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1998年(平成10年)

平成9年広審第36号
    件名
漁船清福丸乗揚事件

    事件区分
乗揚事件
    言渡年月日
平成10年3月5日

    審判庁区分
地方海難審判庁
広島地方海難審判庁

亀山東彦、平田照彦、花原敏朗
    理事官
喜多保

    受審人
A 職名:清福丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
船底各所に亀裂を伴う損傷と舵板、プロペラ及びプロペラ軸に曲損、のち廃船、船長は入院3日を要する顔面、胸部及び右膝に打撲傷

    原因
居眠り運航防止措置不十分

    主文
本件乗揚は、居眠り運航の防止措置が不十分であったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成8年6月16日03時27分
岡山県笠岡市横辺島
2 船舶の要目
船種船名 漁船清福丸
総トン数 3.4トン
登録長 10.55メートル
機関の種類 ディーゼル機関
漁船法馬力数 70
3 事実の経過
清福丸は、専ら交通船や魚の運搬船として使用しているFRP製漁船であるが、A受審人が1人で乗り組み、船首尾とも0.3メートルの等喫水をもって、平成8年6月16日03時00分岡山県笠岡港笠岡地区を発し、自宅のある笠岡市六島の湛江(たたえ)漁港に向かった。
これよりさき、A受審人は、前日15日07時ごろ起床して夕刻まで魚の養殖作業に従事したあと、19時ごろ清福丸で笠岡港に行き、広島県福山市内で翌16日02時ごろまで飲食して帰船したが、それまで全く睡眠をとっておらず、疲れを感じていたからそのまま出港すれば居眠りに陥るおそれがあったが、早く自宅に帰りたいと思い、出港前に休息をとることなく出航した。
A受審人は、運転席の右舷側にある椅子に座って操船にあたり、発航後直ちに機関を全速力より少し落とした毎分回転数2,600にかけ、19.0ノットの対地速力とし、港外に出たところで北木瀬戸東口に向けて手動操舵で南下したあと、03時22分ごろ右転して同瀬戸を西行した。
A受審人は、北木瀬戸を抜けた03時25分半金風呂港東防波堤灯台(以下、「東防波堤灯台」という。)から254度(真方位、以下同じ。)1,300メートルの地点で針路を横辺島に向首する183度に定めたあと、狭い水道を抜けてほっとして気が弛むとともに、前夜飲んだビールの影響もあって間もなく居眠りに陥り、清福丸は、原針路、原速力のまま03時27分東防波堤灯台から224度1,800メートルの横辺島東端の岩場に乗り揚げた。
当時、天候は曇で風はほとんどなく、潮候は下げ潮のほぼ中央期であった。
乗揚の結果、清福丸は船底各所に亀(き)裂を伴う損傷と舵板、プロペラ及びプロペラ軸に曲損を生じ、主機は別船に再用されたが、修理費の関係で廃船となり、A受審人は入院3日を要する顔面、胸部及び右膝に打撲傷を負った。

(原因)
本件乗揚は、未明、笠岡巻から六島に向け航行中、横辺島に向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
A受審人は前日仕事をしたあと、未明近くまで飲食して帰船し、自宅に帰るために単独で操船して出港する場合、長時間睡眠をとらず、疲れを感じていたのだから、居眠り運航の防止措置として、出港前に休息すべき注意義務があった。しかしながら、早く帰宅したいと思い、出港前に休息しなかった職務上の過失により、居眠り運航となって横辺島への乗揚を招き、清福丸の船底各所に亀裂を伴う損傷を生じさせて廃船とし、かつ、自らも顔面等に打撲傷を負うに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

よって主文のとおり裁決する。






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