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1998年(平成10年)

平成9年横審第105号
    件名
漁船第三十五運祐丸機関損傷事件〔簡易〕

    事件区分
機関損傷事件
    言渡年月日
平成10年3月6日

    審判庁区分
地方海難審判庁
横浜地方海難審判庁

川村和夫
    理事官
安部雅生

    受審人
A 職名:第三十五運祐丸機関長 海技免状:五級海技士(機関)(機関限定)
    指定海難関係人

    損害
過給機タービン入口ケース、シリンダライナのOリング及びシリンダヘッド冷却清水案内金具のOリング等にそれぞれ損傷

    原因
主機冷却清水温度上昇警報装置の作動確認及び冷却海水流量の確認不十分

    主文
本件機関損傷は、主機冷却清水温度上昇警報装置の作動確認及び冷却海水流量の確認が十分でなかったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
適条
海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成6年7月12日08時40分
千葉県小湊漁港南西方沖合
2 船舶の要目
船種船名 漁船第三十五運祐丸
総トン数 99トン
機関の種類 過給機付4サイクル6シリンダ・ディーゼル機関
出力 1,029キロワット
回転数 毎分750
3 事実の経過
第三十五運祐丸は、さば一本釣り漁業に従事する鋼製漁船で、主機として株式会社新潟鉄工所が製造した6MG25CX型と称する間接冷却式ディーゼル機関を備え、操舵室に遠隔操縦装置を装備していた。
主機の冷却清水は、清水冷却器から直結清水ポンプにより吸引加圧され、主機各部を冷却したのち同冷却器に戻り、冷却海水は、直結ポンプにより船底の海水吸入弁からこし器を経て吸引加圧され、空気冷却器を冷却したうえ、2方向に分流し、一方が減速機潤滑油冷却器に至り、他方が更に2方向に分かれ、一方が船尾管を冷却し、他方が、潤滑油冷却器、清水冷却器を冷却したのち船外へ排出されるようになっていた。
A受審人は、昭和62年1月本船に乗り組み、機関の運転に当たり、平成6年5月25日さば一本釣り漁業を切り上げて千葉県小湊漁港に入港し、主機を止め、海水吸入弁及び冷却清水系統の諸弁をそれぞれ閉鎖して、吸、排気弁の摺(すり)合わせ、過給機開放掃除等の整備にかかったが、冷却清水温度上昇警報装置の作動確認を行わず、同装置のセンサが破損していることに気付かないまま整備を終えた。
同年7月12日本船は、さんま棒受網漁業出漁前の船体整備の目的で、同県館山港に回航することとなり、A受審人は、07時40分機関室において主機を始動したが、まさか冷却海水が揚がらないようなことはあるまいと思い、計器盤の冷却海水圧力計を見るなどして冷却海水流量が適量となっているかどうかを確認することなく、海水吸入弁を閉鎖したまま、船尾上甲板で係留索の解らん作業に従事したのち、船橋で主機の遠隔操縦に当たった。
こうして本船は、A受審人ほか3人が乗り組み、08時10分小湊漁港を発し、主機回転数を毎分730として進行中、冷却清水温度が異常に上昇したが、冷却清水温度上昇警報装置が作動せず、主機各部が発熱し、同受審人が船長と交代して機関室に戻ったところ、08時40分小湊港東防波堤灯台から真方位225度4.5海里の地点において、シリンダヘッド冷却清水出口管フランジ合わせ面から蒸気が噴出しているのを認め、主機の運転を停止した。
当時、天候は霧で風はほとんどなく、海上は穏やかであった。
その結果、過給機タービン入口ケース、シリンダライナのOリング及びシリンダヘッド冷却清水案内金具のOリング等にそれぞれ損傷を生じた。

(原因)
本件機関損傷は、主機を整備した際、冷却清水温度上昇警報装置の作動確認が不十分で、同装置のセンサが破損したままになっていたことと、主機を始動した際、冷却海水流量の確認が不十分で、海水吸入弁が閉鎖されたまま運転され、主機各部が過熱したこととによって発生したものである。

(受審人の所為)
A受審人は、主機を始動した場合、運転中主機が過熱することのないよう、冷却海水圧力計を見るなどして冷却海水流量が適量となっているかどうかを確認すべき注意義務があった。ところが、同人は、まさか冷却海水が揚がらないようなことはあるまいと思い、冷却海水流量が適量となっているかどうかを確認しなかった職務上の過失により、海水吸入弁が閉鎖されたまま運転し、主機各部を過熱させ、過給機タービン入口ケース等に損傷を生じさせるに至った。






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