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1998年(平成10年)

平成9年仙審第51号
    件名
漁船第三十五壽丸機関損傷事件

    事件区分
機関損傷事件
    言渡年月日
平成10年8月26日

    審判庁区分
地方海難審判庁
仙台地方海難審判庁

安藤周二、供田仁男、今泉豊光
    理事官
上中拓治

    受審人
A 職名:第三十五壽丸機関長 海技免状:四級海技士(機関)(機関限定)
    指定海難関係人

    損害
過給機のロータ軸の折損及びブロワの損傷等

    原因
過給機の整備の際の点検不十分(ロータ軸のバランス)

    二審請求者
理事官小野寺哲郎

    主文
本件機関損傷は、主機付過給機のロータ軸のバランス点検が十分でなかったことによって発生したものである。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成8年1月27日19時30分
福島県塩屋埼北東方沖
2 船舶の要目
船種船名 漁船第三十五壽丸
総トン数 99トン
全長 42.17メートル
関の種類 過給機付4サイクル6シリンダ・ディーゼル機関
出力 794キロワット
回転数 毎分610
3 事実の経過
第三十五壽丸(以下「壽丸」という。)は、平成元年3月に進水した大中型まき網漁業船団付属の鋼製探索船で、可変ピッチプロペラ推進装置を有し、主機として株式会社新潟鉄工所(以下「新潟鉄工所」という。)が製造した6MG27HX型ディーゼル機関を備え、同機には同社製造のニイガタ・M.A.N.-B&WNR24/R型と称す排気ガスタービン過給機(以下「過給機」という。)を装備していた。
主機は、定格出力1,544キロワット及び同回転数毎分750(以下、回転数は毎分のものとする。)の原機に負荷制限装置を付設して計画出力794キロワット及び同回転数610とし、漁船法馬力数590としたものであったが、就航後に同装置が取り外され、航海全速力前進時の回転数を740までとして運転されていた。
過給機は、輻流タービン、遠心式ブロワ、両者を結合する径37ミリメートル(以下「ミリ」という。)のクロムモリブデン鋼製(種類SCM440)ロータ軸、同軸を支持する浮動スリーブ式軸受及びケーシング等から成り、ラビリンスリングが同軸に嵌(かん)合されていた。また、ロータ軸は、油圧工具使用によるブロワ抜出し整備用の油通路として、ブロワ側軸端から軸心に径4ミリの穴が開けられていて、同軸端から103ミリのところで同穴底と直角に交差する径3.2ミリの油溝穴が加工されていた。
ところで、過給機のロータ軸は、定格回転数36,000のものであり、定期点検の標準として、4年ごとに、または32,000時間の運転を経過するごとに機関メーカー側による専門的な動的バランス及び探傷等の点検を必要とすることが取扱説明書で指示されていたが、定期検査等の都度、受検工事が地元の業者に請け負われ、各部の掃除及び目視点検など一定の整備が行われており、同指示に基づく定期点検が実施されていなかったのが実情であった。
A受審人は、平成5年1月に壽丸の機関長として乗り組み、同7年3月下旬第1種中間検査の受検工事の際に業者による過給機の整備が実施されたとき、就航以来24,000時間ばかり使用されていたロータ軸のラビリンスリング嵌合部が偏摩耗し、運転を続けるうちに同軸の動的不釣合力が増大して繰返し回転曲げ応力により材料の疲労するおそれのある状況となっていたが、同機の整備がいつものとおり実施されているから大丈夫と思い、機関メーカー側に依頼のうえ同軸の動的バランス及び探傷等の点検を行わなかったので、偏摩耗が発見されないままに同軸が復旧され、その後主機を運転して出漁を繰り返した。
こうして、壽丸は、A受審人ほか7人が乗り組み、操業の目的で、網船ほか2隻の僚船と船団を組み、船首2.2メートル船尾4.0メートルの喫水をもって、同8年1月27日02時00分千葉県銚子港を発し、同港沖の漁場に至って操業しているうち、網船の漁網が破損し、修理のため、宮城県石巻港に向かうこととなり、12時40分同漁場を発し、主機を回転数735にかけ、プロペラ翼角を20度として14ノットの対地速力で航行中、過給機のロータ軸が材料の疲労した油溝穴部に亀(き)裂を生じ、19時30分小良ヶ浜灯台から真方位137度6.5海里の地点において、同軸が亀裂の進行により折損し、給気不足の状態となって主機の回転数が低下した。
当時、天候は晴で風力1の北風が吹き、海上は平穏であった。
A受審人は、船室で主機の運転の変調に気付き、機関室に急行し、主機を停止して点検したが、過給機の異常箇所を特定するに至らないまま、主機の運転を継続することができなくなり、その旨を船長に報告した。
壽丸は、網船側の指示を受けて僚船により石巻港に曳(えい)航され、機関メーカーが過給機を精査した結果、ロータ軸の折損及びブロワの損傷等が判明し、各損傷部品の交換修理が行われた。
また、過給機の同型機における油溝穴部から生じたロータ軸の折損については、これが初めてであった。

(原因)
本件機関損傷は、過給機の整備が行われた際、ロータ軸のバランス点検が不十分で、同軸が偏摩耗したまま運転されて動的不釣合力が増大し、材料が曲げ応力により疲労したことによって発生したものである。

(受審人の所為)
A受審人が、過給機の整備が行われた際、ロータ軸のバランス点検が不十分で、同軸のラビリンスリング嵌合部が偏摩耗したまま運転を続けたことは、本件発生の原因となる。
しかしながら、このことは、業者による過給機の一定の整備が実施されていたこと、また、同型機における油溝穴部から生じたロータ軸の折損についてこれが初めてであった点に徴し、A受審人の職務上の過失とするまでもない。

よって主文のとおり裁決する。






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