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1998年(平成10年)

平成9年仙審第61号
    件名
漁船第三いづみ丸プレジャーボート翔栄丸衝突事件〔簡易〕

    事件区分
衝突事件
    言渡年月日
平成10年2月23日

    審判庁区分
地方海難審判庁
仙台地方海難審判庁

半間俊士
    理事官
副理事官 小金沢重充

    受審人
A 職名:第三いづみ丸船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
B 職名:翔栄丸船長 海技免状:四級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
いづみ丸…船首部に擦過傷
翔栄丸…船尾ブルワーク及び船外機に損傷、船長は頚椎と両膝を、同乗者1人は頚椎を、もう1人の同乗者は左第4肋骨をそれぞれ負傷

    原因
いづみ丸…見張り不十分、船員の常務(避航動作)不遵守(主因)
翔栄丸…動静監視不十分、船員の常務(衝突回避措置)不遵守(一因)

    主文
本件衝突は、第三いづみ丸が、見張り不十分で、漂泊中の翔栄丸を避けなかったことによって発生したが、翔栄丸が、動静監視不十分で、衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。
受審人Aを戒告する。
受審人Bを戒告する。
適条
海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成8年5月18日12時40分
新潟県佐渡島弾埼北西方沖合
2 船舶の要目
船種船名 漁船第三いづみ丸 プレジャーボート翔栄丸
総トン数 4.95トン
登録長 11.32メートル
全長 6.64メートル
機関の種類 ディーゼル機関 電気点火機関
出力 18キロワット
漁船法馬力数 70
3 事実の経過
第三いづみ丸(以下「いづみ丸」という。)は、一本釣り漁業等に従事するFRP製漁船で、A受審人が1人で乗り組み、同業者の友人1人を同乗させ、めばる一本釣り漁の漁場調査の目的で、船首0.30メートル船尾0.80メートルの喫水をもって、平成8年5月18日09時30分新潟県高千漁港を発し、同県佐渡島弾埼北西方沖合の漁場に向かった。
漁場に着いたA受審人は、100メートルばかりの等深線に並行して往復しながら浅い方に移動して岩礁を探し、12時34分弾埼灯台から322度(真方位、以下同じ。)2海里の地点で3回目の折り返しをして針路を232度に定め、機関を4.5ノットの半速力前進にかけ、自動操舵として漁場調査を続けた。
12時37分半A受審人は、正船首350メートルのところに漂泊している翔栄丸を視認できる状況であったが、定針時周囲を一見して他船を認めなかったことから、漁場調査に専念し、前路の見張りを十分に行うことなく、同船の存在に気付かず進行した。
12時39分A受審人は、翔栄丸と方位が変わらず衝突のおそれのある態勢で100メートルに接近していたものの、依然、見張り不十分で、同船との衝突を避けるための措置をとらないまま続航中、12時40分、いづみ丸は、弾埼灯台から310度2.1海里の地点において、原針路、原速力のまま、その船首が翔栄丸の船尾右舷側に後方から30度の角度で衝突した。
当時、天候は晴で風力3の東北東風が吹き、潮候は上げ潮の末期であった。
また、翔栄丸は、最大搭載人員8人のFRP製プレジャーボートで、遊漁の目的で、B受審人が1人で乗り組み、釣り仲間の友人2人を同乗させ、船首尾とも0.25メートルの喫水をもって、同日07時00分同県北小浦漁港を発し、弾埼北西方沖合の漁場に向かった。
漁場到着後B受審人は、時々釣り場所を変えて遊漁を行い、12時34分前示衝突地点に至って機関をかけたままクラッチを中立とし、漂泊して遊漁を続けた。
12時37分半B受審人は、同地点で船首を322度に向けていたとき、右舷正横350メートルにいづみ丸を初めて認めたが、一見して同船が替わると思い、その動静監視を十分に行うことなく、遊漁を行っていた。
12時39分B受審人は、いづみ丸と方位が変わらず衝突のおそれのある態勢で100メートルに接近していたものの、依然、動静監視不十分で、クラッチを前進とするなど衝突を避けるための措置をとらずに漂泊中、同時40分少し前至近に迫った同船を見て危険を感じ、大声で叫び、クラッチを前進としたが及ばず、翔栄丸は、わずかに前進して262度に向首し、前示のとおり衝突した。
衝突の結果、いづみ丸は船首部に擦過傷を、翔栄丸は船尾ブルワーク及び船外機に損傷をそれぞれ生じたが、のちいずれも修理され、B受審人は頚椎と両膝を、翔栄丸の同乗者1人は頚椎を、もう1人の同乗者は左第4肋骨をそれぞれ負傷した。

(原因)
本件衝突は、新潟県佐渡島弾埼北西方沖合の漁場において、漁場調査を行うために航行中のいづみ丸が、見張り不十分で、漂泊中の翔栄丸を避けなかったことによって発生したが、翔栄丸が、動静監視不十分で、衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。

(受審人の所為)
A受審人は、新潟県佐渡島弾埼北西方沖合の漁場において、1人で船橋当直にあたり、漁場調査のために航行する場合、漂泊している翔栄丸を見落とさないよう、前路の見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかしながら、同受審人は、定針時に周囲を一見して他船を認めなかったことから、漁場調査に専念し、前路の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により、翔栄丸と衝突のおそれのある態勢で接近していることに気付かず、衝突を避けるための措置をとらないまま進行して衝突を招き、いづみ丸の船首部に擦過傷、翔栄丸の船尾ブルワーク及び船外機に損傷を生じさせ、また、B受審人の頸椎と両膝に、翔栄丸の同乗者1人の頸椎に、もう1人の同乗者の左第4肋骨にそれぞれ傷を生じさせるに至った。
B受審人は、新潟県佐渡島弾埼西方沖合の漁場において、機関をかけたまま、クラッチを中立にして遊漁中、いづみ丸を初めて認めた場合、衝突のおそれの有無を判断できるよう、その後の動静監視を十分に行うべき注意義務があった。しかしながら、同受審人は、初認時に一見して同船が替わると思い、その後の動監視を十分に行わなかった職務上の過失により、いづみ丸が衝突のおそれのある態勢で接近して来ることに気付かず、衝突を避けるための措置をとらないまま漂泊して衝突を招き、前示のとおり両船に損傷を生じさせ、自らと自船の同乗者に傷を生じさせるに至った。

参考図






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