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旗国による停止要請からみたボンドと排他的経済水域の環境の保護

横浜国立大学教授  田中 利幸

 

1 はじめに

 

(1) 国連海洋法条約は、排他的経済水域において、外国船舶が沿岸国の法令に違反して漁業を行い、あるいは国際的基準に適合する沿岸国の法令に違反して船舶に起因する海洋環境の汚染を生じさせたとき、沿岸国が一定の手続きを違反船舶に対して実施することができる旨定め、同時に、ボンド(保証金)の提供によって当該船舶が早期に釈放される制度を定めている。船舶起因汚染の場合、海洋環境の保護及び保全に関する第12部の、執行に関する第6節と保障に関する第7節で、そのことが定められている。

わが国の国内法は、排他的経済水域における外国船舶による漁業法令違反に対しては、ボンド(保証金)の提供により早期に釈放する制度を、排他的経済水域制度以前の漁業水域に関する暫定措置法の時代から、これを採用、実施してきた。そして、排他的経済水域における船舶起因汚染に対しても、1996年7月、国連海洋法条約を批准し、排他的経済水域制度を採用し、国内法を整備するに際して、これを、海洋汚染および海上災害の防止に関する法律(以下、海洋汚染防止法)の改正の中に盛り込んだ。そして、以降2年余りで30件余、年平均15件を超える適用例を、排他的経済水域における汚染に関して、数えている。

(2) ところが、排他的経済水域における外国船舶の汚染に対する、沿岸国の手続きの遂行とボンド(保証金)の徴収については、国連海洋法条約が、第12部第7節の保障措置に関する規定の中で、一定の制限を設けている。それは、第228条の次のような規定である。

 

 

 

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