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海難審判庁裁決録(平成10年度)

 事業名 海難審判庁裁決録の刊行配布
 団体名 海難審判・船舶事故調査協会  




1998年(平成10年)

平成10年門審第85号
    件名
漁船伊勢丸乗揚事件

    事件区分
乗揚事件
    言渡年月日
平成10年12月18日

    審判庁区分
地方海難審判庁
門司地方海難審判庁

伊藤 實、清水正男、岩渕三穂
    理事官
平良玄栄

    受審人
A 職名:伊勢丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
船底外板全般に破口を生じて浸水、全損

    原因
船位確認不十分

    主文
本件乗揚は、船位の確認が十分でなかったことによって発生したものである。
受審人Aの一級小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成9年11月6日04時10分
宮崎県東臼杵郡北浦町北浦港
2 船舶の要目
船種船名 漁船伊勢丸
総トン数 9.7トン
全長 16.10メートル
機関の種類 ディーゼル機関
漁船法馬力数 120
3 事実の経過
伊勢丸は、深海えび曳(びき)網漁業に従事するFRP製漁船で、A受審人が息子の甲板員と乗り組み、操業の目的で、船首0.6メートル船尾1.3メートルの喫水をもって、平成9年11月6日04時02分宮崎県東臼杵郡北浦町北浦漁港市振区を発し、同漁港東南東方沖合の日向灘の漁場に向かった。
ところで、北浦漁港は、北方に湾入した北浦港港域内の東岸に市振区と宮野浦区に分かれて位置し、両区の前面には養殖筏(いかだ)が多数設置されており、北浦港の港口東側近くに高島とその西側に耳ホゲがあってこれらの周囲には岩礁帯が散在し、この岩礁帯の北側に同港口東端の鳥帽子礁を含む池の岩礁帯があり、これら2つの岩礁帯の間に、漁船がよく利用する、北西から南東に延びて途中で北東方に屈曲した、可航幅約150メートル長さ約700メートルの狭い水道(以下「高島北側水道」という。)があった。また、北浦港の南方沖合には島浦島が位置し、同港に出入する大型船は同島と高島間の水深の深い南側の水道を航行し、一方、島浦島から同島の北西方で同港口西側の牛居鼻に至る間に博奕礁及び投石礁などが散在し、これらの間にも水道が開けていた。
出航後、A受審人は、北浦港市振防波堤を替わした後、養殖筏4区北側の黄色点滅式標識灯を右舷方近くに見て航過し、04時08分養殖筏5区南側の黄色点滅式標識灯を左舷正横50メートルに見る、北浦港宮野浦防波堤灯台(以下「防波堤灯台」という。)から162度(真方位、以下同じ。)580メートルの地点で、針路を110度に定め、機関を半速力前進にかけ、11.0ノットの対地速力で、手動操舵により進行した。
A受審人は、当初、高島北側水道を航行するに当たり、養殖筏5区南側の黄色点滅式標識灯を航過したのち、110度の針路で距離約700メートルを航行して高島北方の予定転針地点に達し、次いで針路を080度に転じて距離約350メートルを航行し、同水道を通過する計画としていた。
こうして、A受審人は、04時09分防波堤灯台から143度830メートルの地点に達し、まだ高島北方の予定転針地点まで350メートルの距離があったところ、当時日出前で高島の島陰が全く見えず、レーダーが故障して使用できなかったが、これまで夜間も含めて毎日のように同水道を通航していたので、船位を確かめなくても大丈夫と思い、周囲の灯台の方位を測定するなどして自船の位置を十分に確認することなく、予定転針地点に到達したものと思い誤り、針路を同水道の出口に向けるつもりで078度に転じた。
A受審人は、予定転針地点の手前で転針し、鳥帽子礁西方の岩礁に向かって進行していることに気付かず続航中、突然船首に衝撃を受け、04時10分防波堤灯台から127度1,000メートルの岩礁に、伊勢丸は、原針路、原速力のまま乗り揚げた。
当時、天侯は晴で風1の西北西風が吹き、潮候は上げ潮の初期であった。
乗揚の結果、船底外板全般に破口を生じで浸水し、夜明けを待って僚船が引き下ろしに掛かったが、船体中央部付近で船首部と船尾部に分断して全損となり、のち起重機船により船骸(がい)が撤去された。

(原因)
本件乗揚は、夜間、宮崎県東臼杵郡北浦町北浦漁港を出航して日向灘の漁場に向け、高島北側水道を航行中、船位の確認が不十分で、予定転針地点の手前で転針し、鳥帽子礁西方の岩礁に向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
A受審人は、夜間、北浦漁港を出航して日向灘の漁場に向け、高島北側水道を航行する場合、同水道は可航幅が狭く周囲に険礁が散在するから、これらの険礁に乗り揚げることのないよう、周囲の灯台の方位を測定するなどして船位を十分に確認すべき注意義務があった。しかるに、同人は、これまで毎日のように同水道を通航していたから船位を確認しなくても大丈夫と思い、灯台の方位を測定するなどして船位を十分に確認しなかった職務上の過失により、予定転針地点に到達したものと思い誤り、予定転針地点の手前で針路を転じ、、鳥帽子礁西方の岩礁に向首進行して乗揚を招き、船底外板全般に破口浸水を生じさせ、引き下ろしの際に船体が分断して全損させるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第2号を適用して同人の一級小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。

よって主文のとおり裁決する。






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