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1998年(平成10年)

平成10年横審第37号
    件名
プレジャーボートペペロンチーノのり養殖施設損傷事件〔簡易〕

    事件区分
施設等損傷事件
    言渡年月日
平成10年10月28日

    審判庁区分
地方海難審判庁
横浜地方海難審判庁

半間俊士
    理事官
関隆彰

    受審人
A 職名:ペペロンチーノ船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
のり養殖施設に損傷

    原因
水路調査不十分

    主文
本件のり養殖施設損傷は、水路調査が十分でなかったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
適条
海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成9年12月30日16時02分
三重県津港
2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボートペペロンチーノ
全長 10.05メートル
機関の種類 電気点火機関
出力 279キロワット
3 事実の経過
ペペロンチーノは、航体中央部にある操舵室の前方が船室となっており、2機2軸の船内外機を装備した、最大搭載人員12人のFRP製のプレジャーボートで、クルージングの目的で、A受審人が1人で乗り組み、同乗者1人を乗せ、船首0.6メートル船尾1.1メートルの喫水をもって、平成9年12月30日15時40分三重県安芸郡河芸町のマリーナ河芸を発し、同県津港の岩田川河口南側の伊勢湾海洋スポーツセンターに向かった。
ところで、伊勢湾海洋スポーツセンターの南東方沖合の海域には、毎年11月1日から翌年4月30日までの間にのり養殖施設が、津港阿漕浦中防波堤灯台(以下「中防波堤灯台」という。)から177度(真方位、以下同じ。)200メートルの地点、同灯台から182度1,470メートルの地点、周灯台から149度1,650メートルの地点及び同灯台から123度1,050メートルの地点を順次結ぶ線に囲まれた区域に設置され、同施設の詳細な位置や同施設を示す標識等についての注意書が同スポーツセンター内に掲示されていた。
A受審人は、昭和59年に海技免状を取得し、以来趣味でマリーナ河芸を基地として、伊勢湾及び三河湾でクルージングを行い、伊勢湾海洋スポーツセンターにも何回か出入りし、同スポーツセンターの南東方沖合の海域にのり養殖施設が存在することは知っていたが、冬期には同スポーツセンターに出入りすることがほとんどなく、同施設を認めたことがなかったことから、同スポーツセンター沖合のかなり南に存在すると思い、掲示されている同施設の詳細な位置や同施設を示す標識等についての注意書を調べるなど、水路調査を十分に行わなかったため、同施設の北縁が津港南側港界線内に入り込んでいることを知らなかった。
離岸後A受審人は、操舵室において単独で手動操舵により操船にあたり、15時49分河芸港南防波堤灯台から086度3,400メートルの地点で、海岸と平行に航行するよう針路を203度に定め、機関を26.0ノットの対地速力にして南下した。
A受審人は、15時59分半中防波堤灯台から081度2,080メートルの地点に達し、伊勢湾海洋スポーツセンターに向けることとしたとき、右舷側岩田川河口近くに、レース中と思われる南下する小型ヨット群を認め、これらとの接近を避けるため、わずかに右舵をとっただけで、同ヨット群の南沖側を大きく迂回するよう旋回しながら津港南側港界線近くを進行中、右舷側から船首方に点在するのり養殖施設の外縁を示す標識に気付かず、16時02分中防波堤灯台から151度300メートルの地点において、大きく旋回しながら、270度に向首したとき、機関の異音に気付いて中立としたが、原速力のまま、のり養殖施設に乗り入れた。
当時、天候は晴で風力3の北西風が吹き、潮候は上げ潮の中央期であった。
その結果、自船に損傷が無かったものの、のり養殖施設に損傷を生じ、のり網がプロペラに絡網して航行不能になり、のち来援した同施設の漁船により絡網が解かれた。

(原因)
本件のり養殖施設損傷は、津港の伊勢湾海洋スポーツセンターに向け航行する際、水路調査が不十分で、同スポーツセンターの南東方沖合の海域に設置されたのり養殖施設に向けて進行したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
A受審人は、津港の伊勢湾海洋スポーツセンターに向け航行する場合、冬期の同スポーツセンター南東方海域の水路事情に不案内であったから、同海域に設置されているのり養殖施設に向けて進行することのないよう、同スポーツセンターに掲示されている同施設についての注意書を調べるなど、あらかじめ同海域の水路調査を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、のり養殖施設が存在することは知っていたものの、同スポーツセンター沖合のかなり南に存在するものと思い、十分な水路調査を怠った職務上の過失により、のり養殖施設の存在に気付かず進行して乗り入れ、自船には損傷が無かったものの、のり養殖施設に損傷を生じ、のり網がプロペラに絡網して航行不能になるに至った。






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