日本財団 図書館




1998年(平成10年)

平成9年仙審第70号
    件名
貨物船オリエンテノーブル貨物船セレンガ衝突事件

    事件区分
衝突事件
    言渡年月日
平成10年3月24日

    審判庁区分
地方海難審判庁
仙台地方海難審判庁

釜谷奨一、葉山忠雄、大山繁樹
    理事官
亀井龍雄

    受審人
    指定海難関係人

    損害
オ号…左舷外板に擦過傷
セレンガ…右舷ブルワーク等に損傷

    原因
オ号…気象・海象(配慮)不十分

    主文
本件衝突は、オリエンテノーブルが圧流に対する配慮不十分で、操船困難な状態に陥ったことによって発生したものである。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成9年5月3日14時38分
新潟県直江津港
2 船舶の要目
船種船名 貨物船オリエンテノーブル 貨物船セレンガ
総トン数 14,746トン 3,086トン
全長 154.35メートル 104.50メートル
機関の種類 ディーゼル機関 ディーゼル機関
出力 4,891キロワット 2,130キロワット
3 事実の経過
オリエンテノーブル(以下「オ号」という。)は、全長154.35メートル幅26.00メートル深さ13.35メートルの船尾船橋型の木材運搬専用船で、主にアメリカ合衆国アラスカ州の諸港で木材を積み、北日本諸港を揚地とする航路に就航しており、パナマ共和国の海技免状を受有するA指定海難関係人及び日本人船員1人ほかフィリピン共和国船員19人が乗り組み、山形県酒田港で一部の揚げ荷を行った後、木材5,762本を載せ、平成9年5月2日08時10分新潟県直江津港中央埠(ふ)頭の木材岸壁に出船左舷係留の状態で着岸した。
ところで同港の中央埠頭は、北西方に向けて開口部を持つコの字型をした水域の西側に位置する岸壁で、319度(真方位、以下同じ。)方向に、長さ約500メートルにわたって延びており、その東側約250メートルの対岸には中央埠頭とほぼ並行して東埠頭があり、この間の水域の水深は10ないし13メートルで、底質は泥であった。
A指定海難関係人は、着岸に先立ち、中央埠頭の西端に位置する直江津港中央ふとう灯台(以下「ふとう灯台」という。)から73度550メートルの、同水域のほぼ中央付近に船首が達して319度に向首したとき、離岸に備えて右舷錨(びょう)を投入し、その後錨鎖(びょうさ)を徐々に5節まで延出し、船尾にタグボート1隻を使用して着岸したが、その船首方約60メートルの岸壁には、出船左舷付けの状態でセレンガが着岸していた。
翌3日14時ごろオ号は、同港での揚げ荷を終えて空船となり、適宜バラストを漲水した状態で、船首4.30メートル船尾5.80メートルの喫水をもって同岸壁を発し、大韓民国釜山港に向けて出航することとした。このころ上越地方一帯は、東進する高気圧の中心が通過し終えたところで、その西方の大陸には移動性の低気圧が東進中で、等圧線間隔の狭まった区域となって新潟県西方沖合に接近し、次第に東寄りの風力が強まることを予想し得る等圧線配置となっていた。
A指定海難関係人は、同日午前中には、風力2から3であった北東風が正午には風力4になり、出航直前には突風を伴う風速20ノットの東風に達しているのを認めた。
14時18分A指定海難関係人は、出航準備を令し、同港に1隻だけ待機しているタグボートを右舷船尾に配し、船首尾の係留索をシングルアップの状態とし、右舷錨鎖の巻き込みに取り掛かろうとしたが、過去、この程度の気象状況下で出航した経験があったことから、今回も無難に出航操船ができるものと思い、出航時機を見計らうなど船体の受風圧によって生じる風下側への圧流に対する配慮を十分に行うことなく、出航準備を続行した。
14時20分A指定海難関係人は、船首尾の係留索をすべて放って同港を発し、タグボートを右舷正横に向けて曳(えい)航させると共に船首錨鎖を巻き始め、機関、舵を適宜操作して横移動を開始し、岸壁との横距離が約50メートルになったとき、機関を微速力前進にかけ、錨鎖を巻き上げながら前方に移動を開始した。
14時34分、船首部が、ふとう灯台から69度460メートルの地点に達し、セレンガの船尾部と並航したとき立ち錨となり、引き続き機関を微速力前進として同船との横距離が約20メートル隔てた状態となって進行したが、徐々に風下側に圧流され、斜航しながら同船に接近する状況となったが、これを回避することができず、操船困難な状態となって続航中、同時37分ごろ突然風速35ノットの北東方からの突風を受け、あわてて右舷錨を投入したが効なく、14時38分ふとう灯台から62度414メートルの地点において、オ号の左舷側とセレンガの右舷側とがほぼ並行に衝突した。
当時、天候は晴で、風力8の北東方からの突風が吹き、潮侯は下げ潮の初期であった。
また、セレンガは、全長104.50メートル幅14.36メートル深さ7.12メートルの船尾船橋型の貨物船で、船長Bほか31人が乗り組み、木材2,039トンを載せ、船首5.80メートル船尾6.20メートルの喫水をもって、同月1日08時50分ふとう灯台から62度400メートルの中央埠頭鉱産品岸壁に出船左舷係留の状態となって着岸して揚荷役を開始し、揚荷役作業を継続中、前示のとおり衝突した。
衝突の結果、オ号は、左舷外板に擦過傷を生じ、セレンガは、右舷ブルワーク等に損傷を生じた。

(原因)
本件衝突は、オ号が、空船状態で疾風下の新潟県直江津港中央埠頭岸壁を、船首方にセレンガが着岸した状況下、離岸後前進して出航しようとする際、船体の受風圧によって生じる圧流に対する配慮不十分で、離岸後、操船困難な状態に陥り、セレンガに向け圧流斜航したことによって発生したものである。

(指定海難関係人の所為)
A指定海難関係人が、空船状態で疾風下の新潟県直江津港中央埠頭岸壁を、船首方にセレンガが着岸した状況下、離岸後前進して出航しようとする場合、風圧によって圧流されるおそれがあったから、操船困難な状態に陥ることのないよう、出航時機を見計らうなど、圧流に対する配慮を十分に行わなかったことは本件発生の原因となる。
A指定海難関係人に対しては、その後、気象状況に十分な配慮を行って操船にあたるなど、安全運航に努めていることに徴し、勧告しない。

よって主文のとおり裁決する。

参考図






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION