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海難審判庁裁決録(平成10年度)

 事業名 海難審判庁裁決録の刊行配布
 団体名 海難審判・船舶事故調査協会  




1998年(平成10年)

平成9年那審第44号
    件名
貨物船協栄丸乗揚事件

    事件区分
乗揚事件
    言渡年月日
平成10年5月26日

    審判庁区分
地方海難審判庁
門司地方海難審判庁那覇支部

東晴二、井上卓、小金沢重充
    理事官
阿部能正

    受審人
A 職名:協栄丸船長 海技免状:四級海技士(航海)(旧就業範囲)
B 職名:協栄丸一等航海士 海技免状:五級海技士(航海)
    指定海難関係人

    損害
船底全般に凹損及び擦過傷、プロペラに曲損

    原因
居眠り運航防止措置不十分

    主文
本件乗揚は、居眠り運航防止の措置が十分でなかったことによって発生したもので
ある。
受審人Bを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成9年1月24日07時40分
沖縄県与那国島北岸
2 船舶の要目
船種船名 貨物船協栄丸
総トン数 278トン
全長 64.00メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 735キロワット
3 事実の経過
協栄丸は、那覇港、石垣港及び与那国島久部良漁港のいずれも沖縄県の各港間を定期運航される鋼製貨物船で、A、B両受審人ほか6人が乗り組み、コンテナ入り雑貨など150トンを積載し、船首1.80メートル船尾3.40メートルの喫水をもって、平成9年1月24日02時05分石垣港を発し、久部良漁港に向かった。
A受審人は、出航操船に引き続いて船橋当直に当たり、04時00分甲板長に当直を引き継ぎ、自室で休息した。
その際A受審人は、甲板長には見張りを厳重に行うよう指示し、甲板長のあと当直に当たるB受審人に対しては、同人が那覇港、石垣港及び久部良漁港間の航路の一等航海士として十分な経験を有していたことから、同人へ申し継ぐ事項を特に指示せず、また石垣港においてはいつものとおり荷役終了後出港時まで乗組員の休息時間が十分とれていたことから、船橋当直者が居眠りするかも知れないということについては念頭になかった。
0600B受審人は、それまで自室で休息していたところ、東埼灯台から084(真方位、以下同じ。)18.5海里の地点に達したとき、甲板長から当直を引き継ぎ、GPSプロッターの進路ベクトルが、東埼灯台を1.6海里離す269度の予定針路線よりも若干北を向いていたことから、南寄りの風と北向きの潮流の影響を受けていると思い、針路を265度に定め、機関を全速力前進にかけて11.5ノットの対地速力で、自動操舵により1人で当直に当たって進行した。
ところで、これより先B受審人は、石垣港出港の前日14時45分から18時00分までの間荷役に立ち会い、その後船務がなく、夕食後は船内での雑談と上陸で時間を過ごし、出港前約1時間、出港後約3時間それぞれ自室で睡眠をとり、当直のため昇橋したとき、やや睡眠不足の状態であった。
B受審人は、ときどきGPSブロッターにより予定針路線上に位置していることを確かめ、操舵室のいすに腰掛けて当直を続けていたところ、06時30分やや睡眠不足の状態であったことにより、眠気を感じるようになったが、居眠りすることはあるまいと思い、そのことをA受審人に伝えるなどの居眠り運航防止の措置をとらないでいるうち、やがて居眠りし始め、そのころ寒冷前線の通過により風が北寄りに変わるとともに強くなったことから、進路が269度の予定針路線よりも左偏する状態となったが、そのことに気付かなかった。
こうして協栄丸は、東埼灯台については左舷側ごく近距離でかわるものの、与那国島東埼の北側海岸に著しく接近する状況のまま進行し、07時36分東埼灯台を左舷側0.5海里で通過し、07時40分東埼灯台から297度1,850メートルの地点において、265度の同一針路で、東埼北側海岸から沖に広がったさんご礁の浅所に乗り揚げた。
当時、天候は雨で風力7の北風が吹き、北方からのやや高い波があり、潮候は上げ潮の末期で、日出は07時31分であった。
A受審人は、乗揚の衝撃を感じて昇橋し、救助を求めるなどの事後め措置に当たった。
乗揚の結果、協栄丸は、船底全般に凹損及び擦過傷を、プロペラに曲損を生じ、サルヴェージ会社の引船3隻により離礁し、自力で久部良漁港に入り、のち修理された。

(原因)
本件乗揚は、沖縄県石垣港から同県与那国島久部良漁港に向かって航行中、居眠り運航防止の措置が不十分で、与那国島東埼北側海岸に著しく接近する状況のまま進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
B受審人は、沖縄県石垣港から同県与那国島久部良漁港に向かって航行中、1人で船橋当直に当たり、眠気を感じた場合、そのことを船長に伝えるなど、居眠り運航防止の措置をとるべき注意義務があった。しかるに、同人は、居眠りすることはあるまいと思い、居眠り運航防止の措置をとらなかった職務上の過失により、当直中居眠りし、与那国島東埼北側海岸に著しく接近する状況のまま進行して乗揚を招き、船底及びプロペラに損傷を生じさせるに至った。
以上のB受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
A受審人の所為は、本件発生の原因とならない。

よって主文のとおり裁決する。






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