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海難審判庁裁決録(平成10年度)

 事業名 海難審判庁裁決録の刊行配布
 団体名 海難審判・船舶事故調査協会  




1998年(平成10年)

平成10年広審第2号
    件名
旅客船スーパーマリン乗揚事件

    事件区分
乗揚事件
    言渡年月日
平成10年12月15日

    審判庁区分
地方海難審判庁
広島地方海難審判庁

釜谷奨一、上野延之、織戸孝治
    理事官
向山裕則

    受審人
A 職名:スーパーマリン船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
両推進器翼に曲損

    原因
操船不適切(圧流に対する配慮)

    主文
本件乗揚は、風下側への圧流に対する配慮が不十分であったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成9年7月21日10時00分
島根県唐鐘漁港沖合
2 船舶の要目
船種船名 旅客船スーパーマリン
総トン数 19トン
全長 17.40メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 470キロワット
3 事実の経過
スーパーマリンは、浜田港を基地とし、同港境界線上に位置する馬島灯台から、その北東方約4.5海里のところにある石見海浜公園沖合にかけて点在する海岸景勝地の遊覧観光に従事する2軸2舵を装備したFRP製旅客船で、A受審人ほか1人が乗り組み、乗客4人を乗せ、船首尾とも1.4メートルの等喫水をもって、平成9年7月21日09時30分浜田港を発し、遊覧観光の途に就いた。
同船の遊覧観光は往航が約40分、復航が約20分の1日に4回定期就航するもので、往航は予定した海岸景勝地近くの沖合に順次寄せ、案内係の観光案内に伴い、適宜、速力を調整し、同案内力終わると、次の景勝地に向けて全速力前進として航行するもので、同遊覧の経路には唐鐘漁港の北方にある狗島、猫島沖合を経由して同漁港の北右の石見畳ヶ浦沖合にかけての遊覧が含まれており、その後は北東進して石見海浜公園沖合に達し、ここで浜田港に向げ帰途に就くものであった
ところで唐鐘漁港は、馬島灯台から北東方に約3海里の地点で、海岸線が南東方に入り込んだ入り江の北側付近に位置し、同漁港の出入口に唐鐘港南防波堤灯台(以下「南防波堤灯台」という。)が設置されており、同灯台の北右には水深約1.2メートルの底質が岩の浅所が存在していたため、南防波堤灯台の北北東方約200メートルのところにある狗島、猫島の西方沖合を経て同灯台の」北北西方約700メートルの石見畳ヶ浦沖合に向け、低速力で北西進して遊覧観光をするにあたっては、この浅所に接近しすぎることのないよう、南西方からの風浪下には風下側への圧流に十分配慮して航行することが必要な海域であった。
A受審人は、同年3月株式会社Aに入社後船長として同船に乗り組み、島根県水産試験場が漁礁等の位置を測定した水深図等により、前示浅所の位置を把握していた。
09時55分A受審人は、南防波堤灯台から254度(真方位、以下同じ。)1,400メートルの地点に達したとき、針路をほぼ狗島、猫島に向首する067度に定めて操舵を手動とし、機関を15.0ノットの全速力前進として進行した。
A受審人は、乗船客が少なかったことから観光の案内係を乗船させていなかったので、案内用のテープを放送して案内を行うこととし狗島、猫島付近の沖合に至ったのちは、針路を石見畳:ヶ浦沖合に転じ、機関を低速力としながら遊覧航行をするつもりで続航した。
09時58分A受審人は、南防波堤灯台から329度220メートルの地点に達したとき、針路を石貝畳ヶ浦沖合に向首する325度に定めて機関を適宜使用しながら約1.5ノットの微速力前進としたが、折からの南西風によって東方に圧流されて015度の進路となったものの、その後遊覧案内放送の内容に合わせて航行することにのみ気を奪われ、風下側への圧流に十分配慮することなく進行し、前示浅所の存在を忘れてこれに向首して続航し、このことに気付かなかった。
10時00分A受審人は、突然船底部に衝撃を受け、スーパーマリンは南防波堤灯台から337度290メートルの浅所に原速力、原針路のまま乗り揚げた。
当時、天候は晴で風力3の南西風が吹き、潮候は上げ潮の中央期であった。
乗揚の結果、両推進器翼に曲損を生じたが、のち修理された。

(原因)
本件乗揚は、唐鐘漁港沖合の浅所が存在する海域を南西風の卓越する状況の下、低速力で遊覧観光する際、風下側への圧流に対する配慮が不十分で、同漁港め北方の浅所に向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
A受審人は、唐鐘漁港北方沖合の浅所が存在する海域を南西風の卓越する状況の下、低速力で遊覧観光する場合、風下側への圧流に対する配慮を十分に行うべき注意義務があった。しかるに同人は、遊覧案内放送の内容に合わせて航行することにのみ気を奪われ、風下側への圧流に対する配慮を十分に行わなかった職務上の過失により、前示浅所に向首進行して乗揚を招き、スーパーマリンの両舷推進器翼を曲損せしめるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

よって主文のとおり裁決する。






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