橋すればよいと思い、報告することの申し送りの指示を徹底しなかった職務上の過失により、針路選定が不適切となり、武志島ソデガ鼻南方の暗岩に向首したまま進行して乗揚を招き、第八大王丸の船尾船底に凹損を生じさせ、推進器翼を曲損せしめるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
B指定海難関係人が、来島海峡航路の東口に差し掛かり、中水道に向け北上する際、船長に報告しなかったことは、本件発生の原因となる。
B指定海難関係人に対しては、勧告しない。

よって主文のとおり裁決する。






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