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海難審判庁裁決録(平成10年度)

 事業名 海難審判庁裁決録の刊行配布
 団体名 海難審判・船舶事故調査協会  




1998年(平成10年)

平成9年神審第8号
    件名
貨物船第八泰平丸乗揚事件

    事件区分
乗揚事件
    言渡年月日
平成10年3月10日

    審判庁区分
地方海難審判庁
神戸地方海難審判庁

早川武彦、山本哲也、織戸孝治
    理事官
竹内伸二

    受審人
A 職名:第八泰平丸船長 海技免状:五級海技士(航海)
    指定海難関係人

    損害
中央部から船尾に至る船底外板一帯に凹損、擦過傷

    原因
船位確認不十分

    主文
本件乗揚は、船位の確認が不十分であったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成7年6月20日21時48分
伊予灘北部 二神島西岸沖合
2 船舶の要目
船種船名 貨物沿第八泰平丸
総トン数 199.84トン
全長 56.50メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 735キロワット
3 事実の経過
第八泰平丸は、専ら山口県徳山下松港と阪神間を1週間に3往復し、コンテナ輸送に従事する船尾船橋型貨物船で、A受審人ほか2人が乗り組み、コンテナ30個、重量約600トンを積載し、船首2.20メートル船尾3.20メートルの喫水をもって、平成7年6月20日17時00分徳山下松港を発し、神戸港に向かった。
A受審人は、出港操船に引き続いて単独の船橋当直に就き、上関海峡、平郡水道を経て、クダコ水道に向かうつもりで、同日20時48分沖家室島(おきのかむろじま)長瀬灯標から121度(真方位、以下同じ。)1.4海里の地点に達したとき、針路を二神島西岸能埼沖合400メートルに向く046度に定めて自動操舵とし、機関を全速力前進にかけ、8.6ノットの対地速力で進行した。
ところで、能埼の西方には陸岸から100メートル沖合付近まで浅礁が拡延し、また同埼沖合200メートルに孤立暗岩が存在し、A受審人は、常時同航路を航行していて、その存在を知っており、平素、能埼を400ないし500メートル離す針路とし、二神島に近づいたとき、船位を確認し潮流の影響により能埼側に近づいておれば針路を修正し、同埼を安全に航過するようにしていた。
21時07分A受審人は、6海里レンジとしたレーダーで、船首輝線の少し右側約6海里に二神島能埼付近を、左側約6海里に、点々と7ないし8隻の漁船の映像を認め、近づくにつれてそれらの灯火も見え、停留している様子なので、同針路のまま、その後レンジを3海里に切り替えて続航した。
21時44分A受審人は、根ナシ礁灯標から162度1.3海里の地点に達し、潮流によって船位が右偏して能埼沖合の暗岩に著しく接近する状況となっていたが、能埼付近を1,200メートルに目測し、レーダーの船首輝線が能埼とクダコ水道南部に点在する上二子島間に向いているのを見て、予定どおりこのまま漁船群と能埼間を無難に通航し得るものと思い、平素のように同暗岩を安全に航過できるよう、レーダーを使い偏位量を確かめるなど船位を十分確認することなく、針路の修正を行わないで進行した。
21時47分A受審人は、左方の漁船群に近くなったので、操舵を手動に切り替えて続航したところ、それまで停留していた漁船群のうち2隻が自船の前路に向けて移動し始めたのを認め、汽笛を2、3回吹鳴して様子を見たが、なおも接近するので、同時47分少し過ぎ、根ナシ礁灯標から142度1.2海里の地点で、右舷10度をとり、しばし針路ほぼ060度で進行し、二神島の黒影が近づくのを見て左舵20度にとり直して左転中、21時48分第八泰平丸は、根ナシ礁灯標から136度1.2海里の前示暗岩に、船首を046度に向首して乗り揚げ擦過した。
当時、天候は晴で風力2の東風が吹き、潮候は上げ潮の初期で、乗揚地点付近には微弱な南流があった。
乗揚の結果、中央部から船尾に至る船底外板一帯に凹損、擦過傷を生じたが、浸水はなく、いったん付近に停止し損傷調査後、目的地に向け航海を続け、船体は、のち修理された。

(原因)
本件乗揚は、夜間、クダコ水道に向け、二神島西方を東行中、船位の確認が不十分で、針路の修正が行われず、同島能埼沖合の暗岩に著しく接近したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
A受審人は、夜間、単独の船橋当直に就き、クダコ水道に向け、二神島西方を東行中、同島に近づいた場合、潮流によって圧流され同島能埼沖合の暗岩に接近するおそれがあったから、同暗岩を無難に航過できるよう、レーダーを活用するなどして船位を十分に確認すべき注意義務があった。しかるに同人は、能埼西方沖合に停留していた漁船群と能埼との間を通航することに気をとられ、このままの針路で能埼沖を通航できると思い、船位を十分確認しなかった職務上の過失により、船位の偏位に気づかないで針路修正を行わず、暗岩に著しく接近したまま進行して乗揚を招き、船底外板に多数の凹損を生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

よって主文のとおり裁決する。






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