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気候ジャンプと海洋堆積物

-間氷期における気候安定性の検証と近未来予測-

 

東京大学大学院助教授

多田隆治

 

(座長)次に、気候ジャンプと海底堆積物、という事で、東京大学大学院助教授、多田先生にご講演をお願い致します。

多田先生は、JR号に拠る日本海の発掘に参加されております、有名なダンスガード・サイクルについて、北大西洋の話題だけではなくて、日本周辺では一体この現象はどの様なことがあったか、というような事をテーマに研究されてきた点をご紹介頂くことになっております。では、宜しくお願いします。

 

どうも、ご紹介ありがとうございました。

現在、人為的な地球温暖化に伴う、急激な気候変動に対する懸念が高まっております。私はこういった事に答えるのも地球科学の大きなテーマであると考えています。

歴史は繰り返すという言葉があります。また、歴史に学ぶ、という言葉もあります。

今日お話するのは、地球の過去の記録を調べる事によって、今、申した事に対する何らかの答え、もしくは鍵が得られないか、そういう考えの下にするお話しでございます。

一応、タイトルとしては「気候ジャンプと海洋底堆積物」とありますが、サブタイトルとして、「間氷期に於ける気候安定性の検証と近未来予測」と、言う様なテーマで、お話ししたいと思います。

 

(FIG.-1)

大ざっぱにお話の筋を、ここに書きましたが、まず、

1)現在の気候というのを地球の歴史の中で、どう位置付けるか?それについて簡単にご説明して、それから、2)今ご紹介のありました、ダンスガード・サイクルと呼ばれる、最終氷期に於ける突然且つ急激な気候変動がどういうものなのか、実際この気候変動というのは、氷床の崩壊とか、海水準変動とか、地球表層を構成する色々なサブ・システムの相互作用を伴っておりますが、それについて簡単にご紹介して、それから、3)次に現在を含む間氷期に於いて、こういう急激な気候変動がありうるのか?そういう事について述べたいと思います。そして、最後に、4)これからどういう事をやるべきか、また、深海掘削はこの問題にどういう風にcontribution(貢献)出来るのか、そういうお話しをしたいと思います。

 

(FIG.-2)

まず、現在の気候という事ですが、先程、ラングウェー教授のお話しにもありました様に、地球の歴史の中では、何回も氷河時代というのが繰り返して来ました。そして現在はその中の新しい氷河時代、それは3500万年前に始まったのですけれども、その氷河時代の中にある訳です。その氷河時代の中では、非常に寒さの厳しい氷期と比較的温暖な間氷期が、大体、数万年位のタイムスケールで繰り返して来ました。現在というのは、その中の一番新しい間氷期に当たる訳です。それを後氷期と呼ぶ訳ですけれども、その後氷期というのは、実は比較的に気候が安定していた時期であり、我々、人類の気候観というのは、この後氷期の気候を基に形成されたものであると言っていいと思います。ところが、グリーンランドのアイスコアの研究などから、最新、今から2万年から7万年前の最終氷期に於いて、突然且つ急激な気候変動が繰り返したという事が、分かってきました。

 

(FIG.-3)

これは、先程もお話しにありました、グリーンランドのグリップというプロジェクトによって出されたデータですが、このグラフの縦軸は、氷の酸素同位体比を示し、これは気温に読み換える事が出来ます。横軸は時代です。

 

 

 

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