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1998年(平成10年)

平成9年広審第42号
    件名
漁船雄気丸プレジャーボート銀河衝突事件

    事件区分
衝突事件
    言渡年月日
平成10年7月2日

    審判庁区分
地方海難審判庁
広島地方海難審判庁

織戸孝治、釜谷奬一、杉?忠志
    理事官
川本豊

    受審人
A 職名:雄気丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
B 職名:銀河船長 海技免状:四級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
雄気丸…船首に擦過傷
銀河…右舷船尾部を圧壊、船外機が海没してのち廃船、船長が全治1週間の右膝打撲傷

    原因
雄気丸…見張り不十分、船員の常務(避航動作)不導守(主因)
銀河…船員の常務(衝突回避措置)不遵守(一因)

    主文
本件衝突は、雄気丸が、見張り不十分で、漂泊中の銀河を避けなかったことによって発生したが、銀河が、衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。
受審人Aを戒告する。
受審人Bを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成8年9月7日17時50分
鳥取県鳥取港沖合
2 船舶の要目
船種船名 漁船雄気丸 プレジャーボート銀河
登録長 10.50メートル 5.95メートル
機関の種類 ディーゼル機関 電気点火機関
出力 66キロワット
漁船法馬力数 90
3 事実の経過
雄気丸は、いか一本釣り漁業に従事し、魚群探知器(以下「魚探」という。)・GPSプロッター(以下「プロッター」という。)などを装備するFRP製漁船で、A受審人が1人で乗り組み、操業の目的で、船首0.3メートル船尾1.5メートルの喫水をもって、平成8年9月7日17時00分兵庫県美方郡浜坂町の居組漁港を発し、鳥取県東伯郡羽合町沖合の漁場に向かった。
A受審人は、17時30分鳥取港灯台から034度(真方位、以下同じ。)6.2海里の地点に至り、針路を252度に定め、漁場到着時刻調整のため機関を全速力前進より少し減じ、10.0ノットの対地速力で自動操舵により、うねりを船尾方から受け船首を左右に振られながら進行した。
ところでA受審人は、後日の操業場所の参考にするため、漁場と居組漁港の間の往・復航時、魚探を作動させて進路上に探知した浅瀬をプロッターに記録することとしていた。
こうしてA受審人は、舵輪後方の操舵用椅子に腰を掛けて、前路の見張りに当たるとともに、舵輪の右方に設置した魚探の探知模様に注意を払いながら航行中、17時35分ごろ魚探に浅瀬が探知されたので、椅子から降りて膝を床に付け、舵輪左方の操舵室前壁に設置したプロッターに向かって前示の浅瀬位置の入力作業を始めた。
17時47分A受審人は、船首方約930メートルにパラシュート型シーアンカー(以下「シーアンカー」という。)を投入し、漂泊している銀河に向首しているのを認め得る状況となり、その後衝突するおそれのある態勢となって接近したが、前示入力作業に専念し、見張りが不十分で、このことに気付かず、同船を避けないまま続航中、17時50分鳥取港灯台から003.5度4.1海里の地点で、雄気丸は、原針路・原速力のままの同船の船首が銀河の右舷船尾部に前方から34度の角度で衝突した。
当時、天候は晴で風力3の北東風が吹き、波高約1.5メートルの北東のうねりがあり、衝突地点付近には弱い東流があって、潮候は下げ潮の末期であった。
また、銀河は、船体ほぼ中央部にキャビンを備え、船外機1基を装備した、汽笛を備えないFRP製プレジャーボートで、B受審人が1人で乗り組み、同人の息子1名を乗船させ、たい釣りの目的で、船首0.1メートル船尾0.5メートルの喫水をもって、同日16時鳥取港を発し、同港沖合の釣場に向かった。
B受審人は、16時15分ごろ衝突地点付近に到着し、シーアンカーを投じ、漂泊して釣りを始めたが、その後圧流されたので潮上りの後、17時30分ごろ衝突地点付近で、再び船首から直径3メートルのシーアンカーを投入し、シーアンカー引索を約25メートル延出して船首のたつに取り、シーアンカーの直上海面に浮くように調節した直径30センチメートル(以下「センチ」という。)長さ50センチの円筒形・白色の発泡スチロール製の浮きを付けた浮揚性の化学繊維製シーアンカー引揚げ索をキャビン後方のウインチに取って、船首を北東方に向け、わずかに東方に圧流されながら漂泊し、自らはキャビン右舷側後方の操縦席に腰を掛け、息子を左舷側の助手席に腰を掛けさせ、釣竿を舷側から突き出して釣りを行っていた。
17時40分ごろB受審人は、右舷船首34度1.6海里のところに、船首を左右に振りながら自船に向け来航する雄気丸を初認し、同時47分、依然、方位の変化なく衝突するおそれのある態勢となって接近する状況を視認していたが、自船が漂泊中であるから、雄気丸が、そのうち避けてくれるものと思い、その後速やかに機関を前進にかけて衝突を避ける措置をとらないまま漂泊中、同時49分ごろようやく衝突の危険を感じて機関を始動し、避航時機を測っているうち、同時50分少し前前進側にクラッチを入れるも及ばず、銀河は、前示のとおり衝突した。
衝突の結果、雄気丸は船首に擦過傷を生じたのみであったが、銀河は右舷船尾部を圧壊し、船外機が海没してのち廃船され、B受審人が、全治1週間の右膝打撲傷を負った。

(原因)
本件衝突は、鳥取港沖合において、航行中の雄気丸が、見張り不十分で、シーアンカーを投じて漂泊中の銀河を避けなかったことによって発生したが、銀河が、衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。

(受審人の所為)
A受審人は、鳥取港沖合を西行する場合、前路で漂泊中の銀河を見落さないよう、前路の見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、プロッターに向かい浅瀬位置の入力作業に専念して、前路の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、シーアンカーを投じて漂泊中の銀河に気付かず、同船を避けないまま進行して衝突を招き、雄気丸の船首に擦過傷を生じさせ、また、銀河の右舷船尾部を圧壊して同船の船外機を海没させるとともにB受審人に全治1週間の右膝打撲傷を負わせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
B受審人は、鳥取港沖合においてシーアンカーを投じて漂泊中、自船に向首接近する雄気丸を認めた場合、機関を前進にかけて衝突を避ける措置をとるべき注意義務があった。しかるに、同人は、自船が漂泊中であるから雄気丸がそのうち避けてくれるものと思い、機関を前進にかけて衝突を避ける措置をとらなかった職務上の過失により、漂泊を続けて雄気丸との衝突を招き、前示のとおり両船に損傷を生じさせ、自身も負傷するに至った。
以上のB受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

よって主文のとおり裁決する。

参考図






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