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海難審判庁裁決録(平成10年度)

 事業名 海難審判庁裁決録の刊行配布
 団体名 海難審判・船舶事故調査協会  




1998年(平成10年)

平成9年門審第54号
    件名
油送船シーアス丸乗揚事件

    事件区分
乗揚事件
    言渡年月日
平成10年2月6日

    審判庁区分
地方海難審判庁
門司地方海難審判庁

酒井直樹、川本豊、藤江哲三
    理事官
下川幸雄

    受審人
A 職名:シーアス丸船長 海技免状:三級海技士(航海)
    指定海難関係人

    損害
船底前部外板に亀裂を伴う凹損

    原因
船位確認不十分

    主文
本件乗揚は、船位の確認が不十分であったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成8年10月14日22時50分
岡山県水島港沖合
2 船舶の要目
船種船名 油送船シーアス丸
総トン数 698トン
全長 68.84メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 1,323キロワット
3 事実の経過
シーアス丸は、主として和歌山県和歌山下津港から岡山県水島港及び福岡県博多港などにアスファルトを積み出している船尾船橋型の油送船で、A受審人ほか6人が乗り組み、燃料用アスファルト997トンを載せ、船首3.20メートル船尾4.75メートルの喫水をもって、平成8年10月14日14時00分和歌山下津港下津区を発し、明石海峡経由で水島港に向かった。
A受審人は、同年9月に本船に乗船したのち水島港に入航するのは初めてであったが、4年前にはケミカルタンカーの船長として水島港に入航した経験があり、今回は水島港到着予定時刻が同年10月14日23時ごろになることから、港外に投錨仮泊して翌朝入航着桟することとし、発航操船を終えて船橋当直を二等航海士に任せ、夜間の水島航路通航に備えて海図第137号Bに当たり、水島港入口付近の六口島の東端付近に設置されている水島航路第9号灯浮標(以下、水島航路各号灯浮標については、「水島航路」を省略する。)を左舷側に通過したのち左転して六口島北西方の錨地に向かう入航針路線を同海図に記入し、14時半ごろ降橋して休息した。
A受審人は、19時50分ごろ播磨灘西部にあたる大角鼻灯台の南東方1海里ばかりの地点で再び昇橋し、一等航海士から当直を引き継いで単独船橋当直に就き、20時30分備讃瀬戸東航路の東口に入航したとき、機関を全速力前進にかけ11.5ノットの対地速力で同航路を西行した。
A受審人は、22時19分小瀬居島灯台から020度(真方位、以下同じ。)1.0海里の地点に達したとき、機関長を機関の遠隔操縦に当たらせて同航路を西行し、同時33分水島航路に入航し、同時35分第6号灯浮標を右舷側200メートルに通過して向島47メートル頂から140度2,800メートルの地点に達したとき、第8号灯浮標を船首少し右方に見る340度に針路を定め、機関を半速力前進に減じ、9.0ノットの対地速力で、手動操舵により進行した。
定針したとき、A受審人は、1.5マイルレンジとしていたレーダーを一見して画面の左舷前方に現れてきた向島の映像を認めるとともに向島の東端付近に第7号浮標を視認した。しかしながら、同人は、転針目標の六口島の東端付近に第9号浮標が設置されていることから向島のレーダー映像を六口島の映像と思い、レーダーのレンジを切り替えて北方の長島、六口島及び上濃地島などの相対位置関係により船位を十分に確認しなかったので、第7号灯浮標を第9号灯浮標と思い込み、向島のレーダー映像を六口島と取り違えたまま続航した。
こうしてA受審人は、22時41分第7号灯浮標が左舷前方800メートルに接近したとき、向島北方の長島がレーダー画面の左舷前方に現われてきたので、長島を上濃地島と思い込み、その南岸付近を西行することとし、二等航海士に対し船内電話で船首配置に就くよう指示して機関を微速力前進に減じ、7.0ノットの対地速力で続航した。
A受審人は、22時43分向島47メートル頂から099度1,100メートルの地点に達して第7号浮標を左舷船首70度500メートルに見るようになったとき、依然として船位を確認しなかったので、第9号灯浮標にほぼ並行して転針予定地点に達したものと思い、水島航路の左側に向け321度に転針し、向島と長島の映像がレーダー画面一杯に映るよう、0.75マイルレンジとして進行し、同時48分向島47メートル頂から040度750メートルの地点に達したとき、針路を長島の南岸沖合に向く265度に転じたところ、長島の東端付近の浅所に向首したが、このことに気付かず続航中、突然船底に衝撃を受け22時50分向島47メートル頂から359度520メートルの浅所に原針路、微速力のまま乗り揚げた。
当時、天候は晴で風力3の西風が吹き、潮候は上げ潮の末期で潮流はほとんどなく、視界は良好であった。
乗揚の結果、船底前部外板に亀(き)裂を伴う凹損を生じ、来援した救助船により引き下ろされ、のち修理された。

(原因)
本件乗揚は、夜間、岡山県水島港入口付近の六口島の北西方錨地に向け水島航路を北上する際、船位の確認が不十分で、六口島南方の向島を六口島と取り違え、長島の東端付近の浅所に向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
A受審人は、夜間、岡山県水島港入口付近の六口島の北西方錨地に向け水島航路を北上する場合、転針目標の六口島とその南方の向島を取り違えることのないよう、作動中のレーダーのレンジを切り替えて船位の確認を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、六口島の東端付近に設置されている水島航路灯浮標により同島が判別できるものと思い、レーダーを短距離レンジとしたまま船位の確認を行わなかった職務上の過失により、向島を六口島と取り違え、長島の東端付近の浅所に向首したまま進行して乗り揚げ、船底外板に亀裂を伴う凹損を生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

よって主文のとおり裁決する。






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