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1998年(平成10年)

平成10年仙審第24号
    件名
漁船第十八徳洋丸乗揚事件

    事件区分
乗揚事件
    言渡年月日
平成10年10月14日

    審判庁区分
地方海難審判庁
仙台地方海難審判庁

供田仁男、安藤周ニ、今泉豊光
    理事官
上中拓治

    受審人
A 職名:第十八徳洋丸船長 海技免状:五級海技士(航海)(旧就業範囲)
    指定海難関係人

    損害
船底外板全般にわたる凹損、推進器翼に曲損、魚群探知機の送受波器を破損

    原因
船位確認不十分

    主文
本件乗揚は、船位の確認が十分でなかったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成9年8月21日04時40分
津軽海峡
2 船舶の要目
船種船名 漁船第十八徳洋丸
総トン数 138トン
全長 41.80メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 672キロワット
3 事実の経過
第十八徳洋丸は、いか一本釣り漁業に従事する鋼製漁船で、日本海と太平洋の漁場を適直移動し、青森港八戸港での水揚げののち、A受審人ほか5人が乗り組み、操業の目的で、船首2.7メートル船尾3.2メートルの喫水をもって、平成9年8月20日21時同港を発し、北海道襟裳岬西方沖合の漁場に向かった。
A受審人は、出港時から船体中央部に設けられた操舵室で単独の船橋当直に就き、間もなく僚船からの無線連絡で襟裳岬西方沖合の漁模様が芳しくないことを知り、漁場を日本海の大和堆に変更し、下北半島東岸沖合を北上して津軽海峡東口に至った。
A受審人は、津軽海峡内に北方へ突き出た大間埼の東岸に接近する針路を採ることによって、同海峡の強い東流を避けることができるので、いったん大間埼よりも南側に向首して同岸の手前で針路を北に転じ、その後距岸1海里のところを北上することとし、翌21日02時27分半尻屋埼灯台から000度(真方位、以下同じ。)2.0海里の地点に達したとき、針路を大間埼の1海里南東方の陸地に向く280度に定めて自動操舵とし、機関を全速力前進にかけて11.0ノットの対地速力で進行した。
A受審人は、船首方の陸地までの距離が2.1海里となるところを転針予定地点とし、時折レーダーにより船位を確かめていたものの、その間も常に漁模様が気にかかり、今のうちであれば襟裳岬西方沖合の漁場に引き返すことも容易であることから、大和堆で操業している僚船に漁模様を問い合わせてみることを思い立った。
そこで、04時18分A受審人は、大間埼灯台から112度5.1海里の地点に至り、船首方の陸地までの距離が4海里となったとき、操舵室後方に隣接して設けられた無線室に赴き、無線電話で僚船を呼び出して交信を始めた。
04時28分半A受審人は、大間埼灯台から119度3.3海里の転針予定地点に達したが、僚船から漁模様を聞くことに気をとられ、船位を十分に確認しなかったので、これに気付かず、転針の時機を失して同じ針路で続航した。
04時40分わずか前A受審人は、ようやく交信を終えて操舵室に戻ったとき、目の前に陸地が迫っているのを認め、急ぎ機関を停止した直後、第十八徳洋丸は、04時40分大間埼灯台から146度1.5海里の地点において、原針路、原速力のまま、大間埼の東岸に沿って拡延する岩礁に乗り揚げた。
当時、天候は晴で風はほとんどなく、潮候はほぼ高潮時にあたり、日出は04時53分であった。
乗揚の結果、船底外板全般にわたる凹損と推進器翼に曲損を生じたほか、魚群探知機の送受波器を破損したが、地元漁船の来援を得て離礁し、のちいずれも修理された。

(原因)
本件乗揚は、日出前の薄明時、津軽海峡東部において、大間埼の東岸に接近する針路を採って西行中、船位の確認が不十分で、転針の時機を失し、同岸に向首したまま進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
A受審人は、日出前の薄明時、津軽海峡東部において、強い東流を避けて大間埼の東岸に接近する針路を採って西行する場合、同岸の手前で針路を北に転じる予定であったから、転針の時機を失することのないよう、船位を十分に確認すべき注意義務があった。しかし、同人は、無線室で僚船から漁模様を聞くことに気をとられ、船位を十分に確認しなかった職務上の過失により、転針予定地点に達したことに気付かず、大間埼の東岸に向首したまま進行して同岸の岩礁に乗り揚げ、船底外板全般にわたる凹損と推進器翼の曲損のほか、魚群探知機の送受波器を破損させるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

よって主文のとおり裁決する。






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