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1998年(平成10年)

平成9年門審第83号
    件名
貨物船香椎丸貨物船第三十二寿丸衝突事件

    事件区分
衝突事件
    言渡年月日
平成10年9月22日

    審判庁区分
地方海難審判庁
門司地方海難審判庁

畑中美秀、清水正男、西山烝一
    理事官
喜多保

    受審人
A 職名:香椎丸船長 海技免状:三級海技士(航海)
B 職名:第三十二寿丸船長 海技免状:四級海技士(航海)
    指定海難関係人

    損害
香椎丸…右舷船首部外板に破口及び擦過傷
寿丸…船首を圧壊

    原因
寿丸…港則法の航法(防波堤の入口付近)不遵守(主因)
香椎丸…警告信号不履行(一因)

    主文
本件衝突は、入航する第三十二寿丸が、防波堤の外で出航する香椎丸の進路を避けなかったことによって発生したが、香椎丸が警告信号を行わなかったことも一因をなすものである。
受審人Bを戒告する。
受審人Aを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成9年4月17日16時13分
大分県大分港
2 船舶の要目
船種船名 貨物船香椎丸 貨物船第三十二寿丸
総トン数 699トン 699トン
全長 81.215メートル 68.80メートル
機関の種類 ディーゼル機関 ディーゼル機関
出力 1,618キロワット 1,471キロワット
3 事実の経過
香椎丸は、船尾船橋型の貨物船で、A受審人ほか5人が乗り組み、空倉のまま、船首1.6メートル船尾3.2メートルの喫水をもって、平成9年4月17日16時00分大分県大分港住吉泊地内の住吉埠(ふ)頭2号岸壁を発し、鋼材積みの目的で、同港新日鐵製品岸壁に向かった。
A受審人は、出航時、船首に一等航海士と甲板長、船橋に機関長を配置し、自ら操舵操船にあたり、係留索を離したあとバウスラスターを使用して右回頭を始め、16時08分ごろ機関を極微速力前進にかけ、同時10分回頭を終え、大分港住吉西防波堤灯台(以下「西防波堤灯台」という。)から151度(真方位、以下同じ。)360メートルの地点で、針路を防波堤入口に向く335度に定め、2.8ノットの対地速力(以下、速力は対地速力である。)で進行した。
定針したころA受審人は、右舷船首15度740メートルのところに第三十二寿丸(以下「寿丸」という。)を初めて視認し、同船が住吉泊地に向けて入航中で、同船と防波堤の入口付近で出会うおそれのあることを認めたが、自船が同泊地の西側に沿って進行すれば、寿丸が同泊地の東側に向けて入航し、互いに右舷を対して航過できるものと思い、同船に対して防波堤の外で出航する自船の進路を避けるよう、警告信号を行うことなく続航した。
A受審人は、寿丸がそのうち左転して住吉泊地の東側に針路を向けると思って進行中、16時12分半同船が右舷船首15度190メートルに接近して衝突の危険を感じ、汽笛で長音一回を吹鳴し、機関を停止し続いて半速力後進としたが効なく、16時13分西防波堤灯台から115度50メートルの地点において、香椎丸は、原針路のまま、約1.5ノットの速力となったとき、その右舷船首部に寿丸の船首が前方から26度の角度で衝突した。
当時、天候は晴で風力2の北西風が吹き、潮侯は上げ潮の末期であった。
また、寿丸は、船尾船橋型の砂利採取運搬船で、土砂850立方メートルを載せ、船首4.2メートル船尾5.2メートルの喫水をもって、同月16日18時10分大阪港を発し、大分県守江港への航海の途中、入港日調整の目的で、大分港住吉泊地に向かった。
B受審人は、翌17日16時ごろ大分川の沖合1,000メートルを通過したころ、船首に一等航海士及び次席一等航海士、船橋に機関長を配置し、自ら操舵操船にあたり、機関を半速力前進として船首を徐々に左転しながら住吉泊地に向け、16時08分西防波堤灯台から359度690メートルの地点に達したとき、針路を住吉泊地の防波堤入口の中央付近に向く168度に定め、機関を微速力前進にかけて4.5ノットの速力で進行し、このころ同泊地内の岸壁を離れて回頭中の香椎丸を初認した。
16時10分B受審人は、ほぼ正船首740メートルに住吉泊地から出航する香椎丸を視認し、このまま進行すれば同船と防波堤の入口付近で出会うおそれがあることを認めたが、防波堤の入口は十分な広さがあるから、互いに左舷を対して航過しても大丈夫と思い、速やかに機関を停止するなどして防波堤の外で出航する同船の進路を避けることなく、同時10分少し過ぎ西防波堤灯台から008度380メートルの地点で、針路を同船と左舷を対して航過するよう住吉西防波堤寄りに向く181度に転じて続航した。
B受審人は、香椎丸がやがて右転して住吉東防波堤に近寄って出航することを期待しながら進行中、16時12分少し過ぎ同防波堤突端を航過したころ、同船が左舷船首11度240メートルに接近して衝突の危険を感じ、機関を全速力後進にかけて左舵一杯をとり、汽笛で短音数回を吹鳴したが効なく、原針路のまま、約1ノットの速力で前示のとおり衝突した。
衝突の結果、香椎丸は、右舷船首部外板に破口及び擦過傷を生じ、寿丸は、船首を圧壊したがのちいずれも修理された。

(原因)
本件衝突は、大分県大分港住吉泊地を出航する香椎丸と同泊地へ入航する寿丸とが、防波堤の入口付近で出会うおそれがある際、寿丸が、防波堤の外で出航する香椎丸の進路を避けなかったことによって発生したが、香椎丸が、警告信号を行わなかったことも一因をなすものである。

(受審人の所為)
B受審人は、大分港住吉泊地に向け入航中、出航する香椎丸と防波堤の入口付近で出会うおそれがあることを認めた場合、速やかに機関を停止するなどして防波堤の外で出航する同船の進路を避けるべき注意義務があった。しかるに、同人は、互いに左舷を対して航過しても大丈夫と思い、防波堤の外で香椎丸の進路を避けなかった職務上の過失により、防波堤の入口に向けたまま進行して衝突を招き、香椎丸の右舷船首部外板に破口及び擦過傷を生じさせ、寿丸の船首を圧壊させるに至った。
以上のB受審人の所為に対しては海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
A受審人は、大分港住吉泊地から出航中、入航する寿丸と防波堤の入口付近で出会うおそれがあることを認めた場合、防波堤の外で出航する自船の進路を避けるよう、警告信号を行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、互いに右舷を対して航過できるものと思い、警告信号を行わなかった職務上の過失により、防波堤の入口に向け進行して衝突を招き、前示の損傷を生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

よって主文のとおり裁決する。

参考図






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