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1998年(平成10年)

平成9年横審第16号
    件名
遊漁船第八弁天丸プレジャーボートミルキウェイ5世衝突事件

    事件区分
衝突事件
    言渡年月日
平成10年7月14日

    審判庁区分
地方海難審判庁
横浜地方海難審判庁

半間俊士、長浜義昭、西村敏和
    理事官
藤江哲三

    受審人
A 職名:第八弁天丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
B 職名:ミルキウェイ5世船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
弁天丸…左舷後部に小破口
ミ号…船首部に擦過傷

    原因
ミ号…見張り不十分、船員の常務(前路に進出)不遵守

    主文
本件衝突は、ミルキウェイ5世が、転針方向に対する見張り不十分で、無難に替わる態勢であった第八弁天丸の前路に進出したことによって発生したものである。
受審人Bを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成8年5月19日17時35分
京浜港横浜区
2 船舶の要目
船種船名 遊漁船第八弁天丸 プレジャーボートミルキウェイ5世
総トン数 17トン 5.7トン
全長 21.10メートル 10.25メートル
機関の種類 ディーゼル機関 ディーゼル機関
出力 421キロワット 17キロワット
3 事実の経過
第八弁天丸(以下「弁天丸」という。)は、専ら東京湾内で営業するFRP製遊漁船で、A受審人ほか1人が乗り組み、釣り客10人を乗せ、夜釣りの目的で、船首0.3メートル船尾1.5メートルの喫水をもって、平成8年5月19日17時30分京浜港横浜第5区の平潟湾奥にある定係地を発し、同区内で同湾東方沖合にある八景島沖の釣り場に向かった。
ところで、平潟湾は、港域最南端に位置し、長さ約1,000メートル幅約300メートルの長辺が西武湾奥から東南東方に伸びるほぼ長方形をなし、プレジャーボートなどの小型船舶用の施設が設けられていた。これらの施設の一つとして同湾北岸には、横浜市金沢区野島町の野島公園内にある54メートル頂の三角点(以下「野島三角点」という。)から297度(真方位、以下同じ。)920メートルの地点を基点として120度の方向に長さ約45メートルの浮桟橋(以下「浮桟橋」という。)が岸線と平行に設けられ、その南側の中央部水域には、プレジャーボート係留用の3列の浮標列が北岸とほぼ平行に設置されていた。この3浮標列の北側の列と浮桟橋との間は可幅が約50メートルの水路となっており、同桟橋の東南東方300メートルばかりにある同湾の出入口に通じていた。
A受審人は、離岸操船の後1732分野島三角点から2961,220メートルの地点で、針路を前示水路の右側を航過するよう120度に定め、機関を3.5ノットの微速力前進にかけ、操舵室の天井にあるスカイハッチから胸より上を出して手動操舵で進行した。
17時33分少し過ぎA受審人は、左舷船首8度180メートルのところに、浮桟橋に係留していたヨットに左舷着けしているミルキウェイ5世(以下「ミ号」という。)を初認し、同時34分少し過ぎ同船を左舷船首18度80メートルに見るようになり、自船はミ号と左舷正横を25メートル隔てて無難に航過する態勢で続航していたところ、同時34分半ミ号が突然離桟して右回頭を始め、自船の前路に進出する状況となり、どうすることもできず、17時35分野島三角点から295度880メートルの地点において原針路、原速力の弁天丸の左舷後部にミ号の船首部が前方から60度の角度で衝突した。
当時、天候は晴で風力2の東風が吹き、潮候は上げ潮の末期であった。
また、ミ号は、28年ばかりのヨット歴を有するB受審人が設計事務所バンデスタッドデザインの仕様に基づき自作し、ディープキールを装備した鋼製ヨットで、同日朝、同人が平潟湾中央付近の同船の係留場所から回航し、浮桟橋に係留中の友人のヨットに出船左舷着けして整備作業を行い、17時30分ごろ同作業を終え、元の係留場所に戻るため友人2人を同乗させ、1.9メートルの最大喫水をもって、同時34分半浮桟橋を発し、ミ号の係留場所に向かった。
B受審人は、120度を向首して浮桟橋を離れるとき、右舷船尾27度45メートルのところに、自船と同方向を向首し、右舷正横を25メートル隔て、無難に航過する態勢で来航する弁天丸を視認できる状況であったが、夕刻に出航して来る船はいないものと思い、転針方向である船尾方の見張りを十分に行うことなく、同船に気付かず、前方に係留しているプレジャーボートを替わすよう、機関を2.0ノットの半速力前進にかけて進みながら右転を開始したところ、弁天丸の前路に進出する状況となり、17時35分少し前右舷方至近に同船を認めたもののどうすることもできず、ミ号は240度まで回頭して前示のとおり衝突した。
衝突の結果、弁天丸は左舷後部に小破口を、ミ号は船首部に擦過傷をそれぞれ生じた。

(原因)
本件衝突は、京浜港横浜第5区の平潟湾において、狭い水路に面した浮桟橋から離桟したミ号が、転針方向に対する見張り不十分で、湾奥に向かうために右回頭し、同水路内を無難に替わる態勢で出航中の弁天丸の前路に進出したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
B受審人は、平潟湾内の狭い水路に面した浮桟橋から離桟し、湾奥に向けて右回頭する場合、同水路内を航行する他船を見落とさないよう、見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかし、同人は、夕刻であるので後方の湾奥から出航する船はいないものと思い、前方のみを見ていて後方の見張りを怠った職務上の過失により、弁天丸に気付かず同水路内を無難に替わる態勢で出航中の同船の前路に進出して衝突を招き、弁天丸の左舷後部に小破口を、ミ号の船首部に擦過傷をそれぞれ生じさせるに至った。
以上のB受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。
A受審人の所為は、本件発生の原因とならない。

よって主文のとおり裁決する。

参考図






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