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海難審判庁裁決録(平成10年度)

 事業名 海難審判庁裁決録の刊行配布
 団体名 海難審判・船舶事故調査協会  




1998年(平成10年)

平成10年門審第41号
    件名
漁船朝日丸乗揚事件

    事件区分
乗揚事件
    言渡年月日
平成10年12月10日

    審判庁区分
地方海難審判庁
門司地方海難審判庁

畑中美秀、西山烝一、岩渕三穂
    理事官
平良玄栄

    受審人
A 職名:朝日丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
船首船底外板に破口

    原因
居眠り運航防止措置不十分

    主文
本件乗揚は、居眠り運航の防止措置が十分でなかったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成9年7月24日21時40分
山口県女鹿島北西岸
2 船舶の要目
船種船名 漁船朝日丸
総トン数 19.99トン
登録長 17.12メートル
機関の種類 ディーゼル機関
漁船法馬力数 140
3 事実の経過
朝日丸は、しいら潰漁業に従事するFRP製漁船で、A受審人ほか2人が乗り組み、船首1.0メートル船尾2.8メートルの喫水をもって平成9年7月24日04時50分山口県萩漁港を発し、見島北西沖合の漁場に向かった。
A受審人は、08時00分見島北西6海里沖合の漁場に到達したのち、操業を繰り返してひらまさ及びしいら1,400キログラムの漁獲を得たので、18時40分奈古(なご)漁港への帰港の途についた。
ところで、A受審人は、同月22日03時00分ごろ奈古漁港から出漁したのち、2日間の操業を予定したが、23日18時10分漁業無線で台風9号が南方海上から接近していることを知り、25日以降の操業が危ぶまれたので、24日の休漁日を先送りして3日間の連続操業をすることとし、23日の夕刻は奈古漁港へ帰港することも萩漁港へ水揚げのために寄港することもせず、そのまま操業を続け、24日02時50分萩漁港に入港して水湯げをしたものの、一切休息をとることなく04時50分には前示のとおり出港し、漁場へ向かう航行中も2人の乗組員を休ませて1人で航海当直にあたり、24日の夕刻やっと帰港の運びとなったが、帰港の途についたときは疲労困憊(ぱい)に達していた。
こうしてA受審人は、2人を船員室で休ませ、1人で操舵操船にあたり、18時47分見島北灯台から237度(真方位、以下同じ。)6.4海里の地点に達したとき、針路を124度に定め、機関を全速力前進にかけ、9.0ノットの対地速力で自動操舵とし、見張りにあたって進行し、途中、いか釣り船が出漁していたので、これらを適宜避けながら航行しているうち、21時24分大島を右舷正横に見て航過したとき、それまで出漁していた漁船がいなくなったためか、緊張がほぐれて操舵室後部の板張りに腰掛けたところ、蓄積した疲労のために急に眠気を覚えたが、港まであと僅(わず)かな地点に達していたので、1人で最後まで見張りを続けることができると思い、休息中の甲板員を起こして見張りの補助につかせるなど、居眠り運航の防止措置をとらずに続航中、いつしか居眠りに陥り、21時40分朝日丸は原針路、原速力のまま、奈古港防波堤灯台から237度770メートルの女鹿島北西岸から張り出た岩礁に乗り揚げた。
当時、天候は晴で風力2の南風が吹き、潮候は上げ潮の初期であった。
乗揚の結果、船首船底外板に破口を生じたが、自力で離礁して奈占漁港まで航行し、のち修理された。

(原因)
本件乗揚は、夜間、山口県見島沖合の漁場から奈占漁港に帰港中、居眠り運航の防止措置が不十分で、奈古漁港沖合の女鹿島北西岸から張り出た岩礁に向首して進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
A受審人は、連続操業ののち、疲労困憊の状態で1人で夜間の航海当直に従事中、急に眠気を覚えた場合、休息中の甲板員を見張りの補助につかせるなど、居眠り運航の防止措置をとるべき注意義務があった。しかしながら、同受審人は、1人で入港まで見張りを続けることができると思い、甲板員を見張りの補助につかせず、居眠り運航の防止措置をとらなかった職務上の過失により、居眠りに陥り、女鹿島北西岸から張り出た岩礁に向首したまま進行して乗揚を招き、船首船底外板に破口を生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

よって主文のとおり裁決する。






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