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特別講演:「海、知られざる世界」

 

NHK編成局チーフプロデューサー

日向英実

 

NHKで放映された「海、知られざる世界」(英語バージョン)の美しい映像を最初に紹介

 

こういう感じで既に放送は終わったんですけれども、お陰様でビデオが良かったのかどうか知りませんけれども海外からの引き合いが結構多くて、もう既にフランスでは放送されまして、アメリカは多分Discovery Channelで今年の秋に放送が始まると思います。何故、こういう番組を企画したのかという事について簡単に触れますと、

去年は国際海洋年だった事もあるんですけれども、元々私は科学番組をだいぶ長いことやって来ているんですけれど、環境問題というのを80年代の後半ぐらいから色んな形で扱ってきまして、結局行き着く所、地球そのもののシステムを理解しないとやっぱり何も分からないと言う、そんな気持ちが強くなりまして、それがNHKシリーズの中ではNHKスペシャルという枠で、「地球大紀行」というのを最初にやりました。

そのあと、「生命の進化」と言うのを地球と言う環境との相互作用の中で見て行こうというシリーズを4年位前にやりまして、その次に海の事が何も分らないんじゃないかという事で、知っているようなんだけれど以外に謎が多い、それで海をやろうと言うことで、それで割りとテレビの番組というのは、「こう言う事が分かりました。」という番組が多いんですが、今回は「こう言う事も分からない。」と言うスタンスで番組を作って見ようかと言うので、それで海と言うのはそういう意味では非常にいいターゲットだろうし、それからやっぱり何と言っても、特に日本はそうですけれど海に囲まれた島国なんですが、以外にその「海」って言うと、それこそ漁業とかそういう形のとらえ方の方が多くて、いわゆる地球科学的に見るとか色んな海の側面を見ていこうと言う事に慣れてないような気もして、じゃあ、本格的にやって見ようと言う事になりました。それがある意味では理屈なのですけれも、もう1つは、非常にもっと、言ってみれば下世話なモチベーションで、テレビって言うのは、例えば「本邦初公開」とか、「初めて捉えた映像」とか、そういう一つのやり口というか、アプローチの方法が有る訳ですが、テレビが始まってもうだいぶ経ちますが陸上では大体どこでも行っちゃって、初めてカメラが入る所など無い訳です。それから海もですね、確かに深海潜水艇とか色々ありますけれども非常に限られた場所しか見てませんし、人間が潜れるのはせいぜい100mぐらいですから言ってみれば、殆ど実は地球の大きな部分を占めていながら、そこの世界をちゃんと見ていないと、当然の事ながらカメラが縦横無尽に行ったり来りする訳には行かないので、それでは出来るだけ可能な限りデータを集めて、色んな情報を集めて、それを基にして映像を作っていこうと、言ってみればそこに行って来たような感じがする、そういう映像を作ることによって、殆ど未知の海の世界というものを身近に感じて貰いたいという、そういうmotivationと両方相まってやろうという事になりました。

 

それで、今申し上げた映像化するという事なんですけれども、多分海外のメディアの人達もその事を評価して共同製作というか、co-productionに参加して頂いたんだと思うのですが、やっぱり一般の人達が全然知らない事を知る時に非常にvisualでインパクトのある映像を伴うと言う事は非常に大事だと思います。そういう意味でも、特に非常に難解な話をする時にやっぱりどうしても映像が非常にqualityの高いもので非常にインパクトの有るものがどうしても必要だという事で、それにかなりの労力を今回のシリーズでも割いております。

 

で、ちなみに素人がどんな事に興味を持つか、という意味でも、どういう形で映像化して行ったか、という話をさせて頂きたいと思いますけれど。

シリーズの最初の頃から、最初どうしてもやりたかったのは、いわゆる中央海嶺で起きている海底火山の噴火を描きたいと、でこれは誰も見た事ないし是非やりたいと、あたかも側に立って山の頂上から見た様なそういう映像を作りたいと最初思いまして、例えばアメリカ海軍のソーサスのシステムで色々そういうモノも決して珍しい事ではない、と言う事も判って来たので、是非やろうと、当然私どもは素人ですから、色んな研究者の方のアドバイスを頂ながら作る訳なんですが、JAMSTECの藤岡先生とか、海洋研の玉木先生とか、色んな方々にお話を伺いながら、東太平洋海盆で大噴火をやろうと言う事になったのですけれども、やっぱり誰も見たことが無いものですから非常に苦労しまして、例えば溶岩がホントに赤い形で見えるのか、とか、一つ一つ映像化してゆく事というのは、1つ1つの条件を決めて行くことになるので、それが非常に大変でした。

 

 

 

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