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1998年(平成10年)

平成10年横審第64号
    件名
漁船第八十八真賀丸機関損傷事件〔簡易〕

    事件区分
機関損傷事件
    言渡年月日
平成10年12月10日

    審判庁区分
地方海難審判庁
横浜地方海難審判庁

河本和夫
    理事官
相田尚武

    受審人
A 職名:第八十八真賀丸機関長 海技免状:五級海技士(機関)(機関限定・旧就業範囲)
    指定海難関係人

    損害
右舷発電機及び左舷補機セルモーター冠水、右舷発電機の電機子巻線、励磁器巻線など焼損

    原因
雑用ポンプ漏水箇所の点検不十分

    主文
本件機関損傷は、雑用ポンプ漏水箇所の点検が十分でなかったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
適条
海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成9年10月14日23時14分
ミクロネシア連邦ポナペ島東方
2 船舶の要目
船種船名 漁船第八十八真賀丸
総トン数 19.96トン
登録長 16.63メートル
機関の種類 過給機付4サイクル6シリンダ・ディーゼル機関
出力 478キロワット
回転数 毎分1,350
3 事実の経過
第八十八真賀丸は、昭和50年5月に進水した、南方漁場でまぐろ延縄漁業に従事するFRP製漁船で、機関室後方中央に主機が、主機前部の両舷に発電機及び同機駆動原動機(以下「補機」という。)、両補機の間の船首側に1号雑用ポンプ、船尾側に2号雑用ポンプがそれぞれ据え付けられていた。
発電機は、両舷機ともに定格容量が40キロボルトアンペアの自己通風防滴型、各補機はセルモーター始動武のディーゼル機関で、右舷補機は同機船尾側の発電機を直結駆動、左舷補機は同機左舷側の発電機をベルト駆動しており、2号雑用ポンプと、右舷発電機及び左舷補機セルモーターとの距離がそれぞれ約30センチメートルで、同ポンプから海水が噴出するとそれぞれが冠水するおそれがあった。
2号雑用ポンプは、冷凍機冷却水及び甲板雑用の、出力1.5キロワットの電動機駆動、総揚程10メートル、吐出量毎時25立方メートルのうず巻ポンプで、ケーシングがねずみ鋳鉄製、軸封装置がグランドパッキン式のものであった。
A受審人は、平成8年8月本船を購入後機関長として乗り組み、翌9年4月ごろ2号雑用ポンプのグランドパッキンを増し入れしたとき、パッキン押えを片締め状態としたまま運転を続けるうち、漏水量が増加するようになったのを認めたが、まだしばらくは大丈夫と思い、漏水箇所を点検することなく、パッキン押え挿入部附近のケーシングに亀(き)裂が生じていたのに気付かないまま、同ポンプを連続運転とした。
こうして、本船は、A受審人ほか8人が乗り組み、同9年9月30日ミクロネシア連邦ポナペ港を出港し、翌10月2日ポナペ島東方の漁場に至って操業を始め、同月14日右舷発電機を運転して操業中、2号雑用ポンプケーシングの亀裂が拡大して海水が噴出し、右舷発電機及び左舷補機セルモーターが冠水し、同日23時14分北緯06度29分東経159度00分D地点において、右舷発電機の電機子巻線、励磁器巻線などが焼損して異音を発した。
当時、天候は晴で風力1の東風が吹き、海上は穏やかであった。
船橋当直中のA受審人は、機関室に赴いて右舷発電機が火花と煙を発しているのを認め、まもなく停電し、左舷発電機に切り替えようとしたが、セルモーターが火花を発したので始動をあきらめ、蓄電池電源のみにてポナペ港に入港した。
損傷の結果、本船は右舷発電機を新替え、左舷補機セルモーター電路の短絡部が修理された。

(原因)
本件機関損傷は、雑用ポンプからの漏水量が増加したのを認めた際、漏水箇所の点検が不十分で、亀裂が生じていた同ポンプケーシングが修理されず、同亀裂が拡大して海水が噴出し、発電機及び補機セルモーターが冠水したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
A受審人は、雑用ポンプからの漏水量が増加したのを認めた場合、漏水箇所から海水が噴出して発電機及び補機セルモーターが冠水することのないよう、漏水箇所を点検すべき注意義務があった。しかし、同受審人は、まだしばらくは大丈夫と思い、漏水箇所を点検しなかった職務上の過失により、発電機の焼傷及び補機セルモーター電路の損傷をそれぞれ生じさせるに至った。






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