日本財団 図書館


第4編

 

アジア諸国の公務員制度を考える視点

 

1 はじめに―比較するには何を基準とするのか―

アジアには数多くの国があるが、今回の調査研究の対象となったのは、地域的にみて、

東北アジア

台湾

東南アジア

フィリピン共和国、インドネシア共和国、ブルネイ・ダルサラーム国、ラオス人民民主共和国、タイ王国、マレーシア、シンガポール共和国、ミャンマー連邦

南アジア

インド、ネパール王国、パキスタン・イスラム共和国

の11国、1地域1)である。

それぞれの国の持つ公務員制度は、その国の歴史、風土、国民性、社会情勢、教育事情等によって培われてきたものであって、長い歴史的経緯を持っており、各国ともそれぞれの特徴を持っている。

そこで、何をもって比較公務員制度の基準にするかは非常に難しいところである。我が国の行政学においては、欧米諸国で形成された近代的な行政モデルとの比較において、日本の行政を理解するという方式を取ってきており、公務員制度においても同様であった。たとえば、人事院職員による外国公務員制度研究会編「欧米国家公務員制度の概要─米英独仏の現状─」2)では、米英独仏の公務員制度を各国ごとに、1 公務員の定義及び種別 2 中央人事行政機関 3 官職の分類 4 任用 5 給与 6 勤務時間及び休日 7 休暇 8 能率 9 健康及び安全 10 服務 11 不利益処分及び不服申立て 12 人事記録 13 職員団体 14 退職年金 15 災害補償 16 罰則 という項目で整理されており、諸外国の公務員制度と我が国の公務員制度とを比較することによって我が国の公務員制度を理解しようとするものである。

今回の調査研究報告書においても、11国、1地域の公務員制度を同様な方法で整理している。なお、各国の公務員制度の「概説」では、それぞれの国の公務員制度を生み出してきた諸要素─地理的条件、人口、民族、宗教、言語、歴史、政治統治機構、経済、労働、教育、防衛、警察、消防、行政組織等を記述して、公務員制度の理解を容易ならしめるようにしている。

ところで、海外での比較行政研究では、開発途上国の行政を、国家が国内における他の社会集団の影響を受けることがないという意味で自律性が高く「強い」とみ、しかし、政策形成能力は低いので「弱い」とみ、一見相反する特徴がみられるとしている3)

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION