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海難審判庁裁決録(平成10年度)

 事業名 海難審判庁裁決録の刊行配布
 団体名 海難審判・船舶事故調査協会  




1998年(平成10年)

平成9年那審第49号
    件名
引船第十一米丸乗揚事件

    事件区分
乗揚事件
    言渡年月日
平成10年3月12日

    審判庁区分
地方海難審判庁
門司地方海難審判庁那覇支部

東晴二、井上卓、長浜義昭
    理事官
阿部能正

    受審人
A 職名:第十一米丸船長 海技免状:四級海技士(航海)(旧就業範囲)
    指定海難関係人

    損害
船体中央部船底に亀裂を伴う凹損

    原因
気象・海象に対する配慮不十分

    主文
本件乗揚は、気象及び海象に対する配慮が十分でなかったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成9年4月12日12時
沖縄県与那国島祖納港東側
2 船舶の要目
船種船名 引船第十一米丸
総トン数 99.04トン
全長 26.20メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力  735キロワット
3 事実の経過
第十一米丸(以下「米丸」という。)は、航行区域を沿海区域とする鋼製引船で、A受審人ほか機関長及び甲板員1人が乗り組み、船首0.70メートル船尾1.90メートルの喫水をもって、平成9年4月8日08時台船を曳(えい)航して沖縄県平良港を出港し、台船積載のクローラクレーン1両及びパワーショベル2両を同県与那国島祖納港東側海岸で陸揚げするため、同海岸に向かったが、与那国島地方沿岸海域が荒天であったことから避泊するため、翌9日09時台船と共に同島久部良漁港に入り、同月12日09時20分それまでの北寄りの風波がやや収まる状況のところ、台船を曳航して同漁港を発し、再び祖納港東側海岸に向かった。
台船は、長さ50.0メートル幅16.0メートル深さ3.5メートル、非自航式で、このとき喫水が船首0.50メートル船尾0.30メートルとなっており、作業員2人が乗り組んでいた。
ところで、東西に長い与那国島北岸の中ほどに位置する祖納港の東側海岸は、約150メートル沖合まで浅いさんご礁水域となっていて、海岸線に接して消波ブロックの仮置場が設けられ、台船積載のクローラクレーンなどは、消波ブロック仮置場付近の土地整備のため使用されるもので、その陸揚げについては、重量などの関係で祖納港から消波ブロック仮置場付近までの橋や道路の通行に困難が伴うことが予想されたこと及び米丸はさんご礁水域に入ることはできなかったが、台船がクローラクレーンなどを積載した状態でもさんご礁水域を経て消波ブロック仮置場付近海岸線まで進むのは可能であったことにより、台船を海岸側から直接消波ブロック仮置場付近海岸線に着けて行うという計画となっていた。
A受審人は、少し海上が穏やかとなったのを認め、同日朝気象情報を確かめたところ、南寄りの風に変わる見通しと聞き、それならば海上が穏やかになるので作業ができると判断し、3日間の久部良漁港における荒天避泊ののち、前示のとおり同海岸に向かったもので、北東風が東風に変わるとともに弱まったものの、依然北方からの波が高く、かつ、さんご礁外縁付近では一層波が高くなっている状況のところ、10時20分祖納港波多橋北端から005度(真方位、以下同じ。)300メートルの地点に達したとき、台船を離し、その後もっと沖合に移動し、台船の作業を遠望しながら待機した。
台船は、米丸から離されたのち、さんご礁外縁付近で船尾左舷から投錨し、ワイヤー製錨索を延ばすとともにパワーショベル2両の各ショベルアームを操作して海底をかくことにより、さんご礁水域を経て目的の消波ブロック仮置場付近海岸線まで達し、クローラクレーンなどを陸揚げし、錨索を巻いて再びさんご礁外縁付近に向かった。
A受審人は、台船がさんご礁外縁付近に達したならば、これに接近して曳航索を取ることとしていたが、波の状況にあまり変化がなく、曳航索を取る作業を行うとき、波の影響によりさんご礁外縁付近の浅所に寄せられるおそれがあったが、気象及び海象に配慮することなく、なんとか作業を行うことができるものと思い、台船が船首を南方に向けてさんご礁外縁付近に戻ったことから、台船曳航を行おうと、11時52分遠隔操舵及び主機遠隔操縦装置により操船に当たり、船首に機関長と甲板員を配置し、台船に向かった。
11時55分A受審人は、祖納港波多橋北端から006度270メートルのさんご礁外縁付近に達し、その後舵と機関を適宜操作し、175度に向け、同方向に向いて錨を効かせていた台船の船尾に船首を近付け、さんご礁外縁に近付き過ぎないようにしながら、曳航索先取りロープのレッドを投げさせたが、波の影響により海岸側に寄せられる状況のところ、曳航索先取りロープ渡しを3回失敗するうち、甲板員から船首部船底が海底に当たっていると伝えられた。
こうして、12時祖納港波多橋北端から008度240メートルの地点において、米丸は、175度を向いてさんご礁外縁付近の浅所に乗り揚げた。
当時、天候は晴で風力4の東風が吹き、北方からの高い波があり、潮候は下げ潮の初期であった。なお、与那国島地方に発表されていた波浪注意報は10時50分解除されていた。
乗揚直後A受審人は、機関を全速力後進にかけ、後退を試みたが、更に海岸側のさんご礁水域内に寄せられ、救助を求めるなどの事後の措置に当たった。
乗揚の結果、米丸は、中央部船底に亀(き)裂を伴う凹損を生じ、引船など2隻により離礁し、祖納港に引き付けられ、のち修理された。

(原因)
本件乗揚は、沖縄県与那国島北岸の祖納港東側のさんご礁外縁付近において、投錨状態の台船に曳航索を取る作業を行う際、北方からの波が高く、かつ、さんご礁外縁付近で波が一層高まる状況の下、気象及び海象に対する配慮が不十分で、同作業を中止せず、台船へ曳航索先取りロープのレッドを投げる間、波の影響によりさんご礁外縁付近の浅所に寄せられたことによって発生したものである。

(受審人の所為)
A受審人は、沖縄県与那国島祖納港東側のさんご礁外縁付近において、投錨状態の台船に曳航索を取る作業を行う場合、北方からの波が高く、かつ、さんご礁外縁付近で波が一層高まる状況であり、さんご礁外縁付近の浅所に寄せられるおそれがあったから、気象及び海象に十分配慮し、同作業を中止すべき注意義務があった。しかるに、同人は、気象及び海象に十分配慮せず、なんとか台船に曳航索を取る作業を行うことができるものと安易に考え、同作業を中止しなかった職務上の過失により、曳航索先取りロープのレッドを台船に投げる間、波の影響によりさんご礁外縁付近の浅所に寄せられて乗り揚げ、中央部船底に亀裂を伴う凹損を生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

よって主文のとおり裁決する。






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