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海難審判庁裁決録(平成10年度)

 事業名 海難審判庁裁決録の刊行配布
 団体名 海難審判・船舶事故調査協会  




1998年(平成10年)

平成10年門審第13号
    件名
油送船第拾山陽丸乗揚事件

    事件区分
乗揚事件
    言渡年月日
平成10年12月3日

    審判庁区分
地方海難審判庁
門司地方海難審判庁

伊藤實、西山烝一、岩渕三穂
    理事官
根岸秀幸

    受審人
    指定海難関係人

    損害
船底外板に凹損を伴う擦過傷

    原因
居眠り運航防止措置不十分

    主文
本件乗揚は、居眠り運航の防止措置が十分でなかったことによって発生したものである。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成9年3月15日02時00分
瀬戸内海安芸灘二窓島
2 船舶の要目
船種船名 油送船第拾山陽丸
総トン数 99.37トン
全長 31.34メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 294キロワット
3 事実の経過
第拾山陽丸(以下「山陽丸」という。)は、船尾船橋型の鋼製油送船で、船長A(五級海技師(航海)免状を受有し、受審人に指定されていたところ、平成10年1月13日死亡した。)ほか2人が乗り組み、重油160キロリットルを積載し、船首1.8メートル船尾3.2メートルの喫水をもって、平成9年3月14日15時55分山口県宇部港を発し、広島県豊田郡東野町契島の東邦亜鉛桟橋に向かった。
A船長は、船橋当直を同人及び甲板長の2人による単独当直制とし、当直時間を固定せずに行き先の航路状況によって決め、視界不良のとき、狭い水道及び船舶往来の多い海域では自らが操船に当たり、甲板長には視界の良いとき、広い海域で当直を行わせていた。
A船長は、20時ごろ平郡水道を通貨後船橋当直に就き、翌15日00時30分クダコ島灯台から030度(真方位、以下同じ。)1.6海里の地点に達したとき、針路を豊島と上蒲刈島間の水道に向く040度に定め、機関を全速力前進にかけ、折りからの潮流で約2度右方に圧流されながら8.5ノットの対地速力で、自動操舵により進行した。
ところで、豊島と上蒲刈島間の水道は、可航幅が約250メートルの狭い水道で、その南口には尾久比島、重子岩、二窓島、大子島及び鴨瀬などの小島や岩礁があり、また、周囲には険礁も多いので、その通航には慎重な操船を要するところであった。
定針後A船長は、船橋の右舷側揃部の窓際で背もたれのある椅子(いす)に座り、前窓の下に肘(ひじ)を掛けて頬杖(ほおづえ)をつきながら前方の見張りを行い、00時49分小館場島を左舷正横1海里に航過したころ、これまで夜間も含めて1箇月に1度の割合で通航して慣れていた航路で、行き会う船舶もなかったことから気が緩み、軽い眠気を感じたものの、お茶を飲んだりして眠気を払うことなく航行し、01時24分安芸灘北航路灯浮標の灯火を右舷正横に見る、安居島灯台から306度1.8海里の地点を航過したころ、眠気を催したが、居眠りすることはあるまいと思い、依然、椅子から立ち上がったり、外気に触れて眠気を払拭するなど、居眠り運航の防止措置をとらずに続航し、船位を鴨瀬灯台が見えてからレーダーで確認するつもりでいたので、潮流により東方に圧流されて二窓島に向かって進行していることに気付かず、椅子に座ったままでいるうち、いつしか居眠りに陥った。
01時59分A船長は、ふと目が覚めて前方を見たとき、右舷正横付近に灯台のぼんやりした明かりが見え、レーダーを作動させたところ、二窓島が船首間付近に映り、距離が近いので慌てて手動操舵に切り替えて左舵一杯にとったが効かなく、山陽丸は、02時00分鴨瀬灯台から324度950メートルの二窓島の陸岸に、原針路、原速力のまま乗り揚げた。
当時、天候は霧雨で風力1の西南西風が吹き、潮候は上げ潮の末期で、付近に北東に向かう0,5ノットの潮流があった。
乗揚の結果、山陽丸は、船底外板に凹損を伴う擦過傷を生じたが、浸水はなく、サルベージ船の来援を待って離礁し、のち修理された。

(原因)
本件乗揚は、夜間、安芸灘を上蒲刈島と豊島との間の水道に向け北上中、居眠り運航の防止措置が不十分で、同水道南口の二窓島に向かったまま進行したことによって発生したものである。

よって主文のとおり裁決する。






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