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海難審判庁裁決録(平成10年度)

 事業名 海難審判庁裁決録の刊行配布
 団体名 海難審判協会  




1998年(平成10年)

平成10年広審第56号
    件名
プレジャーボートジュン同乗者負傷事件〔簡易〕

    事件区分
死傷事件
    言渡年月日
平成10年11月30日

    審判庁区分
地方海難審判庁
広島地方海難審判庁

織戸孝治
    理事官
弓田邦雄

    受審人
A 職名:ジュン船長 海技免状:四級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
同乗者1人が約6週間の加療を要する左橈骨遠位端骨折

    原因
高速航行時の安全配慮不十分

    主文
本件同乗者負傷は、高速航行時の安全配慮が不十分であったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
適条
海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成9年8月17日14時02分
新居浜港
2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボートジュン
登録長 7.41メートル
機関の種類 電気点火機関
出力 176キロワット
3 事実の経過
ジュンは、海洋レジャー用のFRP製プレジャーモーターボートで、A受審人が1人で乗り組み、遊泳の目的で、友人5人を乗船させ、平或9年8月17日10時ごろ新居浜港多喜浜区黒島の係留地を発し、同島の東側水域で遊泳中、同島西方の新居浜港多喜浜西防波堤灯台から248度(真方位、以下同じ。)270メートルのマリンパーク新居浜の桟橋に着桟して昼食をとった後、再び遊泳のため14時00分同桟橋を発し、前示水域へ向かった。
ところで、ジュンは、船体の前半分がキャビン、後ろ半分が操縦席のあるコックピットで、キャビンの天井となる船首甲板上は、ほぼ中央部にキャビンヘ通ずるハッチが設けられ、船首端から両舷端に沿ってコックピットの前方まで高さ約60センチメートルのハンドレールが設置され、同甲板の表面は滑り止め加工が施されていた。
桟橋発航時、A受審人は、乗船者のうちB(当時19歳)を含む3人が船首甲板上に乗船させて欲しい旨の申し出があったので、Bを右舷側、他の1人を正船首端、残りの1人を左舷側の同甲板上にそれぞれ腰を下ろさせ、B同乗者は、水着を着用してサングラスを頭の上に置き、右手で右舷側ハンドレールを握っていた。
こうしてA受審人は、自ら操舵操船に当たり、約9ノットの対地速力(以下「速力」という。)で防波堤に囲まれたマリンパーク前面水域を進行し、14時02分防波堤外の新居浜港多喜浜西防波堤灯台から246度470メートルの地点に至り、目的地に向け転舵して増速する際、風浪等の影響による船体の動揺を予見できたが、同乗者が転倒することはあるまいと思い、船体動揺に対する注意喚起を同乗者に行うなどの高速航行時の安全配慮を十分にすることなく、速力を約16ノットに増速して針路を050度に定めたとき、風浪を船首方から受けるようになり、増速と風浪の影響により船体が急速に上下動し、B同乗者は、サングラスが頭から落下しそうになったので、右手をハンドレールから離して頭に持っていったとき、後方に転倒した。
当時、天候は曇で風力2の北北東風が吹き、潮候は下げ潮の末期であった。
この結果、B同乗者は、左手を甲板上に打ちつけて約6週間の加療を要する左橈骨遠位端骨折を負った。

(原因)
本件同乗者負傷は、高遠航行時の配慮が不十分であったことによって発生したものである。

(受審人の所為)
A受審人は、船首甲板上にB同乗者を乗せたまま、防波堤に囲まれた水域を出て航行する場合、風浪等の影響により船体が上下動し、前示同乗者が転倒するおそれがあったから、船体動揺に対する注意喚起を同乗者に行うなどの高速航行時の安全配慮を十分にすべき注意義務があった。ところが、同受審人は、前示同乗者が転倒することはあるまいと思い、高速航行時の安全配慮を十分にしなかった職務上の過失により、風浪に向けて増速し、B同乗者を転倒させて全治6週間の骨折を負わせるに至った。






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