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海難審判庁裁決録(平成10年度)

 事業名 海難審判庁裁決録の刊行配布
 団体名 海難審判・船舶事故調査協会  




1998年(平成10年)

平成9年門審第37号
    件名
貨物船豊後丸乗揚事件

    事件区分
乗揚事件
    言渡年月日
平成10年1月20日

    審判庁区分
地方海難審判庁
門司地方海難審判庁

川本豊、酒井直樹、杉?忠志
    理事官
猪俣貞稔

    受審人
A 職名::豊後丸船長 海技免状:四級海技士(航海)
    指定海難関係人

    損害
船底外板全般にわたって損傷

    原因
船位確認不十分

    主文
本件乗揚は、船位の確認が不十分であったことによって発生したものである。
受審人Aの四級海技士(航海)の業務を1箇月停止する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成7年7月12日02時30分
鳴門海峡
2 船舶の要目
船種船名 貨物船豊後丸
総トン数 506トン
全長 61.75メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 956キロワット
3 事実の経過
豊後丸は、主として大分県津久見港と国内各港間のセメント輸送に従事する船尾船橋型のセメント運搬船で、A受審人ほか5人が乗り組み、セメント1,039トンを積載し、船首3.84メートル船尾4.29メートルの喫水をもって、平成7年7月11日08時05分津久見港を発し、兵庫県福良港に向かった。
A受審人は、発航後の船橋当直を4時間交替の3直制に定め、0時から4時までを甲板員、8時から12時までを一等航海士にそれぞれ単独で当直に当たらせ、自らは4時から8時までの間に入直すほか、狭水道通航や視界制限状態のときにも船橋で操船の指揮を執ることとし、瀬戸内海を鳴門海峡に向け東行した。
ところで、A受審人は、これまで内航船の船長として何回も鳴門海峡の通航経験があり、大鳴門橋の中瀬橋脚からその北方150メートルまで拡延する中瀬の浅所が存在することも、夜間、備讃瀬戸東口方面から鳴門海峡北口を経て、同海峡最狭部を安全に通過するためには、レーダーで大鳴門橋の中瀬橋脚のレーダービーコン(以下「中瀬レーコン」という。)を船首目標にして船位を確認しながら孫埼灯台に並航したとき、同橋の中央付近に向け転針して南下しなればならないことも知っていた。
A受審人は、翌12日02時15分、船橋当直中の甲板員から霧模様で大鳴門橋の手前約3海里の地点に達したとの報告を受け、自ら鳴門海峡通航の操船指揮を執るため昇橋し、同時16分孫埼灯台から310度(真方位、以下同じ。)2海里の地点で針路を大鳴門橋中瀬橋脚に向首する121度に定め、機関を全速力前進にかけて10ノットの対地速力で、甲板員を手動操舵に当たらせて進行した。
A受審人は、定針して間もなく、霧のため視界が次第に制限されるようになったのでレーダーを作動させて3海里レンジとし、中瀬レーコンを船首目標にして続航していたところ、右舷後方約0.5海里のところに自船に接近する同航船の灯火を認めて、その動向に注意しながら進行した。
A受審人は、02時24分大鳴門橋の中瀬橋脚の手前1海里の地点に達したころから視界が急に狭められて、視程が300メートルばかりとなり、大鳴門橋の橋梁灯や孫埼灯台の灯火が視認できない状況となった。しかしながら、同受審人は、その後、右舷後方から接近する同航船の接近模様が気になり、船橋右舷側ウイングに出てその動向に気をとられて、中瀬レーコンの方位や距離を測定するなどレーダーによる船位の確認を行わなかった。
A受審人は、02時27分孫埼灯台を右舷側600メートルに並航して大鳴門橋中央付近に向かう予定転針地点に達したが、依然レーダーによる船位の確認を行わなかったので、このことに気付かず、同橋の中央付近に向けて転針しないまま同地点を通過して中瀬橋脚付近の浅所に向首進行した。
A受審人は、02時29分ごろ前示同航船が自船から遠ざかったのを認めたので、船橋右舷側ウイングから船橋内に戻ったところ、船首方間近に中瀬の橋脚灯の灯火を認めて驚き、左舵一杯を令して回頭中、02時30分船首が70度を向いて大鳴門橋と平行になったとき、門埼灯台から251度530メートルの中瀬の浅所に乗り揚げた。
当時、天候は霧で風はほとんどなく、潮候は下げ潮の中央期でほぼ転流時にあたり、視程は約100メートルであった。
乗揚の結果、船底外板全般にわたって損傷を受けたが、浸水はなく、その後来援した救助船により引き下ろされ、のち修理された。

(原因)
本件乗揚は、夜間、霧のため視界が制限された鳴門海峡を南下する際、レーダーによる船位の確認が不十分で、大鳴門橋の中瀬橋脚付近の浅所に向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
A受審人は、霧のため視界が制限された鳴門海峡を南下する場合、大鳴門橋の中瀬橋脚付近の浅所に著しく接近することのないよう、レーダーを使用して船位の確認を十分に行うべき注意義務があった。ところが、同受審人は、右舷後方から接近する同航船に気をとられ、レーダーによる船位の確認を行わなかった職務上の過失により、同橋の中央部に向け転針行われないまま進行して浅所に乗り揚げ、船底外板に損傷を生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第2号を適用して同人の四級海技士(航海)の業務を1箇月停止する。

よって主文のとおり裁決する。






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