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海難審判庁裁決録(平成10年度)

 事業名 海難審判庁裁決録の刊行配布
 団体名 海難審判・船舶事故調査協会  




1998年(平成10年)

平成9年広審第61号
    件名
貨物船真英丸乗揚事件

    事件区分
乗揚事件
    言渡年月日
平成10年5月19日

    審判庁区分
地方海難審判庁
広島地方海難審判庁

釜谷獎一、杉?忠志、黒岩貢
    理事官
向山裕則

    受審人
A 職名:真英丸一等航海士 海技免状:三級海技士(航海)
    指定海難関係人

    損害
船首船底部に破口を伴う亀裂

    原因
水路調査不十分

    主文
本件乗揚は、水路調査が不十分であったことによって発生したものである。
受審人Aの三級海技士(航海)の業務を1箇月停止する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成8年6月25日14時00分
広島湾
2 船舶の要目
船種船名 貨物船真英丸
総トン数 689トン
全長 79.20メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 1,471キロワット
3 事実の経過
真英丸は、専ら砂利運送に従事する船尾船橋型の鋼製貨物船で、船長B、A受審人ほか4人が乗り組み、空倉のまま、船首1.68メートル船尾3.57メートルの喫水をもって、平成8年6月25日11時15分愛媛県波方町にある宇野造船所を発し、砂利積荷の目的で、広島県佐伯郡大柿町の、西五番之砠灯標から006度(真方位、以下同じ。)4.3海里のところにある砂利採取場に向かった。
B船長は、発航にあたり、海図第141号(安芸灘及び付近)及び海図第142号(広島湾)に記載されている推薦航路に従って安芸灘を経て柱島水道を北上する計画を立て、同海図上に針路線を記入し、12時ごろ鴨瀬灯台から092度3.3海里ばかりの地点で、A受審人に船橋当直を任せることとした。
A受審人は、単独で船橋当直に就いて安芸灘を西航し、13時26分三ッ石灯台から358度0.8海里の地点に達したとき、針路を柱島水道のほぼ南端に設置された広島湾第1号灯浮標(以下「1号灯浮標」という。)を左舷船首約2分の1点に見る250度に定め、機関を10.5ノットの全速力前進にかけ、操舵を手動として進行した。
ところで、柱島水道は、その西側を柱島、東側を横島に挟まれた北西方に向かって延びる幅約2.5海里の水路で、同水道に設けられた推薦航路は、1号灯浮標から298度の方向に約2海里の地点に至り、ここで326度に向けて屈曲し、同水道のほぼ中央線に沿って設定されていたが、前示屈曲点から約2海里の同航路線上の東0.7海里のところに西五番之砠灯標が存在し、その頂部には西方位標識が設けられていた。
他方、西五番之砠灯標から126度0.8海里の地点には、洗岩、暗岩を含むエビガヒレの険礁が存在しており、周辺海域を航行する船舶は、同灯標の標識に従ってその西方海域を航行することになっていた。
このような水路事情は、海図第142号を調査すれば、西五番之砠灯標の航路標識が、西方位標識であることも、その南東側にはエビガヒレを含む険礁が点在していて、同灯標の東側海域は、通航が極めて危険であり、困難であることを十分認識することができる状況にあった。
13時38分A受審人は、1号灯浮標を左舷船首14度1.6海里に見る地点に達したとき、第3船が右舷船首方の横島南端付近を航過して自船に向けて来航するのを認め、同船と左舷側を対して航過することとし、針路を右転して横島と1号灯浮標のほぼ中央に向首する265度に転じて続航した。
13時48分半A受審人は、第3船と航過し終えたころ船位を西五番之砠灯標から140度2.8海里の地点に測得し、同灯標を右舷船首54度に視認してその東側海域を見渡したところ、障害物が見当たらなかったことから航行可能な海域であると思い、海図を一瞥(べつ)して単に推薦航路に記入された針路のみを見て326度に転針を開始したが、このとき海図にあたって水路調査を十分に行わなかったので、西五番之砠灯標の標識が西方位灯標であることも、同灯標の東側海域に険礁が存在していることにも気付かず、同海域への航行を取りやめることなく進行した。
13時49分針路が定針し、西五番之砠灯標を左舷船首7度2.7海里に見る状況となり、推薦航路の東側をこれと平行して1海里隔たった進路となって続航したが、A受審人は周辺海域に他船がいなくなったことから操舵を自動に切り替え、船橋内を左右に移動しながら当直に従事中、同時56分西五番之砠灯標が左舷船首13度1.5海里となり、エビガヒレに向首する状況であったが、このことに気付かないまま進行中、14時00分突然衝撃を受け、西五番之砠灯標から125度1,560メートルのエビガヒレに原針路、原速力のまま乗り揚げた。
当時、天候は曇で風力2の西南西風が吹き、潮候は上げ潮の中央期であった。
乗揚の結果、船首船底部に破口を伴う亀裂を生じ、サルベージ船の来援を得て離礁し、のち修理された。

(原因)
本件乗揚は、柱島水道の東側海域を、西五番之砠灯標に向けて北上する際、同灯標の東側海域に対する水路調査が不十分で、同灯標の東側の航行を取りやめず、エビガヒレに向首進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
A受審人は、柱島水道の東側海域を北上中、西五番之砠灯標を視認してその東側海域を航行しようとする場合、同海域は険礁が点在する海域であったから、同海域に立ち入ることのないよう、海図にあたり、水路調査を十分に行うべき注意義務があった。
しかるに同人は、西五番之砠灯標の東側海域を見渡したところ、障害物が見当らなかったことから航行可能海域であると思い、水路調査を十分に行わなかった職務上の過失により、険礁の存在に気付かないまま浅所に向けて進行して乗揚げを招き、船首部船底に破口を伴う亀裂を生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第2号を適用して同人の三級海技士(航海)の業務を1箇月停止する。

よって主文のとおり裁決する。






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