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海難審判庁裁決録(平成10年度)

 事業名 海難審判庁裁決録の刊行配布
 団体名 海難審判・船舶事故調査協会  




1998年(平成10年)

平成9年門審第97号
    件名
貨物船明山丸乗揚事件

    事件区分
乗揚事件
    言渡年月日
平成10年3月27日

    審判庁区分
地方海難審判庁
門司地方海難審判庁

酒井直樹、杉?忠志、川本豊
    理事官
猪俣貞稔

    受審人
A 職名::明山丸船長 海技免状:三級海技士(航海)
    指定海難関係人

    損害
船首材下部、船底外板全面、両舷ビルジキール及び舵板に凹損

    原因
針路選定不適切

    主文
本件乗揚は、水路入航針路を示す指向灯併設灯台の活用が十分でなかったことによ
って発生したものである。
受審人Aを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成9年5月27日07時45分
沖縄県久米島兼城(かねぐすく)港
2 船舶の要目
船種船名 貨物船明山丸
総トン数 696.51トン
全長 65.35メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 956キロワット
3 事実の経過
明山丸は、主として沖縄県名護布安和(あわ)から沖縄県内の各港にセメントを輸送している船尾船橋型のセメント運搬船で、A受審人ほか6人が乗り組み、セメント1,140トンを載せ、船首352メートル船尾4.42メートルの喫水をもって、平成9年5月26日15時45分名護市安和沖合のセメント積出しドルフィンを離れ、付近錨地に投錨仮泊したのち翌27日01時00分抜錨し、久米島兼城港花埼の岸壁に向かった。
ところで兼城港は、同港北部沖合の精川島(せがわしま)から陸岸に平行に南東方に延びる長さ約1,200メートルの防波堤に囲まれ、防波堤突端付近から沖合にかけて中干瀬(なかびし)と呼ばれるさんご礁が拡延し、その南方には大干瀬(うーびし)と呼ばれるさんご礁が拡延しており、両さんご礁の間の水域は防波堤入口から南西方に屈曲して沖合に通じる長さ約800メートル可航幅約200メートルの水路となっており、この水路入口の南側は、兼城港第2号立標(以下、兼城港各号立標については、「兼城港」を省略する。)の南西方約200メートルの大干瀬の西端から南西方約100メートルのところまで水深4メートル以下の浅礁が拡延していた。
航路標識としては、中干瀬の西端に鳥島港灯標、防波堤突端の南方にあたる中干瀬の東端には第3号立標、水路南側の中央部にあたる大干瀬の北側に第2号立標、両立標の間で水路中央の入航針路を示す055度の延長線上の海岸に指向灯併設の兼城港灯台がそれぞれ設置されており、A受審人は、同月11日に初めて兼城港に入航したときは、兼城港灯台の南西方1.2海里ばかりのところで兼城港灯台を船首目標として無難に水路入口に入航した。
こうしてA受審人は、錨地を発して間もなく二等航海士に船橋当直を委ねて休息し、06時50分久米島南端沖合の飛原岩の南方1海里ばかりの地点で再び昇橋し、前直の一等航海士から当直を引き継いで入航操船に当たり、機関長を機関の遠隔操作に当たらせ、一等航海士、二等航海士及び甲板長を船首見張りに就けて浅礁による水色の変化を認めたときは直ちに報告するよう指示し、機関を全速力前進にかけ10.0ノットの対地速力で久米島の南岸沿いに西行し、07時15分旅ノ埼から218度(真方位、以下同じ。)1,450メートルの地点に達したとき、右舷船首19度1.8海里に第2号立標を視認し、針路を同立標の南西方1,100メートルの地点に向く323度に定め、機関を微速力前進に減じ、5.0ノットの対地速力で手動操舵により進行した。
定針後A受審人は、花埼の岸壁までの航程を測って着岸予定時刻に少し遅れを生じていることを知り、水路入口南側の浅礁に接近する近回りの針路をとることとし、前回のように水路入口から十分離れたところから兼城港灯台を活用して水路入口中央に入航することなく、07時25分兼城港灯台から195度1.5海里の地点に達したとき、機関を極微速力前進に減じて3.0ノットの対地速力とし、右舵少しを小刻みにとって徐々に右転し、同時30分兼城港灯台から205度1.3海里の地点に達したとき、針路を360度に転じたところ第2号立標の南西方300メートルばかりの水路入口南側の浅礁に向首した。しかしながら、同人は、浅礁に接近すれば船首の見張り員が水色の変化で浅礁の存在を知らせてくれるものと思い、兼城港灯台が示す水路入航針路を十分に活用しなかったので、このことに気付かず続航した。
07時43分A受審人は、兼城港灯台から223度1,460メートルの地点に達して第2号立標を右舷船首32度420メートルに見るようになったとき、水色の変化を確かめるため、機関を停止したが、太陽光線の海面反射で水色の変化による浅礁の識別ができにくかったこともあって、船首見張り員から浅礁に向首接近している旨の報告が得られないまま惰力で進行中、07時45分、突然船首船底に衝撃を感じ、兼城港灯台から228度1,320メートルの地点において、水路入口南側の浅礁に原針路のまま2.0ノットの前進惰力で乗り揚げた。
当時、天候は晴で風力3の南東風が吹き、潮候は上げ潮の中央期で潮流はほとんどなく、視界は良好であった。
乗揚の結果、船首材下部、船底外板全面、両舷ビルジキール及び舵板に凹損を生じ、来援した救助船により引き下ろされ、のち修理された。

(原因)
本件乗揚は、沖縄県久米島南岸沖合から兼城港に向けて、同港沖合に拡延する中干瀬及び大干瀬の両さんご礁により狭められた水路入口に入航する際、水路入航針路を示す指向灯併設灯台の活用が不十分で、水路入口南側の浅礁に向首する針路で進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
A受審人は、沖縄県久米島南岸沖合から兼城港に向けて、同港沖合に拡延する中干瀬及び大干瀬の両さんご礁により狭められた水路入口に入航する場合、同水路入口南側に拡延する浅礁に著しく接近することのないよう、水路入口から十分離れたところから入航針路を示す指向灯併設の兼城港灯台を活用して水路入口の中央に入航すべき注意義務があった。しかしながら、同人は、浅礁に接近すれば船首の見張り員が水色の変化で浅礁の存在を知らせてくれるものと思い、近回りしようとして兼城港灯台を活用しなかった職務上の過失により、水路入口南側に拡延する浅礁に向首する針路で進行して乗り揚げ、船首材下部、船底外板全面、両舷ビルジキール及び舵板に凹損を生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

よって主文のとおり裁決する。






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