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イ. 産業別

産業別にみると「減らした」割合の高い産業は、「運輸・通信業」の78%(昨年調査72%)と「金融・保険業、不動産業」の71%(同76%)で両者とも昨年と同様に7割を超え、経営基盤強化のための雇用調整が引き続き行われているためと思われる。また、「農林漁業、鉱業、建設業」は61%(同52%)と9ポイント増加したが、この中の「建設業」がとくに厳しいリストラの最中にあることの影響であろう。同様に「卸売・小売業、飲食店」も55%と「減らした」企業が昨年より12ポイント増えており、消費の低迷に伴うこれらの業種の苦悩が読み取れる。

これに対し、この1年間に常用雇用者を「増やした」とする企業は「製造業」を除き昨年と同じか2〜4ポイントと僅かながら増えている。昨年の調査において調査時点以降の方向を尋ねたところ全体で「増やす方向」と答えた企業(7.9%)が一昨年のそれ(6.8%)を若干上回っていたが、その傾向が今回の結果にでたことになる。しかし、その後の経済のさらなる悪化によって、後で述べるように雇用情勢は一段と厳しくなるものと思われる。また常用雇用者数は「おおむね変わらない」と回答した企業は、2〜3割台に留まっている。

(2) 常用雇用者数の今後の増減方向〔第5・6表参照

企業が生き残りを賭けて雇用調整を進めている現状であってみれば、今後、当分の間、常用雇用者は減少する一方と考えられるが、調査の結果にも如実にそれが反映されている。すなわち、今後さらに「圧縮必要」と答えた企業は全体では70.3%と昨年の49.3%に比べ大幅に増加している。昨年この数値が5割を割った(一昨年は53.1%であった)ことでその段階では雇用にやや明るさが感じられたが、昨年の経済の落ち込みが予想を越えたものであったことがこのような結果になったと思われる。したがって、今後「増やす方向」は僅か3.4%(昨年調査7.9%)に留まり、「変わらない方向」とする企業も26.2%(同42.8%)と激減している。

ア. 企業規模別

これを企業の規模別にみても傾向としては大きな相違はない。今後とも「圧縮必要」との答えは、大規模の企業ほど多く「5千人以上」の83%から「千人未満」の63%までいずれの規模でも昨年の数値より大幅に増えている。昨年調査では60%を超えるものがなかった(57%〜37%)ことを考えると企業が先行きを極めて深刻に受け止めていることが分かる。次に今後も「変わらない方向」との回答は逆に規模の小さい企業ほど高く「千人未満」が35%(昨年調査57%)であるが、「5千人以上」は15%(同39%)などすべての規模で昨年の数字より大きく落ち込んでいる。また、今後「増やす方向」は「1・2千人台」の5%(同11%)の他はいずれも2%で微々たるものである。

イ. 産業別

産業別にみても厳しい情勢は変わらず、「運輸・通信業」は89%の企業が今後「圧縮必要」と答え、昨年調査の44%に比べて倍以上の増え方である。続いて「農林漁業、鉱業、建設業」、「製造業」、「金融・保険業、不動産業」は7割台、「電気・ガス・熱供給、水道業、サービス業」、「卸売・小売業、飲食店」が50%台で、いずれも昨年の結果を上回っている。

 

 

 

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