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1998年(平成10年)

平成10年那審第15号
    件名
漁船彰英丸乗揚事件

    事件区分
乗揚事件
    言渡年月日
平成10年9月17日

    審判庁区分
地方海難審判庁
門司地方海難審判庁那覇支部

東晴二、井上卓、小金沢重充
    理事官
阿部能正

    受審人
A 職名:彰英丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
水船状態となり、のち廃船

    原因
船位確認不十分

    主文
本件乗揚は、船位の確認が十分でなかったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成10年2月4日01時50分
沖縄県尖閣諸島魚釣島
2 船舶の要目
船種船名 漁船彰英丸
総トン数 18.62トン
全長 17.60メートル
機関の種類 ディーゼル機関
漁船法馬力数 130
3 事実の経過
彰英丸は、潜水器漁業に従事するFRP製漁船で、A受審人ほか5人が乗り組み、船首0.4メートル船尾1.5メートルの喫水をもって、平成10年2月1日19時00分沖縄県那覇港を出港し、同県尖閣諸島黄尾嶼(こうびしょう)において一晩操業したのち同諸島魚釣島に移動し、同月3日19時ごろ同島南側海岸付近における操業を開始した。
ところで、このときの操業は、日没から日出までの間ぶだいを捕る目的で海岸に近い水深20ないし30メートルの水域でA受審人も含む乗組員が適宜交替しながら4人一緒に潜水し、潜水を一晩に5回ほど繰り返すというもので、A受審人は、潜水時間を約1時間、漁獲の整理を兼ねた休息時間を約30分とし、潜水中は船を潜水者の明かりから離れないように待機させ、休息中は海岸から少し離れて水深約40メートルのところで漂泊するようにしていた。また魚釣島南側水域は海岸から離れるに従って次第に深くなる地形となっていて水深によって海岸に近づく状況かどうかを判断することが可能であった。
翌4日01時40分A受審人は、付近海岸には明かりがなく、かつ雨のため視界が制限されて目視では海岸までの距離が分からない状況の下、魚釣島363メートル頂(以下「島頂」という。)から108度(真方位、以下同じ。)1,250メートルの地点における4回目の潜水を終了し、漁獲がぶだい900キログラムとなったとき、潜水者を収容のうえいつものように操船に当たって少し沖出しし、同時43分水深が40メートルとなったことを船首部に備えた魚群探知機により確かめ、機関を中立運転とし、海岸線から約300メートル離れた島頂から113度1,300メートルの地点で、次回の潜水に備え、約30分の予定で漂泊を開始した。
A受審人は、乗組員に漁獲の整理を行わせ、次回は自分も潜水することとしていたので、操舵室右舷側の通路で空気タンク装着等の潜水準備を始め、このとき海岸が近く、しかしながら目視では海岸までの距離が分からない状況のところ、潜水準備を行う短時間のうちに海岸に寄せられることはないと思い、魚群探知機あるいは作動中のレーダーを継続監視することによる船位の確認を行うことなく準備中、海潮流の影響により急速に海岸に寄せられていたが、そのことに気付かず、01時50分わずか前船首部の魚群探知機を見て水深が急に浅くなっている表示に驚き、遠隔操縦装置により沖出ししようとしたが、間に合わず、01時50分島頂から105度1,200メートルの地点において、彰英丸は、西方に向き、海岸線から約100メートルの浅礁に乗り揚げた。
当時、天候は雨で、風力6の北北東風が吹いていたが、乗揚地点では風はほとんどなく、潮候は下げ潮の初期であった。
A受審人は、沖合からの波により更に海岸側に寄せられる状況で、自力離礁できないと判断し、錨を使用するなどの船固めを行うとともに、所属漁業協同組合及び付近海域の巡視船に連絡するなどの措置に当たった。
乗揚の結果、彰英丸は、波により浅礁上を海岸側に運ばれるうち船体各所が破壊されるとともに水船状態となり、のち回収されたが、廃船とされた。乗組員は、海岸に逃れ、巡視船により救助された。

(原因)
本件乗揚は、夜間、沖縄県尖閣諸島魚釣島南側水域において、海岸になんら目標となる明かりがなく、かつ雨のため視界が制限され、目視では海岸線までの距離が分からない状況の下、海岸に近い地点で水深を目安にして漂泊中、魚群探知機あるいはレーダーを継続監視することによる船位の確認が不十分で、海岸に著しく接近したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
A受審人は、夜間、沖縄県尖閣諸島魚釣島南側の海岸近くに漂泊した場合、海岸になんら目標となる明かりがなく、かつ雨のため視界が制限され、目視では海岸線までの距離が分からない状況であったから、海岸に接近しているかどうか判断できるよう、魚群探知機あるいはレーダーを継続監視して船位を確認すべき注意義務があった。しかるに、同人は、短時間のうちに寄せられることはないと思い、船位を確認しなかった職務上の過失により、海岸に著しく接近して浅礁への乗揚を招き、全損に至らしめた。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

よって主文のとおり裁決する。






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