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また、早期釈放のために提供されたボンドは、捜査、起訴、公判という刑事手続の進行を担保するものとして、違反者が取調べなどのために求められた出頭に応じなかった場合、または証拠物としての押収物の提供に応じなかった場合に、担保金を国庫に帰属せしめ、刑事手続の進行を妨げたことに対する制裁とするものである44。これは、出頭しない違反者にとって、事実上、罰金と同様な効果を持つこととなる45。もっとも、このことからただちにわが国のボンドの性格を処罰(罰金)の確保ということはできない。

刑事手続は、違反者の出頭(刑訴法第285条第2項・286条参照)と十分な証拠が提出されることによって進行するが、EZ漁業法や海洋汚染防止法に基づき提供される担保金は、違反者の釈放と押収物の返還により果たされなくなる可能性のある刑事手続における出頭確保を担保するものとして主務大臣が提供を受け、保管するというもので、刑事手続を代替するものではないと解される。

44 海上保安官が求めた出頭期日には出頭したが、その後検察官から求められた再出頭の期日に不出頭であった場合、担保金制度が刑事手続の円滑な進行をはかることを目的としているとするなら、再出頭を求めた期日に出頭しなかったときにも、担保金は国庫に帰属すると解される。小倉・前掲解説118頁。また、同様に、裁判所により公判期日が指定されて出頭しなかった場合も、担保金は国庫に帰属すると解される。

45 海洋汚染防止法違反については、刑罰として罰金刑が予定されている。これは、国連海洋法条約第230条が海洋汚染について金銭上の罰のみを科すことができるとするものを受けた規定であるといえる。しかし、わが国においては、罰金が完納できないときは、労役場留置を言い渡すことができる(刑法第18条)が、国連海洋法条約の趣旨を超えるものではないのか検討を要しよう。

 

 

 

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