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海難審判庁裁決録(平成10年度)
事業名
海難審判庁裁決録の刊行配布
団体名
海難審判・船舶事故調査協会
1998年(平成10年)
号
平成10年横審第30号
件名
作業船第三十五興生丸乗揚事件〔簡易〕
事件区分
乗揚事件
言渡年月日
平成10年10月8日
審判庁区分
地方海難審判庁
横浜地方海難審判庁
(
猪俣貞稔
)
理事官
大本直宏
受審人
A 職名:第三十五興生丸船長 海技免状:五級海技士(航海)
指定海難関係人
損害
舵及び同取付部に損傷
原因
錨地の選定不適切(台風避泊)
主文
本伴乗揚は、台風を避泊するための錨地選定が適切でなかったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
適条
海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号
理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成8年9月22日16時20分
館山湾
2 船舶の要目
船種船名 作業船第三十五興生丸
総トン数 495.81トン
全長 51.74メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 882キロワット
3 事実の経過
第三十五興生丸は、船首部にジブクレーンを装備した、船尾船橋型の自航式起重機船で、A受審人ほか6人が乗り組み、神奈川県葉山港において、防波堤工事に従事していたところ、平成8年台風17号が本州南岸に接近する状況であったので、同年9月20日いったん同県三崎港に仮泊した後、台風を避泊するため、空倉のまま、船首1.5メートル船尾2.8メートルの喫水をもって、翌21日10時10分同行を発し、館山湾に向かい、12時30分ごろ館山港沖島灯台から028度(真方位、以下同じ。)1,500メートルの地点において、水深26メートルの底質砂泥の海底に右舷錨を投じ、錨鎖5節を延出して錨泊した。
ところで、台風17号は、21日03時発表の天気概況で、四国のはるか南方海上にあって、22日06時には八丈島の南西海上に至り、中心気圧960ヘクトパスカル、暴風域190キロメートルの大型で強い台風となって北東方に時速40キロメートルで進んでおり、房総半島にかなり接近する状況となった。
A受審人は、テレビの気象情報に台風の動向を確かめながら適宜昇橋して周囲の状況を観察していたところ、館山湾は台風進行方向の左半円に当たる状況で風力が最強となる風向が北ないし北西風となることが予想され、同湾で台風を避泊するには不適切な錨地であったが、2錨泊で凌(しの)げるものと思い、東京湾北部に錨地を移動するなど適切な錨地選定の措置をとらなかった。
A受審人は、22日11時30分ごろから次第に北風が強まり、風速毎秒20ないし30メートル(以下、風速は毎秒のものを示す。)に達したので、乗組員をスタンバイ配置に就けて台風接近に備えることにし、右舷錨に加えて左舷錨を投じ、両舷錨鎖を7節まで伸出して2錨泊として避泊中、13時ごろから瞬間風速40メートルに達するようになり、走錨し始めたことに気付いたので、機関を適宜使用して走錨を抑えようとしたが、荒れ狂う風波で船首錨作業が困難を極め、14時56分には最大瞬間風速44.5メートルを確認するなどどうすることもできないまま風下に圧流され、16時20分館山港沖島灯台から080度1,050メートルの地点において、船首がほぼ000度を向いたまま、船尾部が、水深5メートル以下の浅瀬に乗り揚げた。
当時、天候は雨で風速40メートルを超える北風が吹き、潮候は下げ潮の中央期であった。
乗揚の結果、舵及び同取付部に損傷を生じたがのち修理された。
(原因)
本件乗揚は、台風を避泊するに当たり、錨地の選定が不適切で、館山湾において錨泊中、最強時の風向が北ないし北西風になることが予想される際、東京湾北部に転錨するなどすることなく館山湾内に留まったことによって発生したものである。
(受審人の所為)
A受審人は、台風を避泊するに当たり、館山湾において錨泊中、最強時の風向が北ない北西風になることが予想される場合、同湾は北ない北西風に対して適切な錨地ではないから、早期に東京湾北部に転錨するなど適切な錨地を選定すべき注意義務があった。しかしながら、同人は、2錨泊で凌げるものと思い、館山湾に留まって錨泊を続け、風波が強まったときに対処できず、風下に圧流されて乗り揚げ、舵及び同取付部を損傷させるに至った。
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