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海難審判庁裁決録(平成10年度)

 事業名 海難審判庁裁決録の刊行配布
 団体名 海難審判・船舶事故調査協会  




1998年(平成10年)

平成10年函審第17号
    件名
貨物船第拾八富栄丸乗揚事件〔簡易〕

    事件区分
乗揚事件
    言渡年月日
平成10年7月23日

    審判庁区分
地方海難審判庁
函館地方海難審判庁

米田裕
    理事官
副理事官 堀川康基

    受審人
A 職名:第拾八富栄丸船長 海技免状:四級海技士(航海)
    指定海難関係人

    損害
船尾船底外板に凹損、プロペラ翼に曲損及び舵頭材に損傷

    原因
水路調査不十分

    主文
本件乗揚は、水路調査が十分でなかったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
適条
海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成7年2月24日17時08分
北海道奥尻島青苗港
2 船舶の要目
船種船名 貨物船第拾八富栄丸
総トン数 465トン
全長 65.52メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 735キロワット
3 事実の経過
第拾八富栄丸は、鋼製の砂利石材運搬船で、A受審人ほか5人が乗り組み、砕石約1,300トンを積載し、船首3.4メートル船尾4.5メートルの喫水をもって、平成7年2月24日02時50分青森県尻屋岬港を発し、北海道奥尻島の青苗港に向かった。
ところで、青苗港は、奥尻島の南端東側に位置し、南防波堤が、同港の南端部から北東方に約570メートル延び、同防波堤とその先端近くの北西方沖に築造された東防波堤との間約70メートルが同港の入口となっていた。
また、北防波堤が、同港北端部の船揚場南東端から南防波堤とほぼ平行に約180メートル延び、そこから更にくの字型に折れ曲がって南南東方向に約220メートル延び、その先端部は南防波堤沖約60メートルにまで達していた。
港内は、南端部に船溜(だま)りがあり、その北側の護岸部分から347度(真方位、以下同じ。)方向に延びる岸壁の南寄り110メートル区間をマイナス4.0メートル岸壁と呼称し、同港の修築に当たってきた函館開発建設部では、喫水4メートルの船舶の利用に供し得るよう、同岸壁に離着岸する際の操船海域について浚渫(しゅんせつ)を実施し、平成6年12月の同部江差港湾建設事務所の測定では、同岸壁の南端から128度18メートル及び093度32メートルのところにそれぞれ3.9メートル及び4.0メートル並びに同南端から72メートル北側寄りの岸壁の際近くに3.7メートルの水深の箇所がある以外は4.3メートルを超える水深が確保されていることが確認されている。一方、海図第32号(昭和64年1月刊行、平成6年6月補刷)の分図青苗港の水深記載には、同岸壁の手前170メ-トルから岸壁付近にかけての操船海域に3.5から3.6メートルの箇所が随所にあり、浚渫前の状態のままとなっていた。
A受審人は、発航前々日の22日尻屋岬港において青苗港へ運搬する砕石を積載した際、最大喫水を入港予定時刻の最小水深以下に抑えるよう調整して置かなければならなかったが、接岸予定のマイナス4.0メートル岸壁については、喫水が4.5メートルでなら大丈夫と聞いていたので、それを超えなければよいものと思い、自ら操船海域の水深について海図を見るなり、関係箇所に問い合わせて確かめるなど水路調査を十分に行うことなく、喫水調整をしないまま前示により砕石をほぼ満載状態に積載して尻屋岬港を発航したものであった。
同24日16時59分A受審人は、青苗港入口の南及び東両防波堤間のほぼ中央にあたる青苗港北防波堤灯台(以下「北防波提灯台」という。)から044度350メートルの地点を通過したとき、針路を南防波提に沿う226度に定めて2.0ノットの対地速力とし、一等航海士と甲板員1人を船首配置及び機関長と機関士1人を船尾配置に就け、自らが船橋で操舵操船に当たって進行した。
17時05分A受審人は、北防波堤灯台を右舷側30メートルに見て通過したとき、マイナス4.0メートル岸壁に入船状態で接岸するため、右舷錨を投下するとともに右舵をとって右回頭を行いながら同岸壁に接近して船首係船索をとったのち、舵と機関を適宜使用して船体を岸壁と平行となるよう右回頭しながら同岸壁に接近し、同時08分少し前船尾が岸壁まで30メートルばかりに近付き、船尾係船索もとって機関を後進にかけて後退したところ、突然船尾船底部に衝撃を感じ、17時08分北防波堤灯台から223度140メートルの同岸壁南端東南東方近くの浅所に332度を向首して乗り揚げた。
当時、天候は曇で風力3の西風が吹き、潮候は高潮時で潮高は17センチメートルであった。
乗揚の結果、船尾船底外板に凹損、プロペラ翼に曲損及び舵頭材に損傷を生じたが、そのまま自力で離礁して接岸予定の岸壁に接岸し、荷揚げ後引船に曳(えい)航されて函館港に回航され、同地で修理された。

(原因)
本件乗揚は、北海道奥尻島の青苗港に入港するにあたり、水路調査が不十分で、港内の操船海域の最小水深に合わせて喫水を調整しなかったことによって発生したものである。

(受審人の所為)
A受審人は、北海道奥尻島青苗港に砕石を積載して入港しようとする場合、港内の操沿海域の最小水深に合わせて喫水を調整するため、港内の操船海域の水深について海図を見たり、関係箇所に問い合わせるなどして水路状況を十分に調査すべき注意義務があった。しかし、同人は、接岸予定のマイナス4.1メートル岸壁については、喫水が4.5メートル位までなら大丈夫と聞いていたので、それを超えなければよいものと思い、水路調査を十分に行わなかった職務上の過失により、最小水深を超える喫水で入港して同岸壁南端東南東方近くの浅所に乗り揚げを招き、船尾船底外板に凹損、プロペラ翼に曲損及び舵頭材に損傷を生じさせるに至った。






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