日本財団 図書館




1998年(平成10年)

平成16年函審第46号
    件名
漁船第五十六清宝丸乗揚事件〔簡易〕

    事件区分
乗揚事件
    言渡年月日
平成10年10月8日

    審判庁区分
地方海難審判庁
函館地方海難審判庁

大石義朗
    理事官
副理事官 堀川康基

    受審人
A 職名:第五十六清宝丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
球状船首部を圧壊、右舷船首外板に凹損

    原因
居眠り運航防止措置不十分

    主文
本件乗揚は、居眠り運航の防止措置が十分でなかったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
適条
海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成9年10月14日14時20分
北海道恵山岬南岸
2 船舶の要目
船種船名 漁船第五十六清宝丸
総トン数 19.44トン
登録長 17.80メートル
機関の種類 ディーゼル機関
漁船法馬力数 190
3 事実の経過
第五十六清宝丸(以下「清宝丸」という。)は、いか一本釣り漁業に従事するFRP製漁船で、A受審人ほか1人が乗り組み、操業の目的をもって、船首0.8メートル船尾2.0メートルの喫水で、平成9年10月14日11時40分青森県大畑港を発し、北海道恵山岬北方沖合の漁場に向かった。
A受審人は、発航後、遠隔手動操舵により港内操船に当たり、港外に出てからはボンデンを替わしながら航行し、11時53分大畑港第1東防波堤灯台から346度(真方位、以下同じ。)1.4海里の地点において針路を004度に定め、機関を全速力にかけて9.0ノットの対地速力で、自動操舵により、海潮流による偏位を自動操舵のつまみにより修正しながら、GPSのプロッターに表示させた予定針路線に沿うようにして、単独で船橋当直に当たり、立った姿勢のまま進行した。
13時40分A受審人は、恵山岬灯台から177度6.8海里の地点に達したとき海潮流により東側に偏位することを見越して自動操舵のまま針路を恵山岬東端を少し右方に見る356度に転じ、その後、前日の大漁で自らもいかの整理作業にあたり、夜明けとともに大畑港までの航海当直、水揚げ、仕込みに続いて出航し、十分な休息をとることができなかったことから、疲れが出て眠気を催すようになり、そのまま単独で当直を続けていると居眠りに陥るおそれがあったが、まさか居眠りすることはあるまいと思い、休息中の甲板員を昇橋させて見張りに立て、2人当直として居眠り運航を防止する措置をとることなく、船橋後部の一段高くなった床に腰をおろしていたところ、いつしか居眠りに陥った。
14時07分清宝丸は、恵山岬の南岸まで2海里ばかりとなり、その後同岬に向首したまま進行したが、船橋当直者の居眠りにより転針できずに続航中、14時20分恵山岬灯台から182度1海里の恵山岬南岸岩礁に原針路、同速力のまま乗り揚げた。
当時、天候は曇りで風力2の北北西風が吹き、潮候は高潮時であった。
乗揚の結果、球状船首部を圧壊し、右舷船首外板に凹損を生じたが、のち修理された。

(原因)
本件乗揚は、北海道恵山岬南方沖合において、漁場に向けて航行中、居眠り運航の防止措置が不十分で、恵山岬南岸に向けて進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
A受審人は、1人で船橋当直に就いて漁場に向けて恵山岬南方沖合を航行中、前日の操業に伴う疲れが出て眠気を催した場合、そのまま単独で当直を続けていると居眠りに陥るおそれがあったから、居眠り運航とならないよう、休息中の甲板員を昇橋させて見張りに当たらせ、2人当直として居眠り運航を防止する措置をとるべき注意義務があった。しかし、同人は、まさか居眠りすることはあるまいと思い、居眠り運航を防止する措置をとらなかった職務上の過失により、床に腰をおろしているうちに居眠りに陥り、恵山岬南岸に向首したまま進行して乗揚を招き、球状船首部を圧壊し、右舷船首外板に凹損を生じさせるに至った。






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION