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海難審判庁裁決録(平成10年度)

 事業名 海難審判庁裁決録の刊行配布
 団体名 海難審判・船舶事故調査協会  




1998年(平成10年)

平成9年門審第100号
    件名
漁船第二十一幸福丸乗揚事件

    事件区分
乗揚事件
    言渡年月日
平成10年5月27日

    審判庁区分
地方海難審判庁
門司地方海難審判庁

伊藤實、清水正男、西山烝一
    理事官
根岸秀幸

    受審人
A 職名:第二十一幸福丸船長 海技免状:五級海技士(航海)(旧就業範囲)
    指定海難関係人

    損害
船底外板全般に破口を生じて浸水、のち全壊

    原因
船橋を無人、船位確認不十分

    主文
本件乗揚は、船橋を無人の状態とし、船位が確認されなかったことによって発生したものである。
受審人Aの(航海)(旧就業範囲)の業務を1箇月停止する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成8年3月21日02時50分
鹿児島県大隅群島黒島
2 船舶の要目
船種船名 漁船第二十一幸福丸
総トン数 59トン
登録長 24.90メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 485キロワット
3 事実の経過

A受審人は、発航時から単独で見張りと操船に当たり、発航地点でGPSのプロッター(以下「プロッター」という。)を見て、針路を大隅群島の硫黄島と黒島間で、黒島から3海里東方にあたる地点を通航するつもりで、針路を036度に定めて自動操舵とし、機関を約10.0ノットの全速力前進にかけ、折からの東寄りの風と北方に向かう黒潮の影響を受け、4度ばかり左方に圧流されながら、11.0ノットの対地速力で進行した。
ところで、A受審人は、出入港地と漁場においては同人が専ら単独で操船に当たり、漁場と出入港地間の往復路では船橋当直を甲板員6人に、各2時間交代による単独当直を行わせていたが、その順番及び交代方法等については甲板員に任せきりで、適切な指示を行っていなかった。
そのため、当直を交代する際、船橋において前直者と次直者とが立ち会って針路、速力、船位、他船や周囲の状況等を確認するなどの引継ぎが行われず、前直者が船員室に赴いて次直者を起こした時点で当直を引き継いだものとする習慣が定着し、前直者が船橋に戻らずにそのまま船員室で就寝し、次直者が昇橋するまで船橋が無人の状態となって船橋当直が適切に行われず、また、当直者が立直中、船橋を離れて食堂に行き、夜食をとるなどしてしばしば船橋が無人となる状態があり、A受審人はこのことを見掛けていたが、少々のことは大目に見ることとし、これらを黙認していた。
こうして、A受審人は、21時30分臥蛇(がじゃ)島灯台から294度13.5海里付近で、昇橋してきたB指定海難関係人に対し、プロッターを見て自動操舵を調整しながら原針路で行くように指示したが、船橋を無人としないよう、当直交代を船橋で確実に行うよう厳重に指示することも、これを次直者に引き継ぐように指示することもなく、同人に当直を引き継ぎ、船橋の後ろにある船長室のベットで就寝した。
B指定海難関係人は、船橋当直を2時間行ったのち、23時30分臥蛇島灯台から359度24.5海里付近に達したとき、当直交代のため下橋して船員室に赴き、睡眠をとっていた次直のC指定海難関係人を起こし、いつものように当直を引き継いだものとして食堂で夜食をとっていたところ、C指定海難関係人が起きて船員室から食堂を通って便所に行くのを見掛けたので、同指定海難関係人が昇橋して船橋当直に就くものと思い、船橋に戻って同人と確実に当直の引継ぎを行うことなく、夜食を済ませたのち船員室で就寝した。
一方、C指定海難関係人は、B指定海難関係人に起こされて一旦便所に行ったものの、当直交代で起こされたことを失念し、再び船員室に戻って就寝した。
翌21日00時ごろA受審人は、合わせていた目覚まし時計で起きて船橋を見たところ、当直者が不在で船橋が無人の状態であったが、閉められているはずの右舷側のドアが開いていたので、当直者が夜食を食べに食堂に行って、そのうちに戻るものと思い、また、プロッターを一瞥(べつ)しただけで、無人の状態や船位を確かめないまま、目覚まし時計を黒島付近に差し掛かる予定時刻の03時に合わせて再び就寝し、幸福丸が左方に圧流されて黒島に向かって進行していることに気付かなかった。
幸福丸は、原針路、原速力で、船橋を無人の状態として船位が確認されないまま続航し、02時50分薩摩黒島灯台から267度3.0海里にあたる、黒島の西岸に乗り揚げた。
当時、天候は小雨で風力5の東北東風が吹き、潮候は上げ潮の初期にあった。
A受審人は、船体の衝撃と波浪による動揺を感じて目覚め、初めて乗り揚げたことを知り、乗組員を上陸させるなどの事後の措置に当たった。
乗揚の結果、船体は、船底外板全般に破口を生じて浸水し、波浪の衝撃による破壊が急速に進んで全壊したが、乗組員は全員無事に上陸し、のち、救援に駆け付けた僚船に収容された。

(原因)

運航が適切でなかったのは、船長が、無資格の船橋当直者に対し、当直交代を船橋で確実に行なうように指示しなかったことと、当直者が、当直交代の引継ぎを船員室で行って就寝したこと、次直者が当直交代の引継ぎを失念し、就寝して昇橋しなかったこととによるものである。

(受審人等の所為)

以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第2号を適用して同人の五級海技士(航海)(旧就業範囲)の業務を1箇月停止する。

B指定海難関係人に対しては、その後、船橋当直の交代が船橋で確実に行われるように改善された点に徴し、勧告しない。
C指定海難関係人が、夜間、船員室で就寝中、船橋当直の交代のため、いままでの習慣どおりに前直者から起こされた際、一旦起きて便所に行ったものの、当直を引き継いだことを失念して再度就寝し、昇橋しないで、船橋を無人の状態としたことは、本件発生の原因となる。
C指定海難関係人に対しては、その後、船橋当直の交代が船橋で確実に行われるように改善された点に徴し、勧告しない。

よって主文のとおり裁決する。






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