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1998年(平成10年)

平成10年門審第42号
    件名
貨物船栄晃丸運航阻害事件

    事件区分
運航阻害事件
    言渡年月日
平成10年8月12日

    審判庁区分
地方海難審判庁
門司地方海難審判庁

吉川進、畑中美秀、西山烝一
    理事官
内山欽郎

    受審人
A 職名:栄晃丸機関長 海技免状:四級海技士(機関)(機関限定)
    指定海難関係人

    損害
なし

    原因
燃料系統の点検不十分

    主文
本件運航阻害は、燃料系統の点検が不十分で、主機の再始動が試みられなかったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成9年3月17日12時20分
紀伊水道
2 船舶の要目
船種船名 貨物船栄晃丸
総トン数 475.40トン
全長 64.50メートル
機関の種類 過給機付4サイクル6シリンダ・ディーゼル機関
計画出力 735キロワット
回転数 毎分390
3 事実の経過
栄晃丸は、昭和57年2月に進水した鋼製貨物船で、主に鉄鋼滓(さい)や石灰の運搬に従事し、主機として株式会社槇田鉄工所が製造したGNLH6275型と称するディーゼル機関と油圧クラッチ付逆転減速機を装備していた。
主機は、船首側の動力取出軸からベルトを介して225ボルト50キロボルトアンペアの三相交流発電機(以下「軸発」という。)を駆動し、燃料として出入港時にはA重油を、また航海中にはA動油とC重油との混合燃料油(以下「ブレンド油」という。)をそれぞれ使用していた。
船内の電源は、航海中に主機の回転数が毎分300(以下、回転数は毎分のものとする。)以上であれば軸発で、また回転数300以下の航海中及び出入港時には補機が駆動する120キロボルトアンペアの2号発電機で、そして動力を使用しない停泊中には別の補機が駆動する20キロボルトアンペアの3号発電機でそれぞれ給電するようになっていた。
ブレンド油は、A重油とC重油が3対7の比率で混合されたもので、セットリングタンクで静置されたのち濾(ろ)過式清浄器を経てフレンド油サービスタンクにためられ、内蔵の電気ヒータで加熱されるようになっていたが、停泊中は出港間際まで3号発電機が運転され、容量不足で同ヒータに給電できなかったので、出港時の同サービスタンク温度が低下しがちであった。
主機の燃料配管は、機関室上段のA重油サービスタンク及びブレンド油サービスタンクから出た両配管が燃料切替コックで合流し、一次燃料こし器及び燃料流量計(以下「流量計」という。)を通って機関室下段の燃料供給ポンプ(以下「供給ポンプ」という。)に入り、その後燃料加熱器、二次燃料こし器を経て燃料噴射ポンプ入口管に導かれるもので、更に戻り配管として、同入口管の船尾側からばね式圧力弁を経て両サービスタンクと同じ高さに設置されたエアセパレータと呼ばれる緩衝タンクに入り、再び流量計出口に合流する配管が備えられ、供給ポンプとばね式圧力弁とで一定の圧力が燃料噴射ポンプ入口に加わるようになっていた。
ところで、流量計は、燃料油の流れで2個のオーバル歯車を回転させて計量するもので、高粘度の燃料や異物によって抵抗が大きいと回転が停止し、供給ポンプヘの流れを止めてしまうおそれがあったが、そのようなときに燃料の供給を再開するためのバイパス弁が備えられていた。
A受審人は、本船の建造直後から機関士として乗船し、平成2年から機関長として機関の運転と整備に従事し、その間に過給機の軸受が損傷した経験があり、また本件前の休暇中に過給機に異常な音が生じたことを同僚から聞いていたので、漠然と過給機に不安を抱いていた。
栄晃丸は、平成9年3月17日10時過ぎ和歌山下津港和歌山区の住友金属工業株式会社和歌山製鉄所内岸壁で徐冷滓1,120トンの積荷作業を終了し、10時20分主機を始動し、A受審人ほか3人が乗り組み、船首3.35メートル船尾4.40メートルの喫水をもって、同時30分同港を発し、高知県須崎港に向かった。
A受審人は、船尾配置での作業を終えて機関室に入り、主機が回転数325になっているのを確かめて10時35分船内電源を2号発電機から軸発に切り替え、さらに主機の燃料切替コックをブレンド油サービスタンク側に切り替えて燃料加熱器及びブレンド油サービスタンクヒータの両スイッチを入れて加熱を開始し、そのときに流量計の針の回転を認めた。
栄晃丸は、油温が低下していたブレンド油サービスタンクの温度上昇が緩やかで、流量計の回転抵抗が大きくなっていたところ、オーバル歯車に異物が絡んで流量計の回転が停止し、その後エアセパレータと配管の燃料油が底をつき、12時15分供給ポンプの吐出圧力が低下して燃料噴射ポンプの吐出燃料に空気が混入し、主機の回転数が低下し始め、過給機ブロアに軽いサージング音が生じたので、機関室当直中であったA受審人が直ちに2号発電機を始動して電源を切り替え、12時20分伊島灯台から真方位040度14.5海里の地点で操縦ハンドルを下げて主機を停止した。
主機は、流量計のバイパス弁が開かれると供給ポンプに燃料が入り、運転再開が可能となる状況であったが、A受審人は、過給機に異状が生じたと思い込み、その後供給ポンプの吐出圧力計を確認するなど燃料系統を点検することなく、燃料の供給再開と主機の始動を試みないまま、運転不能と判断した。
当時、天候は晴で風力4の北風が吹いていた。
栄晃丸は、曳航業者に救助を依頼し、その後来援した引船に曳航され、造船所で主機の燃料配管のブレンド油がA重油に入れ替えられて空気抜きが行われ、点検のため流量計と過給機が開放されたが、流重計の汚れ以外は異状がなかった。

(原因)
本件運航阻害は、流量計の停止で主機の回転数が低下し、いったん主機が停止された際、燃料系統の点検が不十分で、供給ポンプの吐出圧力の低下が確認されず、主機の再始が試みられなかったことによって発生したものである。

(受審人の所為)
A受審人は、航海中に主機の回転数が急に低下して過給機に軽いサージング音が生じたのを聞き、主機をいったん停止した場合、回転数が低下していくうちに過給機は鳴らなくなったのであるから、低速での運転が確かめられるよう、燃料供給圧力など燃料系統を点検すべき注意義務があった。しかしながら、同受審人は、過給機に異状が生じたものと思い込み、燃料系統を点検しなかった職務上の過失により、主機の再始動を試みないまま運転不能と判断し、引船に曳航を依頼する事態に至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

よって主文のとおり裁決する。






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