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災害ボランティアについて

消防庁防災課災害対策官(兼)課長補佐 吉田 悦教

 

1 災害ボランティア活動の高まり

 

平成7年1月17日に発生した阪神・淡路大震災の際には、全国各地から若者を中心に大勢の人が被災地に駆けつけ、被災者の救援活動を行い、災害時のボランティア活動(以下「災害ボランティア活動」という。)がクローズアップされた(地震発生後3ヶ月で延べ117万人)。

また、平成9年1月のナホトカ号流出油災害においても、多くの人たちが、ボランティア活動として、被災地の日本海沿岸で漂着油の回収作業にあたった(被災後3ヶ月で27万人)。

この結果、大規模災害時には、防災関係機関の対応能力を、上回る応急対策等のニーズが発生することから、自ら行う災害への備えや自主防災組織による活動と併せて、災害ボランティア活動が不可欠である、ということが改めて認識されたということができる。

災害ボランティア活動については、定まった定義はない。一般的には、ボランティア活動が、「様々な社会的活動に自己の所有する技能や時間を自主的に無報酬で提供する個人や団体の活動」をさすといわれていることから、ここでは、災害ボランティア活動を、「ボランティア活動のうち、災害発生時に、被災地方公共団体や被災者の支援を目的として行われるもの」と定義する。

 

2 災害ボランティア活動の分類

 

災害ボランティア活動は非常に多様である。例えば、阪神・淡路大震災での活動範囲をみてみると、救出・救護、医療、救援物資の仕分けや運搬、高齢者の介護、建物の危険度判定、外国人・聴覚障害者への通訳や手話、物資の輸送活動、避難所の運営等、数多くの分野において、その活動がなされている。

こういった災害ボランティア活動は、大きくいって2つの類型に分類することが可能である。

第1は、災害時に自らの有する専門知識や技能を生かして活動するものであり、専門ボランティア又は専門職ボランティアと呼ばれているものに係る活動である(別紙1)。

第2は、災害時に自分の時間や労力を提供し、活動するものであり、一般ボランティアと呼ばれいるものに係る活動である。

なお、阪神・淡路大震災では、一般ボランティアに携わるべく、被災地外から被災地に多くの人たちが集まったが、多数の人が何の準備もなく1ヶ所に集まったうえ、被災者のニーズとのマッチングや活動のコーディネートがうまくいかなかった例も多かった。そのため、せっかくの善意が生かされなかったばかりか、かえって被災地に負担をかけることになったという問題も生じた。

こうしたことから、災害ボランティアのコーディネーターの育成や災害ボランティアセンターの設置の必要性が認識されることとなった。

 

3 行政と災害ボランティア

 

国及び地方公共団体は、災害の発生の予防、拡大の防止のため、「ボランティアによる防災活動の環境整備その他国民の自発的な防災活動の促進に関する事項」の実施に努めることとされている(災害対策基本法第8条第2項第13号)。

都道府県及び市町村では、災害ボランティアの登録制度を行っている(平成10年4月1日現在19都道府県143市町村)。また、災害ボランティアに関する講習制度や災害ボランティア活動中の事故に対する保険の負担を行っている団体もある。

国においては、閣議決定により、1月17日を「防災とボランティアの日」、1月15日から21日までを「防災とボランティア週間」と定め、これに関する普及啓発に努めている。

 

 

 

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