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第6章 給与

 

公務員は任官された役職・地位に応じた月給と手当を得る。現在の給与表は12ランクに区分されている(表5)。1989年の給与改訂により、公務員は原則として同一ランク内において、2年に1度昇給を受けることとなった。但し、対象期間中に罰則を受けた場合は、昇給が延伸されることがある。昇給幅は25チャットから50チャットである。

公務員給与の改訂は1948年と1972年の2度行われたのみであったが、SLORCが政権を掌握した後、1989年と1992年に2度給与改定(賃上げ)が行われた。これは公務員の待遇を改善することで、彼らの勤労意欲を高め、政策実施能力の向上を図る試みであった。しかし、1992年の給与改定を最後に、その後公務員給与は据え置かれている。一方で、経済自由化の進展の中で、1990年代に入り物価は毎年20%〜30%の水準で上昇しており、固定給の公務員の生活は年々苦しくなっている。俸給表の最高ランク(局長クラス)でさえ、月給2500チャットである。これは、公定レート(1ドル=約6チャット)で換算すれば400ドル以上となるが、1998年8月の実勢レート(1ドル=約360チャット)では7ドルに過ぎない。一般の公務員は公定レートでの輸入物資へのアクセスはないため、後者が実際の購買力に近い数字と言える。また、1996年のヤンゴン市家計調査によれば、平均的5人家族1ヶ月の生計費は1万チャットを超えている。局長クラスの給与でさえ、1ヶ月の生計費の4分の1に満たないというのが、公務員給与の実態である。

公務員は給与の他に、米・食用油・石鹸・ガソリンなどを一定量、市場価格より安く購入することができる。ヤンゴン市内に勤務する公務員には、通勤用のバス・チケットが無料で支給される。地位に応じて、官舎・公用車・携帯電話なども与えられる。しかし、自由化の中で、こうしたフリンジ・ベネフィットは削減される傾向にあり、公務員待遇を一層悪化させている。(11)また、このような公務員の給与の低さは、賄賂や汚職の原因となっているとも指摘されており、深刻な問題である。

 

(11) 例えば、筆者がヒヤリングを行ったあるスタッフ・オフィサー(官報掲載公務員のエントリー・レベル、在勤10年以上)の本俸は1,650Kであるが、この他に毎月12ピー(約20キログラム)のコメを廉価(1ピー=20チャット、市場価格は1998年6月で1ピー=90チャット)で配給される。以前はコメの他に、食用油や石鹸の配給があったが、現在は2年に1度程度しかない。また、国営スタンドにおけるガソリンの廉価販売もあったが、1997年に政府販売価格が大幅に引き上げられたため、現在は政府価格と市場価格の差がほとんどなくなっている。但し、フリンジ・ベネフィットの規模や種類は、各省庁あるいは国有企業によって異なるようである。

 

 

 

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