日本財団 図書館


第111条第1項では、まず、「沿岸国の権限ある当局は、外国船舶が自国の法令に違反したと信じるに足りる十分な理由があるときは、当該外国船舶の追跡を行うことができる」として、追跡権行使の際の被追跡船舶に係る要件を定め、つぎに、「この追跡は、外国船舶又はそのボートが追跡国の内水、群島水域、領海又は接続水域にある時に開始しなければならない」として、追跡開始時の被追跡船舶等の位置を規定し、さらに、追跡は「中断されない限り、領海又は接続水域の外において引き続き行うことができる。領海又は接続水域にある外国船舶が停船命令を受ける時に、その命令を発する船舶も同様に領海又は接続水域にあることは必要でない」として、継続要件と停船命令を発する追跡船舶の位置を定めている。
続けて、同項において、「外国船舶が第33条に定める接続水域にあるときは、追跡は、当該接続水域の設定によって保護しようとする権利の侵害があった場合に限り、行うことができる」として、接続水域からの追跡権を定め、また、同条第4項において、追跡する側の追跡開始要件として、「追跡は、被追跡船舶又はそのボート若しくは被追跡船舶を母船としてこれと一団となって作業する舟艇が領海又は、場合により、接続水域、排他的経済水域若しくは大陸棚の上部にあることを追跡船舶がその場における実行可能な手段により確認しない限り、開始されたものとされない。追跡は、視覚的又は聴覚的停船信号を外国船舶が視認し又は聞くことができる距離から発した後にのみ、開始することができる」と規定する。その他、同条第2項では、排他的経済水域又は大陸棚への追跡権の準用を定め、第3項では追跡権の消滅時期を、第5項では追跡権を行使し得る船舶又は航空機の要件を、第6項では追跡が航空機によって行われる場合の要件を、そして、第7項では拿捕された船舶の公海等の通過を理由とする釈放要求の否定をそれぞれ規定している。

(2) 国内法上の追跡権規定

他方、国内法では、追跡権に係る規定は、国連海洋法条約を受けて1996年に改正された「領海及び接続水域に関する法律(旧名・領海法)」(以下「新領海法」と略す。)と同年に制定された「排他的経済水域及び大陸棚に関する法律」(以下「EEZ法」と略す。)の中に設けられ、以下のように定められている。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION