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海難審判庁裁決録(平成10年度)

 事業名 海難審判庁裁決録の刊行配布
 団体名 海難審判・船舶事故調査協会  




1998年(平成10年)

平成10年那審第7号
    件名
旅客船第八十八あんえい号乗揚事件

    事件区分
乗揚事件
    言渡年月日
平成10年7月7日

    審判庁区分
地方海難審判庁
門司地方海難審判庁那覇支部

東晴二、井上卓、小金沢重充
    理事官
阿部能正

    受審人
A 職名:第八十八あんえい号船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
舵、プロペラ、プロペラ軸などを損傷

    原因
船位確認不十分

    主文
本件乗揚は、船位の確認が十分でなかったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成9年9月15日15時10分
沖縄県竹富島南水路
2 船舶の要目
船種船名 旅客船第八十八あんえい号
総トン数 19トン
全長 18.40メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 956キロワット
3 事実の経過
第八十八あんえい号(以下「あんえい号」という。)は、機関2基2軸を備えた軽合金製旅客船で、船舶所有者からあんえい号を借り受けた有限会社Aにより沖縄県石垣港と付近離島との間で定時運航されていたところ、平成9年9月15日朝から石垣港と竹富町黒島間の定時運航に従事し、同日4回目の往航として、A受審人ほか1人が乗り組み、旅客3人を乗せ、船首0.30メートル船尾1.40メートルの喫水をもって、15時00分石垣港を発し、黒島に向かった。
ところで、石垣港から黒島に至る間は浅所の多いさんご礁地帯となっていて、途中竹富島南水路を航行することとなるが、竹富島南東側には、竹富島東方立標(以下「東方立標」という。)、1対の竹富島南水路第1号立標(以下、竹富島南水路の立標の名称については「竹富島南水路」を省略する。)と第2号立標、第4号立標及び1対の第5号立標と第6号立標が設置され、これら航路標識はほぼ1直線上に位置し、両側からさんご礁が迫った第4号立標北東側の可航幅約80メートル、長さ約300メートルの狭い水域を通航する際には、東方立標と第1号、第2号両立標の間とを見通すとか、第4号立標の少し南側と第5号、第6号両立標の間とを見通すなどし、船位が同水域の一方に偏することとならないかを確認しながら進行する必要があった。なお、海面状態によっては同水域両側の浅所を目視しながら、これに近づかないようにして通航することも可能であった。
そして、A受審人は、船長として石垣港、黒島間の航路航行の豊富な経験を有し、これら竹富島南水路の状況については十分承知していた。
A受審人は、発航時から操船に当たり、15時05分石垣港防波堤入口で、東方立標に向け、機関を全速力前進に掛け、27.0ノットの対地速力で、やや強い北寄りの風波を右方から受けながら進行し、15時08分少し過ぎ東方立標を右方60メートルで通過し、更に同時09分わずか前第1号立標を右方30メートルで通過したとき、針路を第4号立標に向首する239度(真方位、以下同じ。)としたが、同立標を正船首わずか右方に見るようになったことから風波による左方への圧流を感じ、同時09分少し過ぎ針路を再び同立標に向首する242度とした。
その後A受審人は、コンパスによらず、第4号立標に向首しながら操舵に当たり、針路がわずかずつ右に変わる状態で左方に圧流されているものの、それほどと思わず、前示航路標識の見通しによるなどの船位の確認を行わず、左方のさんご礁の浅所に著しく接近する状況となっていたが、そのことに気付かないまま続航中、15時10分第4号立標から066度350メートルの地点において、あんえい号は、246度に向いてさんご礁の浅所に乗り揚げ、擦過した。
当時、天候は曇で風力5の北北西風が吹き、潮候は上げ潮の中央期であった。
A受審人は、乗揚の衝撃を感じて機関を止め、有限会社Aに連絡のうえ、使用可能であった左舷機により第1号立標南側に戻り、来援した僚船に旅客を移乗させ、石垣港に帰った。
乗揚の結果、舵、プロペラ、プロペラ軸などを損傷し、のち修理された。

(原因)
本件乗揚は、石垣港から竹富島南水路経由で竹富町黒島に向かって西行中、やや強い北寄りの風波を受けながら第4号立標北東側の可航幅の狭い水域に進入する際、航路標識を見通すなどの船位の確認が不十分で、同水域南東側のさんご礁の浅所に著しく接近する状況のまま進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
A受審人は、石垣港から竹富島南水路経由で竹富町黒島に向かって西行中、やや強い北寄りの風波を右方から受けながら第4号立標北東側の可航幅の狭い水域を通航しようとする場合、安全に通航できるよう、航路標識を見通すなどして船位を確認すべき注意義務があった。しかるに、同人は、左方に圧流されているものの、それほどと思わず、船位を確認しなかった職務上の過失により、左方のさんご礁の浅所に著しく接近して乗揚を招き、舵、プロペラ、プロペラ軸などに損傷を生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

よって主文のとおり裁決する。






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