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第2部 調査結果の分析

 

I 就業・雇用数の動向

 

度重なる政府の景気浮揚策の実行にもかかわらず、わが国の経済は一向に立ち直る気配が見えない。経済企画庁も長い間使ってきた景気低迷の表現を不況に改めざるを得なくなった。このような背景の下に雇用に関する指標は悪化の一途をたどり、総務庁が発表した完全失業率は平成10年4月以来、4%超の状態が続いており、10年11月の完全失業率は4.4%(昨年3.5%)と昭和28年の調査開始以来過去最悪となり、有効求人倍率の0.47倍も過去最低となるなど、雇用情勢は相変わらず厳しく、人員削減や雇用調整の動きが加速している。長引く不況の中で競争力の強化を急ぐ企業はリストラを緩められないため、雇用情勢はさらに厳しくなりそうである。

この調査の調査時点は平成10年10月なので以上の状況はほぼ反映されており、調査結果の雇用に関する数字は極めて厳しいものとなっている。

 

1. 常用雇用者数の増減状況

(1) 過去1年間の常用雇用者数〔第5・6表参照

常用雇用者の一般的な動向を示す毎月勤労統計の「常用雇用指数(製造業・事業所規模30人以上)」では、平成7年を100として10年11月では94.6(昨年同季は96.8)となっており、この1年間に雇用者の一層の減少がみられる。

当研究所の調査では、過去1年の間に常用雇用者を「減らした」企業の割合は58.6%で昨年調査の57.5%と比べほぼ同じであるが、ここ数年「減らした」企業の割合が連続して50%を超えていることに企業経営の厳しさが現れているように思える。一方、「増やした」とする企業の割合は10.4%でこれも昨年の9.7%と大きな差はない。また、常用雇用者数は「おおむね変わらない」と答えた企業は31.0%で昨年同様3割台前半であった。なお、この結果を企業規模別、産業別にみると次のようになっている。

ア. 企業規模別

過去1年間に常用雇用者を「減らした」と答えた企業は「5千人以上」では72%(昨年調査67%)、「3・4千人台」では66%(同56%)でそれぞれ5、10ポイントとかなり増加している。これに対し「1・2千人台」では昨年の58%から53%へとやや減少している。また、「千人未満」の企業は56%が「減らした」としている。

逆に「増やした」と回答した企業は、「5千人以上」が僅か4%(昨年調査7%)で、「1・2千人台」が12%と前年の10%をやや上回った程度で、その他の規模では、「3・4千人台」が14%(同15%)、「千人未満」が9%(同9%)とほとんど変わっていない。また、雇用者数は「おおむね変わらない」とした企業は、「3・4千人台」が昨年調査の30%から20%へと減ったほかは大きな変化はみられなかった。

 

 

 

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